出した答えを意地でも正解にしなきゃいけない世界。

ヒプマイ観てるよ。

今はAbema TVでヒプノシスマイクのLIVEを観ながらこの記事を書いてます。
(今の声優スゲェよなんだこれ!)

……穏やかな時間。本来ならこの日は、最終稽古を終え、舞台監督さんのトラックに小道具やら衣裳やらを積み込み、明日の小屋入りへ向けた景気祝いに、キャストらと稽古打ち上げをしているはずの時間。
本当に世界は一瞬で変わるね。
つくづく僕らのやってるものは水商売なのだと。カタチのないものを作ってるんだなと感じさせられたこの一週間でした。
今日はこんな穏やかな時間の中、劇団結成以来最大級といえる決断を迫られたこの一週間を、モンヤリと振り返ってみようかなと思います。

小さな違和感。

思えば、「オリンピック延期!」のニュースを見た瞬間に感じた胸騒ぎが始まりだったのかな。ダムの決壊を見たというか。トリガーが引かれた瞬間を見たというか。わっかりやすく日本が変わったもんね。

事の始まり。

先週の水曜日、お昼。公演予定の劇場「スタジオあくとれ」まで、折込用のチラシを持っていった際、この日小屋入りしていた知り合いの団体の人たちとこんな話をしました。
「だいぶ、世間の空気も良くなってきましたねー」
じつはこの日の昼に知り合いのSNSで「3.31ロックダウン」の噂を目にしていた僕は、このやりとりにちょっとだけ違和感は感じつつも
「そうだねー」
なんてノリで会話を弾ませ、劇場を後にしました。帰り道に寄ったラーメン屋は店主の愛想はイマイチだったけど味はピカイチで店内は満席。言われてみれば確かに世間の空気は良くなって……きてるの、かな?
なんて思いながら店を出て看板にふと目を落とすと、

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洒落っ気のある店主だなあ、そういえば『ヒロイン・ア・ゴーゴー! 〜あの日の魔法少女〜』での僕の役も「ラーメン屋」だなあ、なんて程度の感想の奥に、なんだかチクッとする感覚が走ったことを覚えています。

延期という選択。

それまでは、「こんな時こそエンタメが必要なんだぜー!」と自分たちに言い聞かせていた自意識が、夕方のニュースで一変します。

「コロナウィルス感染者が都内で40人以上発生」

──あ、始まった。

これはその時の正直な感想。
何が、かはこのときはわからなかったけど、始まった気がして。その日は夕方からレッスン講師をしている養成所のリモートレッスン(このご時世だからね!)だったこともあり、ミュートでテレビ画面の小池都知事の会見を流しながらのレッスンでした。思えば一年間やってきたレッスンの最後が、スタジオではなくリモートというのも、なんだかなー。
満開の桜の中に雪が舞うし、令和になってからホントにすごいね。

話逸れました。

そんなこんなで、これまで一切感じなかった感覚が、ブレなかった意思が、ガクンと変わったことに自分自身でも驚きました。レッスン終わってすぐ、鈴木区メンバー全員にLINEを飛ばしました。
「22時からLINEでミーティングしよう!」
篠田みなみちゃんの配役変更に次いで二度目のリモート会議。メンバーも異変を察してくれたようで、皆で話し合いました。
そこで僕から出した提案は三つ
・このまま上演しようプラン
・現時点で予約をストップしてこぢんまり上演しようプラン
・安全そうな時期まで延期しようプラン
「中止」は一切考えてませんでした。もちろんメンバーの中からは「このままやりましょうよ!」という意見も出ましたが、結果的に僕らは「延期」を選択します。こんなミーティングをしている時点で僕の中の答えは決まっていたのかもしれませんが、「延期」という言葉にはじめは乗り気でなかった一部のメンバーも
「時期は6月」
ということを知ると、「おっ!?」という反応を示したのが手応えでした。
(ちょっとずるいやり方だけど、時期は後出しした)

omote_変更

これは勇退だと信じて。

この記事の最初に「水商売」という言葉を使ったけれど、器からこぼれた水はもう飲めないわけで……。
コロナ発生時も一貫して、その器(表現の場)だけは死守したかった気持ちが強かった僕は頑なに公演を中止・延期することを「逃げ」と思っていたのだけど、今回の敵に関しては、そうでなく「退く」ことが重要なんだと思えるようになったのが決定打でした。

そこからはスピード勝負。
こういうのは、「僕らが自分の意思で決断する」ことが大事なので、後手を打ったらアウト。悩むのはいったんやめて、先手で決断しました。

……にしても悔しいよね。
皮肉にも、笑うことによって飛沫するウィルスに、僕らコメディはどう足掻いても絶対に勝てない。笑かせば笑かすほど危険度が高まるなんて、どんなモチベーションでコメディしたらいいんだ! と。
なら、せめて、という、苦渋の判断でした。
しかしただで転ぶつもりはない。もう少しだけ見守っていてください!

そのあとがタイヘンだったぜー!

延期後の公演の準備が超タイヘンでした。
一部のキャストは出演が困難だったり、スタッフも異動があり、舞台美術はもう発注済みだったので二ヶ月間の保管場所の確保もあるし、何より
ほぼ完成していた作品のクオリティを二ヶ月間キープし続けるという緊張感!
今後も定期的に稽古は行っていくけれど……現状維持だったり演出・演技面の改変だったり……しかもこの作業が二ヶ月続く(しかも僕らは5月末に朗読劇があるんだ!)のかと思うと、どこかで気が緩んでしまうのではないかという怖さたるや……!!

とはいえ諸々の準備はほぼ終わったので、あとは発表させていただくだけですね。
「延期」っていうとなんかムカつくので気分は「追加公演!」のテンションで挑みます。

現実(リアル)な話。

今回のコロナ騒動でいろんな演劇が苦難に立たされています。潰れてしまいそうな制作会社もあると聞きますし、僕の知り合いの会社さんが勝負をかけた公演を全て中止にしたツイートが回ってきてゲロ吐きそうでした。そのプロデューサーのLINEのアイコンがウルトラマンから一休さんに変わっていて、連絡しようにも、なんだかできない感じに……(笑)。
僕らも例外ではなく、金銭面で吹き飛ばされそうです。

わたくしごとですが、この一年携わってきたゲームのシナリオ仕事が先日納品寸前で企画ごと吹き飛びまして、あー無職、って思ってたとこでのコレだったので断腸か否かと言ったら断腸でしたねーハイー(遠い目)。

とまあこんな状況ですけど、ふとナレーターとしてのCMギャラが入ってきてなんとか首の皮一枚助けられてます。
(まさに芸は身を助く! あとーーんす!)

……とはいえ6月にも確実にやれる保証はないけどね。
ただそうなった時は…感染する以上に深刻なダメージを負うと思う……なんてことは、もう考えないことにした…!
俺は自分の人生に賭ける。それに値する作品なんだ、6月には、上演したい!!

作品はメッチャ面白いのよ!

でも正直、正直ね……延期にして少し肩の荷が下りたところもあったり。
先週の今ごろなんてスゲエいい通し稽古ができてて、それでも漠然とした不安はずっとあって、けど稽古場ではみんなが笑顔で、こんなにも面白いものが、公演当日にはマスクや消毒液でかき消されてしまうのかと思うと、帰り道とてもツラい気持ちになったこともありました。
作品も座組のみんなもかわいい子どもです。子どもにはなるべく愛されて欲しい。
のに。のに、だ。正直ずっと葛藤はしてました。

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衣裳付き稽古の一部をチラ見せ。
初めてかも、通し稽古でゲラゲラ笑いすぎてダメ出しのメモ忘れるの(ダメだろ!)。
クライマックスシーンはガッツリ心に刺さるし……
今回の件もあって、思いがけず人生の中でも大切な作品になったなあ。

延期決定は、木曜の稽古前。僕から個別に電話で伝えました。
この日の稽古はみんなでツイキャスすることにしたんだけど、そこでのみんなの楽しそうな笑顔ときたら……! 救われたあ〜。
原優子ちゃんはアタマおかしいので(笑)
「こらー! 鈴木ィー!」
っていつもどおり追いかけ回してくるし(理由は不明)、みんなはお菓子だの飲み物だと揃えてきてキャッキャしてるし、劇場で配る予定だったオリジナルマスクは人数分あるしで……
超元気もらえたんだ。
素敵な仲間たち。二ヶ月後、きっと凄い公演になるぞこれは!

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延期発表の日、みんなで喋ったツイキャスはコチラ。
https://twitcasting.tv/suzukichan79/movie/601828413

今後。

ふつうに演劇やれるって素晴らしいことだったんだなあ。と、つくづく思う日々です。
過去にも、劇場がなくなったり旅行会社潰れたり降板騒動もろもろ色々あったけど、10年やってきて、一番シンプルなことに気づけたなあ。

今後は公演を打つということがさらに特別になっていくんだろうけど、僕らのやってることは、出した答えを意地でも正解に……ハッピーエンドにしていかなきゃいけない世界なんだ。

今後の予定は早めにお知らせします。そのときはぜひ劇場へ遊びに来てくださいね!
さらに、さらにパワーアップしたヒロアゴ少女を用意してお待ちしております。

その頃には世界も平和になっていますように。

ぺこり。


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