コント「往年のアイドル」

『ネタ帳グランプリ』に応募します。

架空の音楽番組『ミュージック・ナイト』の一幕。司会者・中西(中山秀征さん、香取慎吾さんのようなイメージ)と往年のアイドル・MIKI(相田翔子さん、森高千里さんのようなイメージ)が、向かい合って座っている。

褒め言葉の「変わらないですね」に対して、両者が意地になっていく。

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中西「さあ、始まりました。『ミュージック・ナイト』。司会の中西タクヤです。今日のゲストは、デビュー25周年を迎えました、歌手のMIKIさんです」

MIKI「よろしくお願いします」

中西「いやー、MIKIさんがデビュー25周年ですか。失礼ですが、今おいくつでしたっけ?」

MIKI「今年で45歳になりました」

中西「えー! 全然見えないです。お若いですね」

MIKI「あはは、お世辞はやめてください」

中西「いえいえ。本当に、昔からお変わりないですね」

MIKI「そんなことないです。それこそ、中西さんの方が昔からお変わりないですよ」

中西「いやいや、僕は変わっちゃいましたよ。やっぱりMIKIさん、変わらないですね」

MIKI「ごめんなさいね、これだけは本当に、中西さんの方が変わってないです」

中西「MIKIさん、いい加減認めてくださいよ。視聴者の皆さんも思っているはずです、MIKIさんの方が変わってないって」

MIKI「待ってください。じゃあ聞きますけど、私のどこが変わってないですか?」

中西「え? それは、もちろんお肌がツヤツヤじゃないですか」

MIKI「はい、残念。肌は変わっています。明らかに、シワが増えています。ほらここ、ほうれい線!」

中西「いや〜、全然見えないですけどねえ。逆に僕はどうですか? どこが変わっていないですか?」

MIKI「それは、ほら、お声が昔から変わってないじゃないですか」

中西「あーMIKIさん、声は変わってますねー。高い音が全然出なくなりました。マ〜♪ ほら、全然出てないでしょう」

MIKI「いや〜、ちょっとわからないですけど」

中西「一旦聞いてください。これね、若い頃は出たんですよ。マ〜♪ ほら。はい、僕は変わりましたね。じゃあMIKIさんが変わってないということでよろしいですね?」

MIKI、強情な中西に仕方なく折れる。

MIKI「はあ・・・はい、わかりました。私が変わってないということでいいです」

中西「はい、ありがとうございまーす! MIKIさん、昔から全然お変わりないですね〜!」

MIKI、不服そうに返す。

MIKI「どうも、ありがとうございます」

中西「それでは、デビュー25周年を迎えてもお変わりないMIKIさんに歌っていただきます」

曲のイントロが流れる。

中西「あどけない歌声に日本中が魅了されました。MIKIさんのデビューシングルです。『十九歳のサマータイム』」

MIKI、歌い出す。

MIKI、ハスキーボイスで癖の強い歌い方をする。原曲の歌い方と全然違う。

中西、残念そうに声を漏らす。

中西「変わっちゃったなあ・・・」

終わり

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