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ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 第1ステージ

シーズン最後のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャ。プリモシュ・ログリッチの史上初となる4連覇達成や、昨年のジロ以来となるグランツール出場となるレムコ・エヴェネプールなどが注目されている今大会。

その第1ステージはオランダ・ユトレヒトで開催される23.3㎞のチームタイムトライアル。グランツールでは3年ぶりの実施となるチームタイムトライアルは、果たしてどんな結果をもたらすか。

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かつて、ブエルタ・ア・エスパーニャではチームタイムトライアルで開幕することが多かった。しかし近年のグランツールでのチームタイムトライアル離れの影響を受け、2020年・2021年は実施されず。

今大会、実に3年ぶりのチームTT開幕。しかもこれまでは割と10㎞程度と短い距離で「顔見せ」的な意味合いの強かった中、今回は23㎞と比較的長めであり、総合争いに影響を及ぼす可能性の高い一戦となった。


序盤でターゲットタイムを記録したのが4番手出走のグルパマFDJ。ツール・ド・フランス総合15位のティボー・ピノをエースに据え、マイルス・スコットソンやブルーノ・アルミライルなどのTT巧者が牽引したフランスチームは、時速55.2㎞で走り抜き25分18秒86。それまでの暫定首位であったイスラエル・プレミアテックを26秒更新し、その後出走したEFエデュケーション・イージーポストなどもこの記録には届かなかった。

だが、やはりこのチームがこの記録を更新する。かつてチームタイムトライアル巧者チームとして有名で、2013年のツール・ド・フランスの第3ステージTTTでも優勝しているチーム・バイクエクスチェンジ・ジャイコ

9番手出走となったオージーチームは中間計測(11㎞地点)でグルパマFDJを5秒更新。そしてフィニッシュでも25分11秒23という記録を叩き出し、グルパマFDJを7秒更新して暫定トップに立った。


しばらくはホットシートに座り続けたバイクエクスチェンジ。だが、本日の優勝候補は終盤に固まっており、彼らがそのまま首位を保持し続ける可能性は決して高くないと思われていた。

序盤は雨で濡れていた路面はすでに乾き始めており、コンディション的にも終盤チームに有利に働きつつあった。


その優勝候補の1つ、20番手出走イネオス・グレナディアーズがバイクエクスチェンジを18秒更新。直前で来期からのEFエデュケーション・イージーポスト移籍が決まったリチャル・カラパスをエースに据え、グランツール初出場の選手を4名(ターナー、ロドリゲス、ヘイター、プラップ)も抱える若々しいチームが、まずは圧倒的な力量を見せつけることとなった。

さらなる優勝候補であり、過去世界選手権チームTTでも優勝経験のあるクイックステップ・アルファヴィニルは中間計測でこそイネオスを3秒更新したものの、最終フィニッシュ地点ではわずかに1秒届かず。ホットシートは引き続きイネオスが継続した。

そして最終出走チームにして最大の優勝候補ユンボ・ヴィズマ。史上初となるブエルタ・ア・エスパーニャ4連覇を狙うプリモシュ・ログリッチをエースに据えたこの最強チームが、元TT世界王者かつつい先日の英連邦選手権TTでも優勝しているローハン・デニスや昨年のジロ・デ・イタリアの個人TTでも上位に入り続けていたエドアルド・アッフィニなどTT巧者を数多く揃え、まずは中間計測でクイックステップを14秒も更新。

そしてフィニッシュ地点でも――24分40秒25。平均時速56.676㎞で駆け抜け、イネオスを13秒更新して見事逆転勝利を果たした。

しかも、チーム一筋16年目の大ベテラン、ロベルト・ヘーシンクを先頭に据え、彼にマイヨ・ロホをプレゼントするという余裕すら見せて。

これがチームTTの魅力の1つ。

ツール・ド・フランスでも圧倒的なチーム力を見せて数多くの勝利を掴んだチームが、地元オランダでのまずは1勝目を掴み取った。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2022第1ステージリザルト


当然、この勝利によって、プリモシュ・ログリッチは4連覇に向けての重要な第一手を打つことにもなった。

主要総合上位候補の総合リザルトも確認していこう。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2022第1ステージ終了時点での主要上位候補の総合リザルト
※年齢表記はすべて2022/12/31時点のものとなります。


サイモン・イェーツやジョアン・アルメイダ(ブランドン・マクナルティ、マルク・ソレル等含む)が上位3名に対しタイムロスを最小限まで抑えたのに対し、エンリク・マス(アレハンドロ・バルベルデ含む)やベン・オコーナー、ヒュー・カーシーなどは上位を目指すうえでの大きなビハインドをいきなり抱えてしまった格好になる。

もちろん、まだまだ3週間は始まったばかり。ここから巻き起こるドラマが、歴史的な一戦となった今年のツール・ド・フランスをさらに超えるものとなることを期待している。


オランダを舞台にした第2戦は、実にオランダらしい(そしてブエルタ・ア・エスパーニャらしくない)ド平坦大集団スプリントステージ。

ティム・メルリール、パスカル・アッカーマン、サム・ベネットなど、スピード自慢のスプリンターたちによる、シーズン最後の激戦が開幕することとなるだろう。


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