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デバイスと手がお互い歩み寄り、親和性の喜びを味わえる左手デバイス【Azeron Cyborgレビュー】

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2023/8/10 初版


1.買った経緯について

筆者はロボットゲームが好きで基本そのようなゲームを好み、PCで動かすことに快感を覚える類の人間である。
コントローラーよりも指の動かしが激しくて、何か高速で処理できてる感があるのがすごく楽しい。
移動制御と言えばWASDだし、ジャンプと言えばSPACE。移動の慣性中にQERF,ZXC,123に手を伸ばしその種類にレパートリーを増やすためのSHIFT+Ctrlの複合押し。このキー配置になじみがありすぎてとりあえずこれで動かせばキーが足りない問題も操作の不自由さもなかった。
手に馴染みすぎてコントローラーで操作することにすら多少の違和感を覚えるぐらいだった。だが、ここ数年でそこに疑問を覚える。
以前から、PC版デモンエクスマキナやM.A.S.S. Builderをやっているときから薄々感じていたが、「回避に複数種のボタン求められた時のWASD+SPACEに指を奪われるのが非常につらい」と感じ始めた。老化か?
(そう思うと操作キー2回でブーストor急旋回、SPACEでジャンプで移動制御を完結させていたc21はPC操作的にすごい快適だったなとしみじみ。)
WASD+SPACEに加え、他キーを頻繁に押す必要があるとどうしても小指を使わなければならないのだが、薬指・小指をキーボード配置で単独に動かすためには誤操作・誤爆に繋がりかねない。(完全に薬指・小指を独立して動かせる人は多分それでも良さそうだが筆者には無理だった)
今まではメインでやるゲームが無いため重要度が低いと判断し購入を見送っていたが、今回AORMORD COREⅥの発売があり本格的にこの問題と向き合うことになる。頻繁に移動制御+回避制御を求められた場合にどちらにも指がいけない(押せない)状態はどうしても弱点になると感じたため、新しいデバイスを探そうと思い始めた。そこまでの操作を求めていない場合はキーボードをお勧めするし、パッドで解決できるならパッドで十分だと考える。



2.左手デバイスに求める点・購入候補について

購入候補に関してだが、今回買ったもの以外については基本他サイトのレビュー動画等のみで触っているわけではない。
使用感を含めたレビューは他サイトを参照して欲しい。
また、左手ゲームパッド+右手マウスのスタイルは以前やったことがあって、片手コントローラー持ちが大変だったので断念した。押せるキーがあまり増えない拡張性の狭さも購入を見送った理由でもある。また、背面キーは非常に魅力的だがコントローラーを把持する力が減りコントローラーが不安定になる予想をしていたので今回の選択肢からは除外した。

左手デバイスに求めていることはおおよそ決まっていて、
①親指がジョイスティックであること
②親指以外の指で4キー必ず押せる位置にあること
③複合操作時に無理押しor腕の動きに無理が発生しないこと
④ある程度の重量があること
⑤指の移動量が少なくなる且つ腕に動きが持てるデバイスであること
この5点である。①②③だけであれば選択肢は増やせるが、
キー入力時に腕を動かすためキーボードを入力する際に筆者は机に手の平を付けない。そのため、今回の左手デバイスのジョイスティック操作部分に重心を乗せる可能性が非常に高く、軽量というのは筆者にとってはデメリットになると判断した=④。
今回の場合ジョイスティックであるため、キーボードのようなレイアウトはジョイスティック操作に支障がある(指を伸ばすということは、動かす際親指の位置がずれてしまい移動操作に支障が発生する=⑤)と感じていたためそれを念頭にデバイスの購入をした。

2-1,Razer  Tartarusシリーズ

Razer  Tartarusシリーズ

ジョイスティックに対してこちらの製品はサムスティック。もし左手デバイスを選択するならジョイスティックが良かったのもあり候補から外した一品。キー数的には全く問題ないので十字キー操作的なものが問題無ければ是非検討したい。

2-2,Rapinc Winserford

Rapinc Winserford

ボーダーブレイクを彷彿とさせるデザイン。
ジョイスティック背面に3ボタン、親指を離せば別のボタンを押せる仕様。
かなり魅力的ではあったが、親指とは他の部分で4ボタンを押せないので候補から外した。こういう仕様であればキーボードで良い。
デバイスでゲームに没入感を出すための一品という印象。

2-3,logicool G13

logicool G13

左手デバイスに必要な要素はしっかりと備えている1品。
ジョイスティック+操作し易そうなキー配置。迷うならこれで良いんじゃないか?という良いラインを持っている。
筆者がこれを候補から外したのはジョイスティックが平面すぎるなと思った点。使用想定時こいつに手を置いたときに、どうしても親指の位置とジョイスティックが合わないなと思い候補から外れた。
ただ人によってはこちらの方が、ジョイスティックの方向と画面の方向感覚が合っていると感じる人はいるだろうと思われる。

2-4,MH-Device

MH-Device

最有力候補だったもの。指の形状的にフィットし易そうなジョイスティックと、申し分ないキー数。コンパクトなデザインでスペースもあまりとらなさそうだという印象で非常に申し分ない左手デバイスと感じる。後者のAzeron Cyborgを見つけるまではこれを購入する予定だった。

2-5,Azeron Cyborg

Azeron Cyborg

今回の本題。
筆者が求めている5項目を満たせるのがこのデバイスしかなかった。
比較的大きめなジョイスティックと、基本指配置からのキー種類の豊富さを含め非常に目的に沿った形状だと感じた。
レビューを一通り見たが自分の懸念している操作感回りでの想定外の問題はなく、強度面等の言及しかなかったのでそれは自分が直すor面倒みてやればいいやと思ってたのであまり気にはしていなかった。



3.Azeron Cyborg本体について

ここまでは前座。ここからはひたすらAzeronCyborgのことを書く。
ここでは主に操作・調整をする上での構造上の注意点や実使用においての感想などを並べる。批判したいわけではなく、使っていく上での使用者側の心がけという意味で記載する。
AzeronCyborgが何ができるか?という方は以下動画を参照して欲しい。
本記事では、この概要で気になった点に対してを深堀りする狙いである。


3-1,3Dプリンタだから耐久性に難があるのか?

 今回の製品のメインである3Dプリンタ造形品である点について言及する。
ウケの良し悪しは明確に出る要素ではあると思う。外観と言えば製品の付加価値を決めるメイン部分だし、3Dプリンタに興味があればあるほどその点に興味を惹かれるだろう。
ボタン部分・調整部分が3Dプリンタ品、パームレストや土台部分のみ成型品を使われている。床面は設置安定性、パームレストは腕の大半を置くため不快感を与えないためだと思われる。
業務として3Dプリンタを活用している身としてはよく製品化したなぁという気持ちである。純粋にすごい。
おそらくぱっと見でいろんな人が心配に思う点として、「3Dプリンタだから部品が割れてしまうのではないか等の強度面への不安感」があると思うが結論から申し上げると「3Dプリンタだからではなく、こんな形状なら無理な負荷を与えれば成形品だろうが破損する」が正しい。
なので「3Dプリンタだから~」については外観以外に対し特筆する心配はない。この製品形状だからこその取り扱いに注意するべきである。

局面の段差や、表裏で面が異なること等が特徴的。触った感触は全く違和感無い

製品の造形痕跡を見るにインフィル密度は20%以上取っているので強度面では問題なく、材料はPLAにより造形している。おそらく量産時の製品形状を安定させるためだと思う。

PLAによる造形のため、一般的なマウスの材料であるABSと比較して「硬いが、粘りがないため割れやすい」傾向にある。机から落下させてしまった際には形状も相まり粉々になったAzeronCyborgと対面することになりそうだ。
他マウスと違い様々な調整をする関係で良く製品に触るし動かすため、各部位の調整には細心の注意を払いながら行っていた。(調整は別項にて)

3-2,スイッチの耐久性について

外した中身がこのようになっている。白い部分がスイッチ部分でそこが直接押される。

今回の形状、スイッチの押下衝撃がそのまま内部スイッチへ伝わる仕組みとなっている。(メカストッパがない
こういう形状であれば物理的にメカストッパを付けてスイッチへ直接ダメージを与えないようにすることが多いが、本製品はそれがないためスイッチを思い切り押し込むと簡単にスイッチの劣化に繋がる。
今までのクレームにもスイッチの不良があったようだからチャタリングやキー入力を受け付けない原因はおおよそこの影響だろう。
無意識にキー操作を丁寧にしてあげる等のやさしさが必要だが「高い買い物したのにそこまで気を配らなければならないのか」と思うが、そういう製品なのである。筆者の場合はスイッチ部分にスポンジを付けて衝撃を吸収する改造をした。本当は固い部品を挟む予定にしていたがキーのスペースが一定ではないので調整が面倒なのでスポンジにした。切って良い感じに貼るだけなのでそんなに難しくはないが作業は自己責任で。

左:指でまっすぐ押す方向にあるキーの幅(狭) 右:指を引いて押すキーの幅(広)

3-3,全体の剛性・固定具合

調整機構は構造上かなりの無理をしているのは察しやすい部分ではある。
本機器を固定して先端を揺らすと動画のような動きが発生する。

根本が所謂球体関節(球体部分は固定されやすい形状にされている)だが、台座が細長いレール一本なのでねじれのモーメントには非常に弱い。
だが、この力が発生する場面は実使用においてはほぼない。あるとしても人差し指と小指の横キーを押す時ぐらいだが、その場合低い位置なのでキーを押すための力も軽く揺れはほぼ発生しないので、この事象は、落下時や搬送時の衝撃への脆さにつながるので、取り扱いには注意したい。
また、球体関節部はボタンを押す部分と同軸上にあるため、ボタンを押した圧でせっかく調整したユニットがずれることはほぼない
ずれた場合は締結が甘いだけである。

ねじ締結部分はメッキの鉄が使われているため繰り返しにもある程度の耐久度がある

締結については3Dプリンタだから繰り返しの締結に対して弱いかと予想はしていたが受け部分は別パーツを用いている。見えていない内部にはインサートナットを使われているので繰り返し調整に対する耐性はそれなりにある
購入以前と違いここは想定よりも良い感触を得られたのでよかったが、ねじを受ける面は3Dプリンタなのであまりにも強すぎる締結は3Dプリンタ面が割れてしまうため注意が必要である。

3-4,メカ部分の初期不良

3Dプリンタ側面のバリ

これは中指の1つキーが優しく押すとキーがハマり戻ってこない部分があった部品を外して中身を見たときの表面である。
理由としては、摺動面がこんなに荒れている状態なので摺動時に摩擦があり、スイッチの戻る力よりも摩擦力が高くなってしまい軽く押しただけでは戻る反力が摩擦力を上回らないためだ。
初期不良ではあるものの、こんなもの外して面を鑢で綺麗にするだけでよいので外して綺麗にして直したが、一般ユーザーであれば「3万の高い買い物をしてこんな不良がでるのか!ふざけるな!」となりかねない。1年間のサポートはあるにしろ、わざわざ海外の人にコンタクトを取って一週間後の修理部材or新品の発送を待つのも馬鹿らしくなる。
3Dプリンタの製品である以上、このような初期不良と付き合っていけると、心を穏やかにして製品と向き合える。ちなみにこの部品のねじ締結部分は3Dプリンタなので、繰り返し脱着をするとネジ部分が死ぬ可能性があるので十分注意して欲しい。


4.調整について

ここでは「自分の手に合わせてこんな感じで調整した」という流れを説明する。調整機構をこのような意図で使うという意味で参考して欲しい。

4-1,エルゴノミクスみを最大限に味わえる調整機構

 操作をする上で基準位置にいるべきジョイスティックから調整の過程を説明していく。
稼働方向については言語統一のため、スライド・ヨー・ピッチ・ロールの言葉で統一する。X方向に前後させるのをスライド方向とする。

https://watako-lab.com/2019/01/23/roll_pitch_yaw/  より画像引用

パームレストにナチュラルに座らせたときにジョイスティックが不自由無く動かせる必要があったので、まずはこちらの調整をした。
高さの調整もできるが少し高さが足りず、パームレストの下にあるかさ上げ部分を外して丁度良い程度。さすがの調整力である。

一度親指外側にあるボタンについても押せる場所に置いていたが、ジョイスティックを回したときにどうしても親指先端にボタンが接触するためジョイスティックの操作を優先するためにここはオミット気味にしている。
指裏押しというのはやはり慣れが必要だと思う。
ジョイスティック上に十字キー操作+押しができるボタンがあるが非戦闘時用のキーとして活用する予定。

 次に人差し指~薬指の調整を大まかに以下の順番で行った。
キーの名称については以下の画像の通りである。

赤:押キー 紫:引キー 黄:手前キー 茶:外キー
緑:爪キー 青:上キー 桃:十字キー と呼称する。

①力を入れない状態の指位置に合うように土台下部のスイングを調整。
②指の長さに合わせてスライドレールにて位置を合わせる。
③指が軽く曲がる程度で押キーが使えるようにユニット本体を寄せる。
④薬指→中指→人差し指が押キーをスムーズに押せるかをチェック
⑤上キーを指を上げるだけで押せるように調整
という流れが主な流れとなった。ここまでの調整ができるのがやはりAzeronCyborgの良い所である。どうしても手を置く際に指が斜めになる関係で、調整がピッチ/スライドだけだったら明らかに違和感を感じていただろう。そこで球体関節の採用によりピッチ方向だけでなく、薬指/小指に対してロール調整ができ手にフィットする調整が可能となっている。
基本的には調整は一本ずつになった。裏側に固定用のネジがあるため、複数一気に調整を試みるとグラグラしすぎて何も決まらなかった。
④まで一通りやった段階で、押キー+引キー3ヶで計6キーが即座に使える調整ができた。

 小指は最初人差し指~薬指と一緒に調整していたが、最終的にメインで押す3本を優先して後回しになった。
基本手順はとしては上記①~⑤と同じだが、スライドによる調整よりも小指はロール調整が非常に重要だった。
キーボードと一番感触が異なるのが小指だった。キーボードの感覚で小指の配置を考えた時にどうしてもうまくいかず、その理由として薬指を操作する際にどうしても小指が伸びるor動いてしまうことが多かったからだ。
通常座る位置よりかはちょっと離れていた方がしっくりきた。
小指に関しては押、引、外キーの3種が使いやすい。慣れれば手前キーまで操作範囲になりそうだが、上キーは指の構造上無理な位置だった。

調整結果がこのような状態になった。

FF14を一週間ぐらいプレイして調整を何度か行った結果
実際に手を置いた状態

筆者は人差し指が短めなのでそこを手前に寄せつつ自然に小指と薬指が座るようにロール方向の調整にかなり時間を要した。
また、自分の指の長さの関係上人差し指だけちょっと手前に寄せている。
こういう細かい調整もまた、AzeronCyborgならではの素晴らしさである。

4-2,スライダー部分の摩耗への懸念

一回固定させたところに明確にネジの痕跡が残っていることがわかる

スライダーの調整を行っていた中で、ネジ後が残っている状態が出てしまう。長穴でワッシャが無ければそりゃこうなるというものではある。
何度も調整を繰り返したときに形状が残ってしまい、微修正を行おうとしたときに「この凹みにネジが誘導されて本来したかった微調整が出来なくなる」や、「接地面が満足に取れなくなり思ったより固定ができていない」といった問題が出る可能性もあるため締結圧には注意が必要。
もし用意ができる人はワッシャーを用意しておくと良いかもしれない。

4-3,調整によって生まれる死にキー

小指を限界まで手前にピッチ方向回転すると手前キーが押せなくなる。
全体的に前気味に調整して解決したが、ここに置かざるを得なかった場合は悲しい仕様。解決策として上述のように全体的に前にシフトするか、パームレスト部分を削れば簡単に解決できる。
手前キーは使う頻度こそ少ないものの、割と押せる部分で使いやすさは感じるため使えなくなるのはつらい。


5.操作について

5-1,キーアサイン

改めてキーの分類を記載する。

赤:押キー 紫:引キー 黄:手前キー 茶:外キー
緑:爪キー 青:上キー 桃:十字キー と呼称する。

◎優先度高(基本指配置で常時咄嗟に押せるキー
押キー 人差し指・中指・薬指・小指
引キー 人差し指・中指・薬指・小指
外キー 人差し指・小指
ジョイスティック 親指

〇優先度中(ちょい練度は必要だが押せるキー
手前キー 人差し指・中指・薬指
爪キー 人差し指・中指・薬指

△優先度低(押すために他キーとの併用を犠牲にするキー
外キー 親指
十字キー 親指(上下左右・真ん中)
手前キー 小指
上キー 人差し指・中指・薬指・小指 

常時押せるキーが10個もあるだけでほぼなんでもできる。
小指の押しキー、引きキーを同時入力用のキー(Shift、Ctrl枠)にすると
マウスとの複合も含めると今後の押しやすさ等も含めて縛られたキー配置の中だけで息苦しいアサインをすることはまずないだろう。
ただ咄嗟に出すためにはある程度の慣れと訓練が必要である。

5-2,腕の疲労・誤操作

これだけキーが近かったら誤操作も心配になるだろうという所。
筆者の所感だが、押キー、引キーの暴発はない。薬指回りのキーを押すときに手癖で小指が動いてしまい外キーor爪キーに当たることがしばしば。
一番多い暴発はユニットそのもののピッチ方向を手前へ回転させると上キーを押そうとするときに爪キーが引っかかってしまう暴発である。
上キーは基本頻度を低めにして戦闘中に触らないキーとして活用している。
購入前筆者は腕の把持・維持に悩んでいたが、購入後パームレストに手を置いたときに親指の腹と各指のMP関節部分が丁度触れる部分があるため腕が綺麗に座る。MP関節は指の根本の部分。

押キー、引キー、外キー、手前キーの活用だけでほぼほぼ完結させておけば誤操作については特に気にすることもないだろう。

5-3,押しづらいキーの使い道

本来たくさん押せるのに押しにくいキーなんてどうすればいいんだ、と言わんばかりであるが、筆者も当然思った。
だがFF14を数分やっただけでその必要性をすぐに実感した。
戦闘前にダンジョンに行く際に、ダンジョン一覧を表示するボタンのためにわざわざキーボードに戻ってそのショートカットボタンを押していた。
つまり、手をそこに置いている以上キャラクターのステータス、道具一覧、パーティー情報などのシステムコマンド類をアサインする場所が必要なのである。そこに購入前に気づいてないのは正直自分のふがいなさを感じた。
他のキーボード式の左手デバイスと違い、着地ミス(後述)による誤操作がないのは逆にありがたいとも感じる。

6.実使用における所感

6-1,求められる音ゲー筋ならぬAzeronCyborg筋

 ピアノを練習する人も日々薬指を単独で動かせるトレーニングをするし、音ゲーをやる人も音ゲーをやる上でのトレーニングをするのと同じで、本機器もまた、AzeronCyborgを使う上でのトレーニングが必要だと思う。
筆者は音ゲーをやっていた人間だったので薬指の独立動作には多少の経験があったので問題なく動かせたが、特に薬指の爪キーを押そうとしたときにその筋力が否応にも使わされるし、慣れていないと他の指が動いてしまい他の爪キーを暴発する。
普段のキーボードと違い「爪で押す」という概念も使った当初はすごい違和感があったが、一週間もあれば慣れたものである。楽しい。
練習のために筆者はFF14で侍のエキルレを回していたが、始めた当初は薬指と小指の過負荷で脳みそが混乱した。
まるで音ゲー2Pで12トリルをしているような動きだった。
使った感じ一週間ほどあれば15~20キーぐらいのアサインは問題なく対応できるようになったので、さほど購入後のハードルは高くないと思う。
上キーを完全に隔離するのであれば、調整機構自体は同じのためAzeron Compactの方でも良いと思う。


6-2,押下ホールドへの恐怖心

3-2でも説明したようにスイッチへダイレクトに衝撃が伝わる構造上、押下ホールドで力んでしまうのがとても怖い。筆者はボタン裏にスポンジを仕込んでメカストッパ的な機能を仕込んではいるが、押す力にはいまだに注意しながら操作している。直に慣れるとは思っている。
前述でもあるが、キーボードをたたくというよりもマウスの横ボタンを押す感触なので、その感覚でいると良い。
俗に言うカチャタンエンター強攻撃する人には向かない。

6-3,新しい指着地の練習

着地というのは音ゲーでもある「本来の指配置から別の位置へ動かした後、元の指の配置に戻る精度」のことである。(自分の理解はこんな程度)
キーボードでもブラインドタッチをしている人は知らず知らずにこの能力を養っており、画面を見ながらキーボードを淡々と押せるのである。
本機器の場合は、引キー、手前キー、上キーを押す際にこの訓練が必要で、雑に着地しようとすると手前キーに引っかかったりと誤操作に繋がりやすい。ここは製品の欠落というよりかは訓練でどうにかなる部分なので、購入後ここで悩んでいる人は是非使い続けて頑張って指を慣らしてほしい。
キーボードとは違い3次元での位置取りが求められるので、自然に触れる・動かせる位置に置くためにユニットの微調整は筆者も日々行っている。

6-4,徐々に浮く左手

筆者はキーボードを操作する際に腕を机につけない。
本機器でも早速使い慣れてきてから腕が浮き始めたが、ここで左手デバイスに求めていた「重量感」が光る。ジョイスティックだけを動かしても製品がずれることがない。最高だ。
そのためキーを押すために指に自由度が効き、引キー、手前キーを押す際にも最適な手のポジションを取ることができる。
押キーと引キーの位置も近いので、大幅な移動量もなくジョイスティックの操作感も全く変わらない。キーボード式のMH-Deviceと是非比較したい。

7.総括

品質面への言及・調整/操作感への言及・実使用時の使い勝手への言及等、長らく書いてしまったが一通り書きたいことは書けたと思う。
操作感については間違いなく他のデバイスと違い全く新しい操作感を楽しめのデバイスと言える。
使用キーを増やすとおのずと薬指・小指の使用頻度が上がるので、その指が動くようになれば同時入力も相まって多彩なキーアサインができる拡張性も非常に面白い点だった。
今回の調整の際、自分の手を何度見たことかわからない。自分の手癖や無理のない握り方、自由度が高い反面求められる自分の手への理解度。
通常のマウスやデバイスであれば、既存の配置に対して手を合わせるだけだったが、本機器は日々使い続けることでデバイスそのものの理解と手の理解を深め、「この部分は手癖を直す」「この部分はデバイス側で調整する」と言った手とデバイスとの親和性を高める喜びは他デバイスでは到底味えわず、まさにデバイスと共に成長している感覚だった。

その反面、製品が完全お手製なこともあり3-4でも言及したメカ的な初期不良や、電気的なトラブル(スイッチが反応しない、チャタリング)ももしかしたら購入後すぐに出てしまうこともあると思う。
さすがに電子回路・端子台回りでの不良は問い合わせ不可避にはなってしまうが、Azeron社が管理しているDiscordサーバーがあるのでそちらで問い合わせもできる(要英語)
初期不良のことも鑑みると、購入者は「自分自身で本機器のメンテナンス面倒が見れる人/材料・機械特性に理解がある人であること」が望ましい。
加えて海外メーカーへ不良に対する問い合わせをできるコミュニケーション能力もあると製品に対するメンテナンスの楽しさを味わえるだろう。
キースイッチに何の部品を使っているかも公開されているので、自分で買って直すことができる人であれば尚この製品へ愛着が湧くこと間違い無しである。これを機に自分で直す楽しさを知るのも良いと思う。
もし初期不良に悩んでいるなら是非相談して欲しい。


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