見出し画像

ジロ・デ・イタリア2022 第3ステージ

第2ステージはこちらから

全3日間のハンガリー戦の最終日は、3日目にしてようやく訪れた今大会最初の集団スプリントステージ。

ブダペスト南西180㎞に位置する街カポシュヴァールからスタートし、その北方に位置するバラトン湖の北岸バラトンフュレドに至る201㎞のド平坦ステージだ。


逃げは3名。昨日も逃げたドローンホッパーの2名と、エオーロ・コメタの1名。プロチームから3名が逃げに乗る形となった。逃げ総距離で競うフーガ賞においてドローンホッパーは早速アドバンテージを得ている形となる。

マッティア・バイス(ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
フィリッポ・タリアーニ(ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
サミュエーレ・リーヴィ(エオーロ・コメタ)


その後は落車もなく平穏に距離が消化されていく。残り132㎞地点の中間スプリントポイントではタリアーニが先行し、リ―ヴィが2位。バイスは3位で集団側でフェルナンド・ガビリアとアルノー・デマールが飛び出してそれぞれ4位、5位。以下、ジャコモ・ニッツォーロ、ビニヤム・ギルマイと続いていった。

残り43㎞で先頭2名からリ―ヴィがアタックし、タリアーニが脱落。バイスだけが食らいついていく。

その後互いに加速する場面はあったが引き千切ることはできず、最終的に残り28㎞で集団に吸収された。


残り8.7㎞地点に4級山岳。ここまで、第1ステージと第2ステージにそれぞれフィニッシュ地点に4級山岳が置かれていたが、第1ステージではフィニッシュ順と同じくマチュー・ファンデルプール、ビニヤム・ギルマイ、ペリョ・ビルバオがそれぞれ3,2,1ポイントを獲得。

第2ステージはTTのため、最後の4級山岳の登り部分だけのタイムで競われるのだが、ステージ優勝者のサイモン・イェーツは3位で1ポイント。最も早く最後の登りを登ったのは実はリック・ツァベル(イスラエル・プレミアテック)で、2位がパスカル・エーンクホーン(ユンボ・ヴィズマ)。それぞれ3ポイント、2ポイントを獲得している。


そして、今回の残り8.7㎞地点の4級山岳に向けて、このツァベルとエーンクホーンが飛び出した。そして競り合いの末、ギリギリでエーンクホーンが先着。ポイントで並ぶが、最終的にマリア・アッズーラを着たのはツァベル。少なくとも第2ステージ終了時点ではツァベルが5分42秒遅れの総合145位、エーンクホーンが6分29秒差の総合157位だったので、今日が同着フィニッシュだったとすればその総合順位の差によってツァベルにアドバンテージがあったのかもしれない。

第4ステージは1級山岳エトナフィニッシュということで、エーンクホーンがマリア・アッズーラを奪い返すのはちょっと難しいかもしれない。

良いチャレンジではあったが、残念。そしてツァベルおめでとう。


そして、ラストの集団スプリント。

残り5㎞付近から各チームのトレインがせめぎ合うが、その中でクイックステップは5年前からずっと、「最後の最後まで主導権はあえて握らない」スタイルがグランツールでは続いている。

この日も、残り3㎞や2㎞ではあまり存在感を示さない中で、残り1.5㎞になって隊列を一気に整えて先頭を支配。

まずは先頭ダヴィデ・バッレリーニ。続いて残り800mでバッレリーニが外れ、先頭はベルト・ファンレルベルヘ。ここで(UAEチーム・エミレーツの)マキシミリアーノ・リケーゼとマチュー・ファンデルプールとを率いるアルペシン・フェニックスのアレクサンダー・クリーガーが左から加速していって一旦先頭を奪われるが、残り600m、クリーガーと同時にファンレルベルヘも仕事を終え、先頭はミケル・モルコフにバトンタッチした。

少し早い?

残り300m。リケーゼと同時にモルコフも外れ、カヴェンディッシュがスプリントを開始! 普通に考えてめっちゃ早い。追い風だった?

だが、リケーゼから先頭を譲られたファンデルプールもあくまでもヤクブ・マレツコの発射台のつもりだったため、すぐ後ろにマレツコがいないと気付くとすぐに足を止め、フェルナンド・ガビリアも同じく残り300mからスプリントを開始せざるをえなかった。

そしてモルコフお得意の、仕事終了後の巧みなライバル妨害も効いて、ガビリアは彼を回り込んで先頭に出ざるを得ず、遠回りを強いられた。

あとは、真っ直ぐ突き進んでいくカヴェンディッシュ次第。300mは長く、3~4年前の彼であれば明らかに失速していたはずの距離であったが——背後につけたアルノー・デマールにも並ばせず、ガビリアにも追いつかせることなく、そのまま先頭を守り切って勝利した。

マーク・カヴェンディッシュ、ジロ・デ・イタリア16勝目。クイックステップのトレインが非常に強かったのは確かだが、最後の伸びと速度キープ力は、彼自身の強さの明確な表れだった。

文句なしの世界最強スプリンターの一角として、今年も君臨するのか。

年齢はすべて2022/12/31時点のものとなります。


マチュー・ファンデルプールはあのタイミングで自ら仕掛けてみるのも面白かったかもしれない。勝つのはさすがに難しかっただろうが、4位くらいには入れていたかも。

ただ、彼は結構ピュアスプリンターにしっかりと委ねる性格なので、今大会はこのままマレツコのアシストをしていくことになるのだろう。マレツコも最後の伸びは良かったが、クリーガー⇒ファンデルプールと良いトレインが形成されていたので、そこにしっかりとついていってほしかった。


大敗を喫したのはロット・スーダルとバーレーン・ヴィクトリアス。

ロット・スーダルは残り2.1㎞くらいまでロジャー・クルーゲ⇒シルヴァン・モニケ⇒ルディガー・ゼーリッヒと3枚のアシストでユアンのためのトレインを組んでいたが、残り1.9㎞でクルーゲが脱落。その後は各人バラバラになりながら集団の中に埋もれていった。そもそも残り2.1㎞の時点でクルーゲが先頭から5番手・6番手にしかおれず、全く主導権を握られていなかった時点で、彼らの勝ちパターンには入れていなかったのでどうしようもなかった。

それでも最後の最後、ユアンが単独で飛び出していって8位に入ったのだから凄い。第1ステージの落車の影響は大丈夫そうかも?


ロット・スーダルがステージレースの初日で大崩壊するのはいつものことなのでいいとして、問題はバーレーン・ヴィクトリアス。

残り2.1㎞の時点でフィル・バウハウスの前にいたのはヤッシャ・ズッタリンだけ。そのズッタリンも残り1.9㎞の時点で失速し、早くもバウハウスは独りになってしまった。それじゃどうしようもない。

その後そのバウハウスの所属する右側のトレインの先頭にノヴァクが飛び出して牽き始めるが、バウハウスはその先頭ノヴァクから5列も後方に取り残されていたので、あまり効果はなかっただろう。

残り300mを過ぎてカヴェンディッシュたちがスプリントを開始した時点でもバウハウスは5列も後方でスプリントせざるを得ず、勝てる土台に全く乗れていなかった。

伸びは良かったので、ここもトレインさえうまくいっていれば。

バーレーン・ヴィクトリアスはあらゆるものを求めたチーム体制で、実際にあらゆるものを取ってしまう強さはあるが、かといってやはり今日のようにチームのトレイン力がモノを言うグランツールのオーソドックス集団スプリントではアシストの数という点でどうしようもないだろう。今回のメンバーはさすがにクライマーが多すぎる。ヤン・トラトニクが初日落車して調子が悪そうなのも悪影響を及ぼしていそう。

今後、より混乱したスプリントの場面で、チャンスを狙っていく必要があるだろう。

バウハウス、期待していただけに残念。


明日は移動日を挟んで第4ステージでは早速のエトナ山山頂フィニッシュ。

例年エトナは逃げ切り優勝が決まりやすく、総合勢による「本気の」戦いはまだ始まらないだろう。但し、早速「落ちる」選手は結構いる。2020年、ここで落ちたサイモン・イェーツは大丈夫か。トム・デュムランやヴィンツェンツォ・ニバリなど、TTは好調だったが今年の登りでそこまででもない選手たちはここで落ちてしまうのか? マチュー・ファンデルプールはさすがにマリア・ローザを失うことになるだろうが・・・もしかしたらなんてこともあるかも?

気になる第4ステージのレイアウトなどは以下のリンクでぜひご確認ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?