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ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2021 第2ステージ

スペイン北東部カタルーニャ州を舞台とした7日間のステージレース。例年、クライマーのためだけのステージレース、といった印象だったが、今年は中距離個人タイムトライアルが登場したことで、よりオールラウンダー向けに。

とくにイネオスやユンボは誰がエースかわからないくらいの豪華な布陣で臨んできており、今年のグランツールを占ううえで重要な一戦となっている。


第2ステージはバニョラスを舞台に執り行われる18.5km個人TT。

全体的にはフラットだが細かなカーブが多くテクニカルなTTで、最速王決定戦及び重要な総合争いが繰り広げられた。

コースプレビューや注目選手は以下の記事で


序盤に最速タイムを叩き出したのはドゥクーニンク・クイックステップのヨセフ・チェルニー。

それまでの暫定トップタイムだったトニー・ガロパンの記録を一気に50秒も上回ってきた。


しかしそんなチェルニーの中間計測を塗り替えたのはやはりこの男、フランスTT王者のレミ・カヴァニャ。

チームメートであるチェルニーの中間計測を6秒も上回ったカヴァニャは、最終フィニッシュ地点での記録では・・・33秒も更新!

ティレーノ~アドリアティコではフィリッポ・ガンナを打ち倒したこの男は、やはり尋常ではない。ここまで安定して走れるフランス人TTスペシャリストというのは久々な感じがする。


しかし、ここ最近はイマイチなことが多かった元世界王者がここで復活の走りを見せつける。

ローハン・デニス。2018年と2019年のTT世界王者。かつては総合系も狙えるオールラウンダーの走りを見せていた彼は、昨年のジロ・デ・イタリア最終盤の山岳地帯では誰よりも強い山岳アシストぶりも見せつけて、テイオ・ゲイガンハートのジロ制覇の最大の立役者となった。

その彼が、圧倒的だったカヴァニャのフィニッシュタイムをさらに5秒更新。最終的には彼を上回る記録を出せるものはおらず、2019年の世界選手権以来となるTT勝利を実現させた。


一方、総合争いも白熱。

まずは、リッチー・ポートがデニス、カヴァニャに次ぐ暫定3位を記録。カヴァニャからは29秒遅れではあるものの、かつてクリス・フルームを打ち倒すこともあったTT能力は健在であった。

さらに、アメリカ最大の期待のオールラウンダー、ブランドン・マクナルティがポートをさらに6秒上回る暫定3位更新。やはりこの男は本物なのか。


だが、何よりも驚きの走りを見せつけたのがアダム・イェーツ。

TTは苦手とまでは言わないものの、決して武器にできるような足ではなかったはずの彼が、リッチー・ポートと並ぶタイムを叩き出し暫定5位に。サイモン・イェーツを35秒上回る好成績となった。

ステフェン・クライスヴァイクも期待通りのTT力を見せ、ポートを2秒上回る暫定4位に。

そしてドゥクーニンク・クイックステップのジョアン・アルメイダもやはり強い。暫定3位に入り込んでいたマクナルティを1秒さらに上回り、アルメイダが新たな暫定3位に。

逆にリチャル・カラパスやエンリク・マス、ルーベン・ゲレイロなどは1分20秒遅れ、昨年ジロ総合2位のジェイ・ヒンドレーは1分52秒遅れなど苦しい結果に。

総合リーダージャージを巡る争いにおいては、前日2位でメイン集団に対してボーナスタイム込みで28秒のリードを保有していたルイスレオン・サンチェスの走りに期待していたが、最終的には3秒届かずにジョアン・アルメイダに総合リーダーの座を奪われる結果となった。

リザルトは以下の通り。

第2ステージ


参考までに、総合勢のタイムをアルメイダを基準として記載していく。

1.ジョアン・アルメイダ
2.ブランドン・マクナルティ
3.ステフェン・クライスヴァイク(+5秒)
4.リッチー・ポート(+6秒)
5.アダム・イェーツ(+7秒)
6.ゲラント・トーマス(+19秒)
7.ファウスト・マスナダ(+20秒)
8.ウィルコ・ケルデルマン(+24秒)
9.ルイスレオン・サンチェス(+25秒)
10.ティージェイ・ヴァンガーデレン(+26秒)
11.テイメン・アレンスマン(+30秒)
12.クーン・ボウマン(+31秒)
13.リゴベルト・ウラン(+37秒)
14.レナード・ケムナ(+37秒)
15.マルク・ソレル(+39秒)
16.ヒュー・カーシー(+40秒)
17.ジェームス・ノックス(+41秒)
18.サイモン・イェーツ(+42秒)
19.アレハンドロ・バルベルデ(+46秒)
20.アッティラ・ヴァルター(+48秒)
21.ハロルド・テハダ(+49秒)
22.エンリク・マス(+51秒)
23.ジョージ・ベネット(+51秒)
24.リチャル・カラパス(+52秒)
25.セップ・クス(+55秒)
26.ルーカス・ハミルトン(+56秒)
27.ハーム・ファンフック(+56秒)
28.クリス・ハーパー(+59秒)
29.マルク・ヒルシ(+1分00秒)
30.ダニエル・マーティン(+1分02秒)
31.クレマン・シャンプッサン(+1分03秒)
32.ナイロ・キンタナ(+1分07秒)
33.ワウト・プールス(+1分12秒)

未来のオールラウンダー候補、テイメン・アレンスマンなどがなかなかにいいタイムを叩き出せている一方、本来であればもう少し好成績を出してもよさそうなエンリク・マスやリチャル・カラパスが沈んでいるのは、今大会あまり調子が良くないことを示しているのかもしれない。

また、やはりというかなんというか、登坂力はあるけれどもピュアクライマータイプなのかTTではビハインドを抱えそうなのがセップ・クスやルーカス・ハミルトン、ハーム・ファンフックやクレマン・シャンプッサンなど。

クリス・ハーパーなんかはもう少しいい走りができていてもよさそうなものだが・・・。


一概には言えないとはいえ、一つの参考にはなるだろう。

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