津村記久子『ワーカーズ・ダイジェスト』

『この世にたやすい仕事はない』ですっかりツムキクにはまってしまったので読んでみた。

32歳の奈加子の最近の悩みは、職場で一緒にランチをしている同僚が妙に冷たくされてしまう事。それから、大学時代の友達にマウントを取られて批判された事。仕事相手のおじさんに、何度も仕事でリテイクをもらうのだが、それが自分に対する悪意からであるということに気が付いてしまった事。日々、ただ働いて生活するだけでも精一杯な日常に、なんでよりにもよって心をすり減らす事が起こるのだろう。早く家に帰って寝たい。
同じく、32歳の重信は、職場での理不尽なクレーム対応に心をすり減らしながら、美味いスパカツを食べるのである。(??)

本当に津村記久子の小説は、大きな事件が何も起こらない。日常がただ淡々と過ぎていく。しかし、その日常の描写が妙にリアルで面白い。あぁ、そういうことあるよなぁ、と会社員時代の自分に何度も思いを馳せてしまった。働くってこういう事だよね、なんか辛いよね、でも楽しい事もあるよね、でもやっぱ辛いか、の繰り返し。そんなこんなで淡々と過ぎていく日常。なんだこの絶妙にリアルな感じは(何度も言う)。

小説を読み終えて、友達の幸せを喜んでいた主人公の奈加子のように、私も「あぁ、良かったなぁ」と思えました。みんな幸せになってくれ。

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