流々転

8月20日、大阪、雨。携帯が鳴る。気づかず私はまだ夢を見る。
10時6分、走る。電車の方が15分早く着くのはわかっていたけど、
1秒も立ち止まりたく無かった。

10月9日、東京、やはりしめっぽい空気の中、横断歩道を渡る。信号は赤。
1秒、2秒、3秒。クラクションが鳴り続ける。私は構わず歩く。4人、視線を背ける。
名前も知らない、1輪の花と目が合った。


8月21日、大阪、快晴。花瓶に刺した一輪の花は、名前を知ることも無かった。側に置いてある腕時計は21時08分で止まったまま。
涙は一滴も出なかった。家に戻り、服を探す。5,6年前に着たきりで、少し埃を被っていた。

10月8日、東京、曇り。早朝は少し気温が下がり13°、上着を一枚羽織る。1,2,3,4、何日経っただろうか。街のひとつひとつが今のわたしには、煩く、苦しかった。私はある言葉を思い出した。

8月30日、大阪、どこか街も暗かった。私の部屋にはまだ、彼が居る。拾い集め、ひとつの箱にしまう。その中に一枚、封の空いていない筒が。窓の向こうで雷が鳴った。雨は降っていなかった。

10月2日、大阪、雨、私は深夜バスに乗っていた。行き先はどこでも良かった。でも最後にあの場所へ行きたかった。彼がそこに居るような気がした。


9月10日、大阪、月が見える。覚悟などいらなかった。計画も、便宜も、大義も、感情の前では無力だ。私はただ、ひたすらにその時を待っていた。月が見えなくなったことにも気づかなかった。

9月19日、大阪、もう何日も部屋からは出ていない。天気は、晴れていた。深くカーテンを閉めた。もう一度封筒を開く。クシャクシャになった紙の奥に一枚のカードを見つける。2人の写真と共に見慣れた字が。「私も」そう呟いた。

9月12日、大阪、ややしめっぽい空気の中、横断歩道を渡る。1秒、2秒。信号は赤。クラクションが鳴った。私は構わず歩く。3人、こちらに視線を向けている。私の視線はただ一点を。3歩、2歩、1歩。

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