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ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第10ステージ

休息日明けの第2週初日はアンダルシア州南岸を横切ってリゾート地マラガ近郊の町リンコン・デ・ラ・ビクトリアへと向かう今大会最南端ステージ。

ただし、オールフラットステージではない。フィニッシュ前15.8㎞地点に用意された2級山岳がこの日、ステージ優勝においても、そして総合争いにおいても大きなスパイスをもたらすこととなった。

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決してスプリンター向けではないこの日、アタック合戦の末に31名もの大規模な逃げ集団が生まれた。

ジョフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン・チーム)
リリアン・カルメジャーヌ(AG2Rシトロエン・チーム)
クレモン・シャンプッサン(AG2Rシトロエン・チーム)
フローリス・デティール(アルペシン・フェニックス)
アレックス・アランブル(アスタナ・プレミアテック)
ルイスレオン・サンチェス(アスタナ・プレミアテック)
チェザーレ・ベネデッティ(ボーラ・ハンスグローエ)
マキシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ)
ジョナタン・ラストラ(カハルラル・セグロスRGA)
フレン・アメスケタ(カハルラル・セグロスRGA)
ギヨーム・マルタン(コフィディス・ソルシオンクレディ)
ヘスス・エラダ(コフィディス・ソルシオンクレディ)
アンドレア・バジョーリ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
マウリ・ファンセヴェナント(ドゥクーニンク・クイックステップ)
ローソン・クラドック(EFエデュケーション・NIPPO)
イェンス・クークレール(EFエデュケーション・NIPPO)
マグナス・コルトニールセン(EFエデュケーション・NIPPO)
シャビエルミケル・アスパレン(エウスカルテル・エウスカディ)
オリヴィエ・ルガック(グルパマFDJ)
ジョナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアーズ)
ディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ)
オドクリスティアン・エイキング(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
フロリアン・フェルメールシュ(ロット・スーダル)
ダミアン・ホーゾン(チーム・バイクエクスチェンジ)
ニック・シュルツ(チーム・バイクエクスチェンジ)
テイメン・アレンスマン(チームDSM)
マイケル・ストーラー(チームDSM)
マーティン・トゥスフェルト(チームDSM)
ケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)
ルイ・オリヴェイラ(UAEチーム・エミレーツ)
マッテオ・トレンティン(UAEチーム・エミレーツ)

いい加減そろそろマイヨ・ロホを誰かに預けたいユンボ・ヴィスマが最大で13分以上のタイム差をつける展開。

逃げ切りを確定させた先頭13名はやはりラスト15.8㎞地点に用意された2級山岳プエルト・デ・アルマチャール(登坂距離10.9㎞、平均勾配4.9%)の登りで少しずつバラバラに。

まず登り始めでシャンプッサンとバジョーリ、ファンセヴェナント、エリッソンド、そしてストーラーが抜け出して、山頂まで3㎞の時点でそこからさらにストーラーが単独で飛び出していった。

追走27名の中では山頂まで残り1㎞で、バーチャル・マイヨ・ロホを着るオドクリスティアン・エイキング(9分10秒差)に対してそこから29秒遅れのギヨーム・マルタンがアタックを仕掛ける場面などもあるがうまくいかず。

山頂を越え、なおも独走を続けるストーラーはすでに追走集団に対して40秒以上のタイム差を残していた。

そして、このタイム差は最終的に埋めきれず。

マイケル・ストーラー。今年プロ4年目でようやくプロ初勝利を1ヵ月前に掴み取ったばかりの男が、まさかのこのブエルタで2勝目を飾ることとなった。

来年はグルパマFDJに行く予定のこの男。もしかしたら更なる進化を期待していっても良いのかもしれない。

なお、ブエルタ・ア・エスパーニャで1大会のうち2勝以上したオーストラリア人は、2013年のマイケル・マシューズ、2018年のローハン・デニスに続き、3人目の快挙となるらしい。

そして2位集団はファンセヴェナントが先着。この集団にはエイキングも入っており、途中攻撃を仕掛けたマルタンは結局ここから29秒遅れた6位集団でのフィニッシュとなった(12位)。

マイヨ・ロホはエイキングの手に。第3ステージでレイン・タラマエが手に入れたのに続く、今大会2人目のロホ着用者がアンテルマルシェから輩出されたのだ。

第10ステージ


さて、あとは13分以上遅れて走るメイン集団の到着を待つばかり・・・だったのだが、このメイン集団でまさかの動きが巻き起こることに。

すなわち、先頭集団でセレクションが巻き起こった2級山岳の登り始めのところで、マイヨ・ロホを現在着るプリモシュ・ログリッチがまさかのアタック。完全なる奇襲攻撃に総合2位エンリク・マスも後手を踏み、総合3位ミゲルアンヘル・ロペスに牽かれながらログリッチを追いかける。

やがてこの集団も分裂し、ログリッチを追いかける集団はマス、ロペス、総合4位ジャック・ヘイグ、総合8位セップ・クスの4名だけに。

総合5位エガン・ベルナル、総合6位アダム・イェーツはそのさらに後方の集団に取り残されることとなった。


単身登りを黙々とシッティングで踏み倒し続けるログリッチは、一時は40秒ほどにまでマスたちとのタイム差を開いたものの、山頂を通過する時点ではそのタイム差は20秒に。

思ったよりも差を付けられなかったログリッチは、少しの焦りと共にダウンヒルに挑んだのかもしれない。一度、危うく転びかける瞬間を経て――そして本当に、落車してしまう。

見たところ大きなダメージはなさそうではあったが、結局マスたちに追い付かれてしまうログリッチ。

最終的にはウラソフ、ロペス、クス、ヘイグ、マス、グロスシャートナーと共にフィニッシュし、マイカ、デラクルス、マーダー、イェーツ、ベルナル、プールス、アル、メインチェスのグループからは37秒を奪うことに成功する。

しかし、最もタイム差をつけたかったマスとの差は生むことはできず、この日のログリッチの攻撃は結果だけ見れば「失敗」に終わった。


もちろん、その姿勢自体は間違っていないし、何よりも、このまま平穏に終わりそうだったこのステージに大きな刺激を与えてくれた。その飽くなき挑戦のマインドは誰よりも「魅せる」走りであったことは間違いない。

ゆえにこそ、この落車が、あとに影響を及ぼすことがないことを強く願っている。


第11ステージはアンテケラからバルデペーニャス・デ・ハエンへと向かう133.6㎞丘陵ステージ。

小刻みなアップダウンの続く典型的な逃げ切り向きステージだが、ラスト1㎞に最大勾配30%の超激坂が待ち受ける。

過去にはイゴール・アントンやホアキン・ロドリゲス、ダニエル・モレノなどの名うての激坂ハンターたちが制したこの登りで、今年最強の激坂王の称号を手に入れるのは果たして誰だ。

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ツール・ポワトゥー=シャラント・アン・ヌーヴェル=アキテーヌ2021 第1ステージ

その名の通り旧ポワトゥー・シャラントゥ地域圏(現ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏)――フランス中西部、大西洋に面した西岸の地域――を舞台とした4日間のステージレース。

フランスらしい小刻みなアップダウンと平坦とで構成されたステージ構成となっており、3日目に関しては午前午後の2ステージ体制。午後は23.5㎞の個人タイムトライアルが用意されている。

ここ数年はマッズ・ピーダスンやアルノー・デマール、クリストフ・ラポルトなど、起伏にも強いスプリンタータイプの選手たちが総合優勝。ただし総合2位以下はヨセフ・チェルニーやシルヴァン・シャヴァネル、ヨナタン・カストロビエホなどの独走力の高い選手たちが上位に食い込んでいた李もする。

第1ステージは全長197.3㎞のアップダウンレイアウトが用意され、フィニッシュはわずかな登り勾配。コフィディス・ソルシオンクレディのエーススプリンターとして参戦していたエリア・ヴィヴィアーニもこの登りの中でリードアウターのシモーネ・コンソンニ殻は為されてしまい、仕方なくコンソンニが自らの勝利のために先頭でスプリントを開始するが、ラストがわずかに平坦だったことを利用して後方からヴィヴィアーニがまさかの伸び。

最後は、ギリギリでヴィヴィアーニが(相方の)コンソンニを「差し」、2ヵ月ぶりの勝利を掴んだ。

ツール・ポワトゥ=シャラントゥ第1ステージ

なかなかにシュールだが、勝ちは勝ち。

ヴィヴィアーニはまずは10秒のボーナスタイムを獲得し、幸先の良いスタートを切ることとなった。


そのほか、この日はブールス・レディース・ツアー改めシマック・レディース・ツアー、オランダの6日間のウィメンズ・ワールドツアー・ステージレースが開幕した。

名前は変わりながらも24年の歴史をもつ伝統的なレースで、平坦とTTが特徴的であり、今年もマリアンヌ・フォスやエマセシル・ノースガード、ロレーナ・ウィーベスやリサ・ブレナウアーなど、TT力とスプリント力に定評のある強豪ライダーたちが揃って出場してきている。

第1日目はヘルダーラント州のエーデを舞台とした2.4㎞の「プロローグ」。TT力というよりはスプリント力も重要視される超短距離TT勝負を制したのはマリアンヌ・フォス。

プロ16年目のレジェンド中のレジェンドが、2位ファンダイクに5秒以上の差を付ける「圧勝」を飾り、まずは着実にリードを広げることとなった。

シマック・レディース・ツアープロローグ









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