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ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2021 第1ステージ

スペイン北東部カタルーニャ州を舞台とした7日間のステージレース。例年、クライマーのためだけのステージレース、といった印象だったが、今年は中距離個人タイムトライアルが登場したことで、よりオールラウンダー向けに。

とくにイネオスやユンボは誰がエースかわからないくらいの豪華な布陣で臨んできており、今年のグランツールを占ううえで重要な一戦となっている。


第1ステージはカレーリャからカレーリャまでの178.5km中級山岳ステージ。

レース中盤に標高1,270mに達する1級山岳を越えることになるが、ほぼ同じレイアウトで繰り広げられる例年は集団スプリントで決着することも多いステージだけに予想のしづらい1日となった。

コースプレビューや注目選手は以下の記事で


逃げは4名。

シルヴァン・モニケ(ロット・スーダル)
ナトナエル・ベルハネ(コフィディス・ソルシオンクレディ)
レイン・タラマエ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
ゴッツォン・マルティン(エウスカルテル・エウスカディ)

集団から最大で5分近いタイム差をつけていた4名だったが、残り68㎞地点から始まる中盤の1級山岳の登りで分裂。

単独で抜け出したモニケが山頂を先頭通過しその日の山岳賞ジャージ獲得を決めるが、すでに集団はすぐ背後に迫ってきており、間もなく全ての逃げは吸収されてしまった。


この登りで集団を強力に牽引したのがモビスター・チーム。アレハンドロ・バルベルデ、エンリク・マス、マルク・ソレルというチームのエース級を揃えたモビスターの超牽引で、集団は縦に長く引き伸ばされ、そこからペテル・サガンやクリス・フルームらが脱落する。

このモビスターの牽きも山頂を越え下り切ったあとの平坦路に突入すると終わりを迎え、集団はややペースを落とし混戦状態に。

そこから次なる逃げを目指しアタックが頻発するが、最終的には残り23㎞地点でアスタナ・プレミアテックのスペイン王者ルイスレオン・サンチェスがアタック。

ここに食らいついていったアンドレアス・クロン(ロット・スーダル)、レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)レミ・ロシャス(コフィディス・ソルシオンクレディ)の計4名が抜け出す。

この逃げを集団は容認。

しかし、レイトアタック巧者のサンチェスに加え、昨年ツールでも山岳逃げ切り勝利を果たしているケムナを含んだ逃げを容認するというのは、本来であれば決してやってはいけないことであった。


残り19㎞でタイム差34秒。このタイム差は縮まるどころかむしろ広がっていき、残り7km時点で40秒に。

集団の先頭はトレック・セガフレードのフアン・ロペスやEFエデュケーション・NIPPOのホナタン・カイセドなど、登れる選手たちが中心で平坦牽引巧者たちの姿はない。

残り5㎞で集団の先頭にイネオス・グレナディアーズのローハン・デニスやジョナタン・カストロビエホなどのTTスペシャリストたちが陣取ってペースを上げ、タイム差は着実に縮まっていくものの、あまりにも遅すぎた。

結局残り1㎞でもタイム差は30秒も残っており、先頭の4名はたっぷりと牽制できるくらいの余裕をもっていた。


レナード・ケムナを先頭に最終ストレートへ。その背後にはルイスレオン・サンチェス。

残り数百メートルで3番手のロシャスがまずはアタック。その背後についていたアンドレアス・クロンがそこでアクセルを踏んだ。


昨年のツール・ド・ルクセンブルクでもディエゴ・ウリッシを打ち倒している期待の若手パンチャー、クロン。

この4名の中では純粋なスプリント力という点では最も強いのは明白だった。あとは足をしっかりと残していたかであったが—―どうやらそれは、問題なかったようだ。

簡単にロシャスを抜き去ってフィニッシュに突き進んでいくクロン。

サンチェスも慌ててこれを追いかけるが、しかし最終的には届かなかった。

アンドレアス・クロン。ワールドツアー1年目の若きデンマーク人。

期待に応える見事なワールドツアー初勝利を成し遂げた。

第1ステージ


昨年に続き、とはいえ昨年とはまた違ったタイプの逃げ切り勝利となった今年のカタルーニャ開幕戦。やはり例年、予想の難しいステージだ。

翌日は大会的には実に11年ぶりとなる個人タイムトライアル。18.5kmと総合争いにも十分影響を及ぼしうる中距離個人TTで、早くも白熱の総合争いが勃発すること間違いなしだ。

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