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トロフェオ・ライグエーリア2021

例年であれば2月中旬に開催され、イタリアのロードレースシーズンの開幕を告げるはずのレース。

およそ半月後ろ倒しで開催されたこのレースは、ある意味で週末のストラーデビアンケに向けた前哨戦の意味合いを纏うことになった。

すなわち、この週末のストラーデビアンケにおいても優勝候補と目されているバウケ・モレマやマテイ・モホリッチ、エガン・ベルナル、それ以外にもヴィンツェンツォ・ニバリやミケル・ランダ、ナイロ・キンタナなどの実に豪華なメンバーが集まることとなった。

1月末~2月中旬にかけて南フランスに有力チーム・選手が集まって豪華なレースを展開したのと同様、このトロフェオ・ライグエーリアから始まってストラーデビアンケ、ティレーノ~アドリアティコ、ミラノ~サンレモと続く一連のイタリアレース群に多くの有力選手が連続して出場することになるだろう。


さて、そんな「開幕戦」トロフェオ・ライグエーリアは、ジェノヴァを中心としたリグーリア州の伝統的レースである。

南フランスから続く「リヴィエラ」の一部であり、多くの有力選手が住むモナコからも近い、風光明媚な土地である。

ライグエーリアはそのリグーリア州の南西に位置しており、ミラノ~サンレモ終盤の舞台となる「アラッシオ」もコースの一部に組み込まれている。

リグーリア湾を臨む切り立った崖を走る美しい風景も楽しめる、実にイタリアらしいワンデーレースである。


ライグエーリア郊外にはアルプス山頂から続く丘陵地帯が広がっており、このレースはまず内陸のその地域を巡っていく。

やがてライグエーリア近郊に戻ってくると、登坂距離2.1km・平均勾配7.9%の「コッラ・ミケッレ」を含む周回コースを4周してフィニッシュに到達する。

最後の山頂からゴールまではおよそ10㎞。そのあとも小さな登り「カーポ・メーレ」が控えており、その急勾配の下りを下り切ってからゴールまでは1㎞。

過去のレースを振り返ってみると、やはりラスト10㎞の最後の「コッラ・ミケッレ」で抜け出した選手の独走で決まることが多いようだ。


今年のレースは総勢12名の逃げが形成されて始まった。

ニキータ・スタルノフ(アスタナ・プレミアテック)
ニコラ・エデ(コフィディス・ソルシオンクレディ)
マッティア・バイス(アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ムルー・ハイルミカエル(デルコ)
ジョン・アーチボルド(EOLOコメタ)
ウナイ・クアドラード(エウスカルテル・エウスカディ)
マタイアス・ヴァツェク(ガスプロム・ルスヴェロ)
ヴェリコ・ストイニッツ(ヴィーニザブ)
ニッコロ・サルヴィエッティ(Mg.k Vis VPM)
ダヴィデ・ペルシコ(チーム・コルパック・バラン)
ユーリ・ホルマン(モビスター・チーム)

トレック・セガフレード、イネオス・グレナディアーズ、バーレーン・ヴィクトリアスが中心となって集団を牽引し、最大で5分もいかない程度のタイム差しか許されなかった逃げ集団からは、中盤の登り「テスティコ(登坂距離7.2km・平均勾配4.5%)」の登りあたりから、コンチネンタルチームの選手中心に少しずつ脱落者が出始めてくる。


残り40㎞でいよいよ周回コースの最初の「コッラ・ミケッレ」の登りに。

ここでプロトンからまず攻撃を仕掛けたのがバーレーン・ヴィクトリアスの昨年ツール・ド・フランス総合5位、ミケル・ランダであった。

このランダの攻撃にすぐさまトレック・セガフレードのエース、ヴィンツェンツォ・ニバリが食らいつく。のちにイネオス・グレナディアーズのネオプロ2年目、カルロス・ロドリゲスもここに加わる。この危険な攻撃は一度集団に引き戻される。

先頭の逃げ集団はすでにニコラ・エデ、マッティア・バイス、ユーリ・ホルマンの3名だけに。彼らも、4周回中の2周回目でいよいよプロトンに吸収される。

そして3回目の「コッラ・ミケッレ」に向けてAG2Rシトロエン・チームのネオプロ、クレモン・シャンプッサンとドゥクーニンク・クイックステップの若手ジェームス・ノックス、さらには2019年ツール・ド・フランスの覇者エガン・ベルナルが抜け出した。

先ほどまでは5~60名ほどはいたメイン集団も、この最後から2回目の「コッラ・ミケッレ」の登りを経て先頭は7名ほどに。

クレモン・シャンプッサン(AG2Rシトロエン)
エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)
マウリ・ファンセヴェナント(ドゥクーニンク・クイックステップ)
ビニヤム・ギルマイ(デルコ)
ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)
ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)
バウケ・モレマ(トレック・セガフレード)

少し遅れてグルパマFDJのヴァランタン・マデュアス、そしてそのさらに後ろにアルケア・サムシックのナイロ・キンタナとバーレーン・ヴィクトリアスのペリョ・ビルバオ、そしてジェームス・ノックスなどが追いかけている状況。

残り15㎞。「コッラ・ミケッレ」に挟まれた小さな登り「カーポ・メーレ」。そこで不意を突くようなアタックを繰り出したのが、2019年のイル・ロンバルディア覇者バウケ・モレマであった。

残る6名は全力でこれを追うが、ジュリオ・チッコーネは重し役となってローテーションを拒否。それ以外の選手たちも互いに牽制状態に陥り、思うようにペースが上がらない。

ラスト11㎞。最後の「コッラ・ミケッレ」の登りに差し掛かるとエガン・ベルナルが強烈な勢いでアタックを繰り出すが、これをクレモン・シャンプッサンが先頭になって牽引してメンバーを引き千切りながら捉える。

足を止めたベルナルに追い付いたのはシャンプッサンとモレマとファンセヴェナント。チッコーネはわずかに遅れてしまう。

さらにランダがカウンターアタック。それが捕らえられると今度はシャンプッサン。

繰り返されるアタックとブレーキの連続は、モレマの独走を利する結果にしかならず、チッコーネもついては離れの繰り返しながらも、この追走集団から決定的に遅れることはなく、牽制役としてしっかりと役割を果たしている。

最後の「コッラ・ミケッレ」も終わり、あとはフィニッシュ前5㎞の小さな最後の「カーポ・メーレ」だけ。先頭モレマと追走5名のタイム差は20秒。

この局面での20秒は、モレマにとっては大きな大きな安全圏であった。

まさに、彼の勝ちパターン。ツール・デ・アルプ=マリティーム・エ・デュ・ヴァル第1ステージに続く今季2勝目、チームとしては4勝目を飾る勝利を掴み取った。

2.トロフェオ・ライグエーリア

あとは勝てなかったもののベルナルやファンセヴェナント、シャンプッサンといった若手の活躍が光ったこのトロフェオ・ライグエーリア。

ベルナルはモレマはこのまま週末のストラーデビアンケへ。それ以外のメンバー(ファンセヴェナントやランダ、チッコーネなど)も同じ週末のイタリアで開催されるGPインダストリア&アルティジアナートに出場予定。

それぞれの活躍が楽しみである。

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