あけましておめでとうございます、カセットのことなど。

あけましておめでとうございます。

年賀状


さて、新年早々、気鋭の音楽評論家、細田成嗣氏が2022年の新しい試みで始めた、一言レビューの栄えある初回に言及してもらいました。https://twitter.com/HosodaNarushi/status/1477296327226703878  

とてもどうもありがとうございます、ということと、実は細田くんにはフィジカルリリースのための解説を書いてもらっているので、それをバンドキャンプに載せました。英文の概略の下、’more’をおしてください、ずらりと日本語で長文がでてきます。https://suzueri.bandcamp.com/album/transmisiones-futuras

カセットのライナーにしては長すぎるしディスクリプションに全部に載せられるのかいな、と思ったけどコピペしたら貼れた。ので皆さん読んでください。他メンバー大城くん寛太くん絶賛のライナーです。ちなみにフィジカルリリース、カセットのほうは、手刷りのエンボス加工にしようとか、特色金をつかった3色にしようとか、よせばいいのにいろいろやろうとして、まだできてません、できてませんが、1月中にはできる予定です(なお、カセットテープ自体は昨年頭にとっくのとうにできております)。

ライナーはこんなかんじで作っている。はっきりいって読みづらいです。

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Twitter評では、「コロナ禍で急激に注目を集めた遠隔セッションの成立条件に切り込むクリティカルな作品。」と書いてもらっていただいた。よいことです。クリティカルなりにやっていることはややこしいので、背景などを説明します。この録音のA面は、チリ、バルパライソのTsonami が運営しているネットラジオ、Radio Tsonamiのプログラムに参加したときのもので、時期的にはコロナ禍になって初めてのロックダウンになった2020年5月のことです。zoomでミーティングするのにも、ようやくみんな慣れたかな、zoom飲みというのもちょいちょい始めた頃の話です。

音量をとって演奏をシャッフルする、という寛太くんのアイデアは、Tsonamiでの放送が決まってから 3月から4月にかけて、何度かzoomで打ち合わせしていたときの彼の気づきから発想されました。zoomでは、音量で発言者にフォーカスするのが面白いからそれをやってみよう、というアイデアで、システム的には、私と大城くんの音をYamahaのNETDUETTO(SYNCROOMのβ版)で寛太くんに送って、受けた寛太くんサイドでMax(/MSP)を使ったプログラムでシャッフルし、チリに送る、という感じでした。なお、細田くんのライナーで同様のことに触れてもらっているのですが、このアイデアと経緯については特に私のほうからは伝えていません。

大城くんは、彼のレーベルからリリースした、中村ゆいさんの録音(2019年Basic Function)のときから彼自身が気にしていた、リアルタイムのフィールドレコーディングを交えた即興、というのをこの時もやっていて、お昼に武蔵野市がコロナ感染予防についてアナウンスする放送なんかも入りつつ、でもだいたい遠い音で、さらに音量で全員の音がシャッフルされ、強烈な「いまここ感」だけがなぜか残りつつ、全体的にはわけわからない。という演奏になったかなと思ってます。

細田くんがリアルタイムの視聴をしてくれていたのですが、そのときの感想は「すごい……どんどんよくわからなくなっていく。」
ちなみに、リアルタイムで聞いてくれたのは実は細田くんしかいなかった気がするのと、2020年当時、細田くんは以下のような配信と即興についてのイベントをとりしきっていたのもあって、https://twitter.com/HosodaNarushi/status/1264874570848165889
今回解説をお願いしました。ちなみに上記の細田くんのイベントに関しての私とのやりとりなど。https://twitter.com/suzueri/status/1265522616347000834

といった諸々も含め、あとは音で実際にお聞きください(わけわからないけど)。というのと、自分的には、チリと日本、時差12時間の地域をつないで抽象的にやってみた内容を、さらにフィジカルにカセットテープに出すところまでが遠足です、という気分なので、1月末のフィジカルリリースをお楽しみに(順調にいけば)。印刷は豪華なので買ってくれ。あと、うまくタイミングをつくれれば、いまベルリンにいる大城くんと、東京の私と寛太くんをつないでリリパします。来るか見るかしてください。

それから、自分の中ではもうひとつオンラインでのアプローチとして書いておきたい音源があって、イタリアのSUPERPANGからリリースされた「FIRST ALBUM」(a.hop) https://superpang.bandcamp.com/album/first-albumです
a.hopは、いまイギリスに住んでいる赤間涼子さんの声がけで始まったプロジェクトで、東京、シンガポール、ベルギー、イギリス、アメリカ、カナダ、ブラジル、メキシコの8カ国、全員女性、そして全員が音楽ではない音のアーティスト、という9人のメンバーが、スコア作品をよってたかってリアライズする、というコンセプトのバンドです。

このバンドの最初の活動は、イギリスのAudiograft Festivalにオンラインで参加で、私を含め3名のメンバーがテキストスコアを書いて9人にリアライズしてもらい、ビデオに編集してサイトに上げました。SUPERPANGからのリリースは、それを音で聞けるようにミックスしなおしたものです。

私個人的には、2020年にRadio Tsonamiとやりとりして、というより、2020年から2021年にかけて、zoomやteamsをつかった海外の人とのミーティングやライブが本当に多くて、行けない/会えない分、逆に世界は狭くなったけど、とはいえ配信というメディアはちょっと独特で、一番の特徴はタイムギャップ、というか時差やレイテンシー(リアルタイム演奏での)だなあ、という実感があり、このスコアは時差をテーマに考案したのだった。なお、ネット黎明期、1996年にあったマイクロソフトのこの事件 (I survived Bedlam 3) と、2019年の中南米をつなぐネットデモ(Cacerolazo latinoamericano)も参考にしています。

スコアに落とし込んだ具体的な内容は、各地の朝10時に10秒空を撮影し、次の10秒、ローカルラジオからの音を流しながらさらに空を撮影し、それをメールに添付して、一番近い地域のメンバーに送る、つまりチェーンメールを作る、というものでした。スコアと動画はここにあります。 http://www.audiograft.co.uk/a-hop-the-dress-of-jeanne-baret/ ちなみにサイトは非常に重いです。

重いのでスコア画像、ここにも貼ります。計3枚。

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と、いうわけで。

コロナ禍による今の状況はもうちょっと続きそうですが、東京はぼちぼちライブも再開しはじめて、zoom飲みもみんな飽き始めて、2020年初頭にみんなして配信していたような熱量はなくなりつつ、とはいえ配信を始めた東京の箱なんかは、ずっと前からやっていたような顔してたんたんとつづけつつ(とはいえ配信ってすごい大変なので、涼しい顔して配信をする小さな箱をリスペクトしてます。とくにForestlimitを褒めたい)、これから起こる未知のこともあるだろうとおもう。

私もけっこう年をとってきたのに、経験したことのないことが2019年ごろからとっても多くて、長生きしたいなと思ってます。感染にはくれぐれもお気をつけて。今年もよろしくおねがいします。

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