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エベロンの主要な国家

エベロン世界では様々な大陸がありますが、その中で最も人型種族が繁栄しているのがコーヴェア大陸で、多くのシナリオはこの大陸を舞台にしています。この大陸には長い歴史があり、多くの文明や都市が栄えては消えていきました。今回の記事では最終戦争の結果生まれた国々と戦争の結果消え去ったサイアリについて取り扱っていきます。

コーヴェア大陸

五つ国

1000年ほど前にコーヴェア大陸に起こった五つのヒューマンの国はガリファー王国によって統一されました。王国を構成した五つの地域、アンデール、カルナス、スレイン、サイアリ、ブレランドは五つ国と呼称されます。それぞれの国家はガリファー王の子供たちによって統治されサイアリを治める長子がガリファー王国の玉座に座ることになるという伝統がありましたが、王国歴894年にシャロット王が無くなると、この取り決めに異議を唱えた各国の王族による後継者争いは国を巻き込んだ戦争へと発展しました。この戦争は後に最終戦争と呼ばれましたが、どの国も戦争に勝利することはなく、モーニングによってサイアリが滅び、和平によってそれぞれの国がガリファー王国から独立することを表明したことでガリファー王国という枠組みは消滅しました。サイアリ以外もそれぞれの国が戦争の影響を引きずっていて、反目しあっていますし、長年の統治による歪みが生まれており様々な課題を抱えています。

アンデール

特色:ヒューマン、ウィザード、農産物
アンデールは世界中で最も魔法が活発に利用されている国です。一般人でも簡単な魔法のたしなみがあるため日常生活でメイジハンドを手の代わりに使うことを好み、弓を射かけるよりも、ワンドで魔法の矢を飛ばすことを好みます。アンデールで最も有名なのはアルカニックスと呼ばれる魔法によって空に浮かんだ塔によって構成された魔法の学院で、大陸全土から魔法を学ぶためにウィザードや賢者、アーティフィサーが集まります。アンデールの人々は知識欲が旺盛です。そしてその知識をひけらかすことも大好きなのです。アンデールの国土は地味豊かで魔法によって動作する工作機械や天候の操作によって豊作が約束されています。しかし、アンデールは生き残った国の中では最も多くの領地を失っています。隣国スレインによって古都サリオストを奪われ、圧政を嫌った農民たちにより西武地方森林地帯エルデン・リーチに独立され、豊かな田園地帯だったカルナスとの国境は戦争の影響で死霊と破壊的な魔法が蔓延る荒野となってしまっています。そのためアンデールの人々はエルデン・リーチの再統合、サリオストの奪還のために再び戦争を始めるべきだと主張するものも少なくありません。

カルナス

特色:ヒューマン、アンデッド、軍人、貧しい国土
カルナスは貧しい国土によって生活は貧しく、人々はその影響で禁欲的で、陰気です。また、国家の伝統として規律と徴兵制が根付いているために軍国主義的な性質を有した国でもあります。最終戦争では戦争の初期に起こった飢饉と疫病によって失われた人的資源を埋めるために”ヴォルの血”と呼ばれる宗教を受け入れて、死者をアンデッド兵として使役して戦争を耐え抜きました。戦争が終わった今は国家としてはヴォルの血との関係を絶ちアンデッド兵を封印しましたが、その信仰は国民の間に根強く残っています。加えてカルナス軍人の多くは戦争を続ければ勝利していたのはカルナスだったと信じているために、クーデターを企てている者たちもいます。

サイアリ(モーンランド)

特色:ヒューマン、難民、モーニング
サイアリは最ガリファー王国の中核であり、商業と文化の中心地でした。そのため国民たちも自分たちの君主こそがガリファー王国の正当な後継者だという意識が強く、最終戦争の勃発によってガリファー王国は崩壊した時に、サイアリは再び王国を一つにまとめるという大義を掲げて戦争に加わりました。最終戦争の終結直前におきたモーニングと呼ばれる魔法災害によってサイアリは消滅し、残った国土もゴブリンやエルフに支配されました。国を失った難民たちは世界中に散らばりましたが、大多数はシャーンやブレランドに作られたニューサイアリと呼ばれる難民キャンプに身を寄せて祖国の復興を切望しています。モーニングによって歪んだ大地を人々は恐れをこめてモーンランドと呼んでいますが、これが転じてモーン人というサイアリ難民への蔑称が使われるようになりました。

スレイン

特色:ヒューマン、信仰魔法、シルヴァー・フレイム教会
スレインは最終戦争の半ばまでは他のヒューマンの国々と同じく君主制の国家でした。しかし、戦争中に国民は王制を拒否してシルヴァー・フレイム教会による支配を受け入れました。それ以来70年間、スレインは神権政の国として存続しています。その性質上、クレリックやパラディンという信仰に結びつく人々が寄り集まり、この信仰の拠点を戦争、ライカンスロープやフィーンドといった悪しき者から守り、悪を駆逐するための聖戦を戦い続けています。しかし、スレインが最も重視するのは憐憫と慈悲であり、たとえ敵国の村であろうとフィーンドの脅威が生じたなら喜んで聖堂騎士たちを派遣させます。現在の国家元首はジェイラ・ダウンという11歳の少女で、スレイン国民の殆どは彼女こそが神の定めたもうた”炎の守り手”であると崇拝しているが、国外の者は概ね実務を取り仕切る枢機卿評議会の操り人形だと見なしています。

ブレランド

特色:ヒューマン、工業力、シャーン
ブレランドは豊富な人口と豊かな資源を背景にして、五つ国の中でも抜きんでた産業力によって大陸をリードしています。ブレランドの都市群の中でも最も発展しているのが、シャーンの街です。大陸で最も人口が多く栄えているこの都市には雲を突き抜ける巨大な群塔とそこに住まう多種多様なルーツを持つ人々でにぎわっています。しかし、戦争後に次々と押し寄せるサイアリ難民、戦争で荒廃した土地を捨てた農民たち、ドロアームから労働力として雇われたモンスタ-たちが押し寄せたことにより、人が増えすぎたと考える市民が多くなっています。ブレランドの国民は独立独歩の気質を持っています。それは裏を反せば自分にとって都合の悪いルールに従うことが正しいとは思わないという思考に繋がっています。そのため、ブレランドの国民の多くが法律を無視して、行動することも少なく無く、極めつけは官吏たちにも腐敗や賄賂が公然の秘密としてまかり通っています。ブレランドの政治は国王であるボラネル王と選挙によってえらばれた議会によって共同統治が行われていますが、近年、戦争を起こした王家制を廃して民主的な政府を樹立しようという運動が起こっています。この運動はボラネル王の死後、段階的に権力を移譲するという穏健的なものから暴力によって王制を廃そうという過激的なものまであります。また、ブレランドの西部にはモンスタ-達によって建国されたドロアームが徐々に勢力を拡大していますし、東部ではゴブリンたちの王国であるダーグーンが伸張の機会をうかがっています。この2国との緊張関係がやがて大きな戦争をもたらすという考えは決して杞憂ではないでしょう。

スローンホールド条約によって生まれた国々

最終戦争は和平を結ばれ、その時に取り決められた条約は条約が結ばれた土地にちなんで、スローンホールド条約と呼ばれています。スローンホールド条約ではそれまで5つ国に組み込まれていた非ヒューマンを主体とした国や地域、最終戦争中に国土を切り取った新興国が独立を承認されました。しかし、この条約に異議を唱える国家も決して少なくはなく、新興国に干渉しようとする強国も少なくありません。

ヴァラナー

特色:エルフ、馬、傭兵
エルフの傭兵たちが最終戦争中にサイアリの一部を奪って成立したこの国では厳密な身分制度が確立しています。国を支配し戦闘を行うエルフ、国の行政を司るハーフエルフ、日々の労働を担う元サイアリ国民たち。エルフたちは常に戦闘行動をとっており、時には傭兵として国外の戦闘に加わることもあります。ヴァラナーのエルフは動物に対して特別の絆を結ぶことで知られていて、特にヴァラナーの駿馬に乗った騎兵の機動力と破壊力は大陸随一だとヴァラナーのエルフはもちろん、敵国も認めています。

エルデン・リーチ

特色:ドルイド、農産物、森林
エルデン・リーチは”森の監視人”と呼ばれるドルイドたちが戦争による搾取と暴力に苦しんでいた農民たちの助けに応えて、アンデールから独立した国家です。ドルイド魔法によって祝福を受けた国土は豊かで、人々は牧歌的に暮らしているが、アンデールが再びこの地を支配しようとするのではないかと恐れてもいます。

クバーラ

特色:密林、貴金属、希少な植物、リザードフォーク
クバーラは文明のはずれにある鬱蒼とした密林が蔓延る未開の土地でした。しかし、最終戦争が起こると戦争を避けるために多くの文明人たちがこの土地に疎開してきました。この人々はやがて開拓団となり、集落を切り開きました。さらに加えて希少な金属であるドラゴンシャードの鉱脈を見つけて一攫千金を狙う者たちや逃亡した犯罪者、サイアリ難民を迎え入れることで大きな発展を遂げています。その過程でこの”文明人”たちはこの密林に古くから住むリザードフォークやドラゴンボーンたち、文明人たちが呼ぶところの”うろこ野郎”と接触して、小規模の衝突の後で、彼らと一応の条約を締結しました。しかし、文明人の採鉱者たちは条約を破ることを気にせず”未開人”のテリトリーを犯し、緊張関係を生み出しています。さらに悪いことにこの地に逃げて来たサイアリ難民たちの中でも軍人たちは徒党を組んでかつての敵国からやって来た開拓団を襲って殺しています。

ズィラーゴ

特色:ノーム、陰謀、秘密警察
ズィラーゴは文化豊かな国で情報の集まる土地です。世界的に有名な新聞社を有していて、一流の大学や図書館によって人々は学習の機会を約束されている。国民も親切で、犯罪などは起こりようもない。というのが表の顔ですが、その背後にはトラストと呼ばれる秘密警察が社会の隅々を監視して”疑わしい者を罪を犯す前に殺す”というルールによって未然に犯罪を防いでいます。他国の人々はトラストを恐れていますが、ズィラーゴの国民はトラストの方針を受け入れて信用しています。さらにトラストは外国にもエージェントを派遣しており、ズィラーゴに害なす者を秘密裡に消し去ることを厭いません。噂によれば、ズィラーゴ出身のノームの三分の一が何らかの形でトラストと関係しているという噂があります。あなたの良き隣人であるノームが本当にトラストではないと言い切ることが出来るでしょうか?

ダーグーン

特色:ゴブリン、傭兵、ダカーン帝国の遺跡
かつてダカーン帝国というゴブリンによる帝国がありました。この帝国は大陸中を支配し、偉大な文明を築いていました。しかし、この帝国が崩壊して文明が退行していた時にヒューマンたちがこの地に上陸してゴブリンたちの土地を奪い、ゴブリンたちを奴隷化しました。そのため、ゴブリンたちが市民として受け入れた後でも大陸中の都市の下層民の中にゴブリン類を見つけることができます。最終戦争中に各国は部族ごとに割拠するゴブリンたちを傭兵として雇っていました。その中でサイアリのために戦っていたゴブリンの部族は突如としてサイアリを裏切り、国土の一部を切り取ってダーグーンの建国を宣言しました。モーニングによってサイアリが滅んだことで、各国はダーグーンを正式に国家として認めました。ダーグーンはゴブリンの氏族の寄せ集めであり、それぞれのゴブリンはダーグーンという国家よりも自分の氏族への忠誠を誓っています。ダカーン帝国の後継を自認するダーグーンのゴブリンたちは”ムート”と”アーチャ”と呼ばれる価値観に重きをおいています。ムートは氏族や上官に対する義務であり、アーチャは戦や高潔な行動によって獲得する個人の名誉を指します。多くの国家はダグーンを烏合の衆と見なしていて、カリスマ的な指導者が居なくなれば自然に崩壊するだろうと見なしていますが、それが本当かどうかはまだ分かりません。

タレンタ平原

特色:ハーフリング、恐竜、遊牧
タレンタ平原に住むハーフリングたちは産業も栄えた都市もないが平原の特産物である恐竜を飼いならし、乗騎や家畜として利用した遊牧民として生計を立てている。また、タレンタ平原のハーフリングの戦士たちの勇敢さは大陸中に響き渡っており、恐竜に乗ったバーバリアンの突撃はヴァラナーの騎兵にも劣らない破壊力を有しているし、恐竜による機動力を活かしたレンジャーによる騎射は大きな戦果をあげています。最終戦争では平原にすむ各部族が協力して戦いタレンタ平原の独立と不干渉を勝ち取った。戦争後は多くの部族が元の生活に戻り同盟は過去のものになりつつあります。また、この地域に眠る資源や土地を求めて外部からの人や資金の流入が起こっており、それが平原の部族にどのような影響を与えるかは分かりません。

ムロール・ホールド

特色ドワーフ、銀行、金属
カルナス東部の山岳地帯に住み着くドワーフたちは最終戦争中に豊富な地下資源と先祖のドワーフたちが遺した優れた技術を利用してカルナスからの独立を果たしました。ドワーフは自分たちが住む山の奥深くに眠る古代のドワーフたちの遺産を見つけましたが、それと同時に地下に封じられていた異形の軍団であるデルキールたちも掘り起こしてしまったのです。それ以降、ドワーフたちにとって戦いとは異形の軍団との戦闘を意味するようになりました。多くのドワーフたちはデルキールを忌み嫌っていますが、一部のドワーフはデルキールの技術を吸収することで、自分たちの氏族の影響力を強めることが出来ることに気付きました。このドワーフたちはデルキールの兵士の体からシンビアントと呼ばれる宿主と一体化することで強力な力を発揮する武器を開発しました。当然このことについて反発するドワーフも多く、この問題をめぐって氏族間の連携にひびが入りつつあります。

ラザー公国連合

特色:海賊、商人、船舶
コーヴェア大陸の北東部の海岸沿いとそれを取り巻く島々によって構成された連合国家は海賊と大商人と海洋貴族によって支配されています。ラザー人は優れた船乗りを排出する地であり、最終戦争では私掠船や海賊船として活動していました。そのため外国の人々はラザー連合を無法地帯と見なしていますが、実情としては彼らは優れた商人です。ただ、目の前に略奪してくださいと言わんばかりの無警戒な船が現れた時に海賊旗を掲げるだけなのです。現在、ラザー公国連合には二つの政治的な勢力があります。この連合国家の結びつきを強めようとする勢力と旧来のようにそれぞれの国家が自主独立して存在することを求めるという勢力です。

非承認国、地域

名目上、ガリファー王国はコーヴェア大陸を統一していましたが、大陸の中には王国の支配が及ばない、辺境地域がありました。そうした地域は古い邪悪と結びついた過酷な土地であったり、モンスタ-が徘徊する地域だったりと危険な土地であり、低レベルの冒険者にとっては近づくことも恐ろしいような場所です。ですが、そのような土地であっても日々の生活を送っている人々もいて、彼らなりの秩序を構築しています。

シャドウ・マーチ

特色:オーク、沼沢地、ドラゴン・シャード
コーヴェア大陸の中でも文明から離れた地域にあるシャドウ・マーチは人が近寄れないような陰鬱とした土地だとみられています。実際のところシャドウ・マーチは沼沢地や水はけの悪い土地が広がっており、住み着くのに適しているとはいいがたい場所です。加えて、過去にコーヴェア大陸を襲った異形の怪物たちデルキールとの戦いの傷跡が遺されており、歪んだ肉体を持つ怪物が徘徊しています。この地に住むオークたちはかつてデルキールと戦い、デルキールを地下世界カイバーに封じることに成功しました。門を護る者と呼ばれるドルイドの一団の子孫もこの封印を維持するために活動を続けています。しかし、その封印は危ういものであり、いつの日か封印が破られるのではないかと人々は恐れています。

デーモン荒野

特色:悪魔、邪悪な遺産
コーヴェア大陸の北西にあるデーモン荒野はその名の通り荒れ果てた土地です。起伏の激しい荒野を横切るように溶岩の川が流れ黒い雨が大地を潤します。しかし、この土地を危険なものにしているのは決して自然環境のためだけではありません、この土地には古代から続く邪悪な意思を引き継ぐ悪魔たちが住み着いているのです。悪魔たちはかつてエベロンを支配していたオーヴァーロードと呼ばれる神話級の悪魔たちに仕えていた残党たちで、かつて栄華を誇っていた廃墟に住み着き、オーヴァーロードたちをこの地上に呼び戻すために邪悪な陰謀を練っているのです。この土地は確かに危険な場所ですが、必ずしもそれが冒険者たちを忌避させるものではありません。何故ならこの土地にはオーヴァーロードが遺していた財宝、貴重なマジックアイテムが眠っているのです!その財宝を求めて命知らずの勇者がこの荒野に乗り込むことは少なくないですが、生きて戻れたものは稀です。

ドロアーム

特色:モンスタ-
ドロアームはブレランドの西部にある不毛な地であり、名目上はブレランドによって支配されている地でした。しかし、実際にはブレランドがこの土地に支配を及ぼしたことはありませんでした。なぜなら、この土地は古くからモンスタ-たちがのさばり、それぞれの種族が軍閥を形成し、他の種族と相争う無法地帯だったからです。しかし、11年前に何処からか現れたソラ・ケルの娘たちと呼ばれる3人のハグがトロル兵を率いて進軍し、割拠する軍閥を従わせてドロアームを建国しました。しかし、この国は他の国々から承認されているわけでなく、国際上の外交関係からは名目上は締め出されています。しかし、ソラ・ケルの娘たちによる巧みな手腕によって各モンスタ-種族はそれぞれの個性を活かすことで、ドロアームは成長を続け、その力は無視できないものになっています。加えて、ドロアームの国民たちは自分たちの国を誇りにしており、種族を超えた団結を見せています。また、ドラゴンマーク氏族のタラシュク氏族はドロアームのモンスタ-たちに目をつけ、モンスタ-たちを優れた傭兵、労働力として各国に派遣する事業をはじめました。各国は概ねモンスタ-の国が長続きしないとタカをくくっていますが、実際にはドロアームは成長を続けています。ドロアームがブレランドと並ぶような力を身に着けた時に何が起こるかはまだ分かりません。

まとめ

このようにエベロンの世界には多種多様な国と地域が存在します。それぞれの国が魅力と美徳を備えていますが、欠陥と問題を抱えているのは確かです。最終戦争の遺産、戦争後の秩序の中での覇権を模索する各国がどのような未来を辿るかは冒険者たちと物語を紡ぐゲームマスターのみが知ることでしょう。

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