2022年私的ベストアルバム

2022年の新譜で気に入ってよく聴いたのはこの5枚です。
『Moacir de todos os santos』 -  Letieres Leite & Orkestra Rumpilezz
『RENAISSANCE』 - Beyonce
『Scan』 - The Ratel
『Moa Vive』 - Moa Vive
『Grand Voyage』 - 大西順子カルテット

順位というのは特にありません。大西順子カルテットのは正確には2021年12月29日発表となっていますが、まあ今年の新譜といっていいでしょう。
以下、順に感想を。

『Moacir de todos os santos』-  Letieres Leite & Orkestra Rumpilezz

管楽器14~5人、打楽器5~6人ほどからなるバイーアのアフロブラジリアン・ビッグバンド、オルケストラ・フンピレズの最新作にして、リーダーのレチエレス・レイチの遺作です。そしれこれは彼らの最高傑作といっていいと思います。

全曲がレチエレスによるオリジナル曲だった過去2作と違いこのアルバムは全曲がモアシール・サントスの『コイザス』のカヴァー、アレンジがレチエレスとなっています。もう一つ過去作との大きな違いは、録音の良さ。とても生々しくかつ立体的な音になっていて、それがこのバンドの唯一無二のアンサンブルの面白さ、演奏の迫力、モアシールの曲とレチエレスによるアレンジの妙、そういったものを際立たせています。最高傑作といいたいのはそれ故です。特にフィジカル(LPもCDも出ています)で聴くと管楽器のアタックの感触とかとても気持ちいいです。"Nana"の猛烈なチンバウソロも最高。

レチエリスは2021年に残念ながら他界してしまったけれど、グループは今も存続してたまにライブもやっています。海外公演が極端に少ない彼らではありますが、ぜひ来日公演をと願っています。

『RENAISSANCE』 - Beyonce

ビヨンセは以前は何度か来日公演も見に行ったりして結構ファンだったのですが、4枚目(Run the worldの頃)あたりから何となく離れていました。それがいつぞやのコーチェラ(ビーチェラ)を機に改めて好きになり、そして今回このアルバム。この最初から最後まで弛むことなくダンスチューンでずっとぶっ飛ばす感じ、こんなビヨンセを聴きたかった!としか言いようがありません。1時間2分、一気に楽しんでいます。

『Scan』 - The Ratel

このバンドのことは知らなかったのですが、古い友人が録音を手掛けてているということでたまたま見た『淡くない』のPVを見てそこからファンになりました。全体の音像と個々の楽器の音(特にリバーブの効いたギター)がまず気に入り、そしてアルバム通して聴いてみてこのギターバンドにファゴットとフルートが加わる独特のアンサンブルがとても面白く繰り返し聴いています。音色的にも演奏面でも後ろのギタートリオと前の木管二人の対比がとても面白いです。なんというか、バンドっていいなあ!と思わせます。
フルートもファゴットも今まであまり気にしたことがない楽器だったのですが、魅力的な楽器なんですね。1曲目のフルートソロは圧巻です。

『Grand Voyage』 - 大西順子カルテット

村上春樹と小澤征爾の対談本を読んでから大西順子さんという名前は気になっていたのですが、2年ほど前から大西順子トリオに大儀見元さんがパーカッションで参加と聞きこれは一度見てみようと思い配信ライブを見たり実際にライブを見に行ったりしていたのですがこれが面白く、カルテットとしてリリースしたこのアルバムもすぐに好きになりました。
パーカッションはどちらかといえば上物の扱いだと思いますが、とにかく大儀見さんが繰り出す多彩な音色によるフレーズが快感で、聴き手だけでなくバンド全体を刺激している感じが楽しく、まずこの編成の勝利っていうところがあります。曲も本当にどれも魅力的で、2曲あるボーカル曲(一方は小野リサさん、もうひとつは大儀見さん!)もめちゃくちゃ効いています。

『Moa Vive』 - Moa Vive

カポエイラのメストリであり、そしてバダウェーというアフォシェ(カンドンブレのイジェシャーのリズムでパレードするカーニバル団体)の創始者である故メストリ・モアへのトリビュート・アルバム。彼の曲をバイーアの様々な歌手(人選も良い)が歌っています。派手さは無いのですが、ある種のバイーアのカーニバル音楽の古き良き姿をサラッと現代風に蘇らせていて、癖になります。渡辺貞夫さんが昔テレビで「バイーアのご馳走は風だね」なんて言ってたのですが、そういうバイーアらしさがどの歌からも溢れています。
『Raiz Afro Mae』というタイトルの、コンセプトもゲスト参加ボーカリスト陣もよく似たメストリ・モアの追悼アルバムがもう一つありそちらも良いので合わせて聴くといいかもしれません。僕はこちらのMoa Viveの穏やかさの方が好みです。



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