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《朽ちゆくレギサウルス》で差をつけろ!~パイオニア黒単アグロデッキガイド~

0.はじめに

初めましての方は初めまして。石川県でしがない競技プレイヤーをしているSWDと申します。
MagicOnline上ではazatoyellowという名前で活動しており、そちらの名前は見たことがあるという人の方が多いかもしれません。

前回書いたスタンダードの戦略記事に望外の反響があり、今回もnoteで記事を書かせていただくことになりました。
記事を読んでくださった方々、有料部分を購入して感想をくださった方々には感謝しかありません。この場を借りてお礼申し上げます。

自分のような無名プレイヤーの記事でさえある程度の需要があるということに驚いたと同時に国内の戦略記事、特にサイドボードガイドが少なく需要と供給が釣り合っていないという自分の感覚は間違っていなかったと思えました。
また、今回からPTことプレイヤーズツアーがグランプリと併催になった関係で、プロプレイヤーが大会前に自らの戦略を記事という形で広く公開することは以前より更に少なくなっています。そんな中、パイオニア制定当初から培ったスキルを共有しないのは勿体ないと感じ、再び筆を執った次第です。

ということで今回は2/1〜2/2に開催を控えているグランプリ、及びプレイヤーズツアー名古屋に向けて今一番旬なフォーマットであるパイオニアの黒単アグロのデッキガイドを書いていきたいと思います。
はじめに、筆者は名古屋の権利は勿論無く今まで一度もPTに参加したことすらない、せいぜいMOPTQで毎回あと一勝が足りずSEに残れない程度の実力のプレイヤーであることは念頭に置いてください。

しかしそんな自分ですが、ことパイオニアの黒単というアーキタイプにおいては一家言を持っています。
去年11月~12月にかけてMagic Online内で行われたMOPTQラッシュ(通称:廃人達を利用したβテスト)に黒単で出続けた経験があり、《密輸人の回転翼機》禁止以降も現在進行形でPreliminaryやPioneer ChallengeといったMO上のイベントに出場し一定の成績を残しているためです。(直近の戦績はChallenge6-2が2回、Preliminary4-1が2回) 
正直他のプレイヤーと比べてバカ勝ちしているかと言われると否なのですが、世界のプロプレイヤーやグラインダーが蔓延る上記のイベントで安定した成績を残しているということはある程度の指標になるはずです。

また黒単というデッキ自体
・禁止改訂以降も常にメタの上位に居座り続けている
・単色で使いやすい
・適当にマナコスト順にプレイしているだけでも勝ててしまうアグロデッキ

ということで初心者中級者問わず手に取りやすいデッキタイプなのは間違いなく、GPやPTでも何度もマッチングすることが予想されます。

ことスタンダードより下の、Tierリストにすら載っていないような有象無象のデッキが多数存在するフォーマットにおいて、一つのデッキだけを使い込んだ記事を読むことは自分がそのデッキを使用するか否かに関わらず有用だと考えています。
GPやPTで黒単を使う予定が無い方も目を通しておいて損はない内容になっていると思いますので、是非無料部分だけでもご覧いただけると幸いです。(性質上、ある程度フォーマットに理解のある方向けの内容にはなってしまうことはご容赦ください)

また、今回も前半の無料部分で現在自分が使用しているデッキリストと概要を、有料部分で採用を見送ったカードとその理由やデッキの基本的なセオリー、そして主要アーキタイプ12種とのマッチアップガイド及びサイドボーディングを解説していきます。 
今回紹介するリストは少し特殊なものの同アーキタイプにおいて普遍的に応用できる考え方を詰め込んだつもりなので、前半部分で興味を持ってくれた方や、更にこのデッキを理解したいと感じた方は是非記事を購入していただけると幸いです。

1.現在のデッキリスト

さて、前置きが長くなってしまったが現在自分がMO上で使用しているリストは以下のものとなる。
細かいカード選択においてはまだ自信が持てていない部分もあるが、全体の構成においては納得している。
見慣れないカードが何枚かあるかもしれないが、一つずつ採用した理由がちゃんとある。それぞれ解説していこう。


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・マナベース

まずはデッキを動かすのに欠かせない土地についてだ。マナベースは沼15、《ロークスワイン城》4《変わり谷》4《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》1というポピュラーなものをそのまま使用している。
序盤の色事故やタップインを嫌って《変わり谷》や《ロークスワイン城》を3にしているリストも見かけるが、個人的にはありえないと思っている。

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単色の強み

《密輸人の回転翼機》亡き今、中盤~終盤にかけてのフラッドはこのデッキの最大の敵だ。実質クリーチャー換算できる《変わり谷》は勿論のこと、継続的な攻めを実現できる《ロークスワイン城》もフル投入し、単色の強みを存分に活かしていこう。
沼を一枚削って《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》に変えるのも最近のトレンドだが、4マナまではストレートに土地を伸ばしたいこのデッキだと2枚重ね引いてしまった時のリスクが大きすぎると感じる。
序盤のダブルシンボルがほとんどないこのリストなら《変わり谷》を複数引くことによる事故も最低限に抑えられているので1枚で問題ないだろう。

・1マナ域

1マナ域の生物は3種×4の12枚がテンプレだが、合計10枚と抑えめの採用となっている。これは枠の都合もあるのだが、そもそも現在のパイオニア環境ではただの2/1サイズのクリーチャーにアタッカーとしての役割を持たせづらく、息切れの原因になりやすいと考えているからだ。

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2/1に人権無し

勿論コンボデッキのようなクロックが必要となるマッチでは有用であるし、2t目に1マナ域を3体ばら撒くようなブン回りパターンは減るものの、後述する太い生物でゲームを作っていく方が単色アグロ同系や各種ミッドレンジに対して優位に立てるため現在はこの比率に落ち着いている。
9枚目以降として定番の《どぶ骨》ではなく《戦慄の放浪者》を採用している理由は後述の不採用カードの項で解説する。

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・2マナ域

《密輸人の回転翼機》禁止以降、元々8枚あった2マナ域が《屑鉄場のたかり屋》のみになり、余った枠を追加の除去で埋めたリストがテンプレとなっていたが、自分はそこに納得していなかった。

例えば《闇の掌握》は緑単の《恋煩いの野獣》や5cニヴの《包囲サイ》を一枚で倒せず、かといって《究極の価格》や《喪心》などの限定的な除去を採用すると更にブレが発生してしまう。2マナの除去はそれぞれに少なくない裏目が存在し、キープ基準にもなりづらいためできれば生物を採用したかったのだ。
そんな中、ようやくマスターピースとなりうる2マナ域を見つけた。それが《精神病棟の放浪者》だ。

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3/1という殴り手として悪くないスペックを持ちながら、後述する《朽ちゆくレギサウルス》《悪ふざけの名人、ランクル》との相性が最高で、中盤以降はまさしく令和の《闇の腹心》とも言える活躍を見せてくれる(※平成のカードです)
タフネス1が頼りないため2枚のみの採用だが、追加の2マナ域として強くオススメしたい1枚だ。

《朽ちゆくレギサウルス》 

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最速3tにキャストした時のプレッシャーがヤバい(語彙)
7/6という3マナ域としては破格のサイズで、コンボデッキには致死量のクロックを突きつけ、単色アグロには壁役兼ゴリ押し要因として八面六臂の活躍を見せる。
コンボとアグロという両極端な2デッキに対する相性差を覆せる1枚であり、このカードを採用してから赤単やロータスコンボに対する勝率は確実に上がった。

3マナ域の対抗馬としては《騒乱の落とし子》があるが、仮想敵である《栄光をもたらすもの》《反逆の先導者、チャンドラ》を要する赤単に対して場に残りづらいのが致命的だと感じる。
また、前述の2/1殴り辛い問題によりそもそも3t目に絢爛を達成できないこともザラだ。
その点パワー5までを軽々と止めてくれる《朽ちゆくレギサウルス》は後手番を返す札としても優秀で、ディスカードのデメリットを考慮しても総合的にこちらの方が優れていると感じる。

《悪ふざけの名人、ランクル》

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当初は《朽ちゆくレギサウルス》との食い合わせの悪さ(土地が伸び辛いため)から不採用だったが、中盤~後半にかけての飛び道具として、また生物でありながら盤面の対処もできる万能カードとしてやはり採用することとなった。
とはいえ引きたい時は喉から手が出るほど引きたいものの、序盤に嵩張った時のリスクも馬鹿にできないため4枚は過剰かもしれない。
ここはメタゲームに応じて数枚《霊気圏の収集艇》などに変えてもいいだろう。 

・妨害枠

2マナ域の項で少し触れたとおり、短期決戦を目指すデッキな以上、メインボードの妨害枠は最小限に留め生物を優先している。必要なのは場を構築するクロックであり、除去で1対1交換を繰り返していても不必要にゲームを長引かせてしまうだけなのだ。
だが、テンポ差を巻き返す除去である《致命的な一押し》

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万能除去兼ライフゲイン要員の《残忍な騎士》

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そしてあらゆる脅威に対抗できる《思考囲い》

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の3つはメインボードから採用しても裏目が少ない一貫性のある妨害手段として、4枚から減らすことはなかった。
勿論それぞれの役割が違うため2本目以降は相手のプランに合わせ適宜サイドアウトしていく必要があるが、単色でありながらこれらの強力呪文を惜しみなく使えるのもこのデッキの強みだ。

続いて、サイドボードと採用を見送ったカードについて触れていく。

2.サイドボード

《リリアナの勝利》
《害悪な掌握》
《究極の価格》

メインに入っていない分、2マナ除去枠は合計6枚と多めに採用している。
《リリアナの勝利》は5cニヴの《森の女人像》などを意識した選択だが、トークンが並ぶ相手でない限り生物デッキにも雑にサイドインする。
残り4枠は単色同系に強い《究極の価格》と青白スピリットや緑単を見た《害悪な掌握》に振っているものの、ここはメタゲーム次第で変動の余地があるだろう。

《ドリルビット》

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追加のハンデス枠は定番の《強迫》ではなくこちらを採用している。そもそもハンデスを追加したい相手にはだいたい1マナで唱えられるというのもあるが、特に緑単ランプや5cニヴのような「ハンデスは入れたいものの生物もそこそこ入っているデッキ」に対してかなり使い勝手が違ってくるためだ。
とはいえ、《強迫》には《強迫》の強み(具体的には青白コントロール相手に戦闘前にキャストして《残骸の漂着》や《封じ込め》などの除去を抜くなど)もあるので、今後コントロールが数を増やすようであれば変更しうる。
執筆時現在(1/22)のメタゲームは若干コントロールとコンボにメタが寄りつつあるため、ハンデス枠をメインサイド合わせて7枚以下にするのはオススメしないとだけは言っておこう。

《最後の望み、リリアナ》

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主にミラーや《ラノワールのエルフ》デッキ、青白スピリットなどのタフネス1を多用するデッキに対してサイドインし、コントロールデッキに奥義を目指していくプランもそこそこ有用。
元々横並びに対して弱めなデッキの相性を補完するカードでもあり、2枚は入れておきたい。

《ゲトの裏切り者、カリタス》

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クリーチャーデッキに対して圧倒的な制圧力を誇るものの、前述の通り仮想敵である赤単に対してタフ4が頼りないのと、《悪ふざけの名人、ランクル》を4枚採用したことにより4マナ域が嵩張ることを懸念して現在は1枚のみの採用としている。 
枠さえあれば2枚目の採用を検討。

《虚空の力戦》

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見た目通りドレッジや魂剥ぎなどの墓地デッキにフル投入する形になるが、元々墓地デッキはメインボードの勝率がかなり悪く、現在数を伸ばしている《死の国からの脱出》型ロータスコンボを強く意識する意味でもできれば4枚入れたいところ。
枠を作るとすれば除去、または《ゲトの裏切り者、カリタス》を減らす形になるだろうか。 

3.採用を見送ったカードとその理由

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