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パレットクラブ日記 第1回・飯田淳先生の実技「見ないで描く」

2020年9月5日から、イラストスクール「パレットクラブ」(23期)に通い始めた。毎週土曜日、全33回のイラストコース。可能なかぎり、備忘録として残していこうと思う。

なぜパレットクラブに?

2020年7月で教職を辞め、イラストレーターとして本格的に活動を開始することになった。

▼これまでの経緯ざっくりまとめ漫画

しかし困ったことには、自分の代表的なタッチというのがまだない。ポートフォリオを作ってみても、あんなのもこんなのもある。どのタッチもそれなりに好きだが、まとまり・パンチに欠けている。

Instagramでは試みにガールズイラストを連投したりしているけれど、果たしてこれが本当に自分の描きたい絵なのか……? ウケ狙いでオシャレ「っぽい」絵を描きたいだけなのでは?

悶々とした思いを抱えていたとき、夫に「スクールに通ってみたら?」と言われたのが、パレットクラブの門を叩くことになったきっかけだ。
美大に通ったわけでもない、ただ幼い頃から絵を描くことが好き、という1点を拠り所にイラストを描いてきた。イラストを職業にするにあたって、いつかはしっかり学んでみたいとは思っていたが、夫の一言で、それが急に現実味を帯びることになった。

イラストのスクールと言われて、まず思い浮かんだのがパレットクラブだった。これまで数多のイラストレーターを輩出し、豪華な講師陣が魅力のスクールだ。同じ時間とお金を使うなら、一流に触れたい。そんな思いから説明会に参加し、その日のうちに申し込んだ。

第1回の講師は飯田淳先生

スクールから第1回の持ち物について知らせが来る。B以上の鉛筆、画板、目玉クリップまたはピン、B4画用紙(シリウス)10枚以上。
消しゴムがない……ということは、一発描きの実技課題かな? うーん、うまく描けるだろうか。

世界堂で画材を揃えているうちに第1回の日がやってきた。画板はないので水彩の水張り用の板を持っていく。美大生みたいな大荷物がちょっと嬉しい。

イラストコースの受講生は25人。今年はコロナで例年の半数の定員だそうだ。教室を囲むように配された椅子に自由に座る。だいぶ緊張する。飯田淳先生にお会いするのは説明会以来2回目。張りのある声、アーティストのオーラが漂う。

課題1「手元を見ないで対象(人物)を描く」

先生より、3段階に分けて描いていくことが伝えられる。誰でもいいので受講生を描くという課題だが、1回目は全く手元を見ないという条件つき。位置関係がわからないので、福笑いのようになって構わないという。手首ではなく腕を使って、一本の線でゆっくり形を取っていくようにと言われた。服の柔らかさ、肉の丸み、そういったことに注意してみるように、とも。

手元を見ずに描くなんて、もちろんやったことがない。恐る恐る描き始める。自分が今描いている線を、フィードバックがない状態で繋ぎ続けるのは勇気がいる。出来上がりが怖いが、ちょっと楽しい。3人を選んで描いたうちの1枚がこれだ。

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バンダナを首に巻いて、筆記用具で何か書いているらしいことは、何とかわかる。はっきり言って線を描くので精一杯だったので、対象の質感などには配慮できていない。メガネらしきものは描いているが、目は位置がズレるのが怖くて描けなかった

でも、何というか、自分の持っている生(き)の線が浮かび上がっているように感じる。私の線は筆圧高めのはっきりした線。頭の中の表象を追うことから解放され、観念的なものの見方から離れることで、自由さが生まれている。あらためて自分の描く線が好きだと思えた。

先生からは、手元の部分を褒めていただいた。

課題2「少しだけ手元を見ながら描く」

課題1と同様だが、少し手元を見ていいことになった。目の位置、鼻の位置などのチラ見が3割、見ないで描くのが7割。比較のために、先ほどと同じ3人を描くことにした。
ちら、ちら、と手元を見ると、その瞬間だけ作為のようなものが生まれる気がする。頭の中で振り解きながら、なるべく自由な線を目指して描いた。

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先ほどと同じ人を描いたもの。時々手元を確認できることで、1回目よりものびのびと描けた。慣れてきたというのもあり、線の力強さが増し、絵のサイズも大きくなっている。手を描くときに、ふだんの描き癖があらわれそうになったのでグッと堪えた。
1回目と違い、目と目線、表情が生まれ、線が生き生きしている。描いていて、すごく楽しい!

先生はそんなこともお見通しで「この人はこの描き方がだんだん楽しくなってきてますね。このへん(表情)面白いよね。この描き方を取り入れてみてもいいかもしれない。肩の描き方が表面的かな」とコメントを下さった。うわー、うわー、すごくありがたい。

課題3「いつもの描き方で描く」

はっきり言って、混乱してしまった。課題1〜2の描き方と、ふだんの自分の描き方があまりにかけ離れているからだ。さっきの描き方をふまえて描くという課題ではない。いつもの自分の描き方って、どうだったっけ?

たぶん、いつものやり方は、見ているようで見ていない。頭の中のイメージにしたがって自動的に手を動かしていく(手癖も加わる)感じなのだが、それが全然楽しくないのだ。あーあ、さっきの描き方、楽しかったなぁ。

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ほら、全然面白くない……!! さっきののびのびした線はどこへいったんだ。何をしたいのか、どこへ向かいたいのかさっぱりわからない絵になってしまった。
先生からも「(線が)固い。2枚目がすごく面白いよね」と言われた。

実技を終えて

手元を見ずに描くというのは、一つのトレーニングだと先生はいう。
対象だけに集中して描くことで、自分が何を取捨選択したかがはっきりと画面に残る。また、線のあり方がクリアになるような気がした。今回の描き方、家でもしばらく続けてみようと思う。

先生はほかにも「見えない背中を描く」とか「気持ちのリズムではなく形のリズムで描く」とか、「境界ではなく中身の入っている線」とか、私には理解しきれない、でも大切な(匂いのする)ことをたくさんおっしゃっていた。
今はわからないけど、これから開けられそうな扉が何枚もある。そんな気がするのって、すごく嬉しいことだ。

まだまだどこへ向かいたいのかわからない、私のイラスト。先生の「自分が何をしているのかをわかって描くことが大切だ」という言葉が心に残った。

イラストコースは、毎回先生が変わる。これからどんな発見があるか、すごく楽しみだ。

いただいたサポートで、少し美味しいおやつを買おうと思います。明日への活力です。