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ジロ・デ・イタリア2022 第13ステージ

第12ステージはこちらから

ポッジョ・ディ・サンレモなど、春のクラシックの名舞台の空撮が美しい北西イタリアのサンレモを出発し、アルプスの麓クーネオまでの150㎞。

出発地とフィニッシュ地の標高差は550m近くあれど、コースの後半3分の2は平坦基調。いわば「集団スプリントステージ」でもあるこの日、マリア・チクラミーノ争いのクライマックスが描かれることになる。


逃げは5名。

ニコラ・プロドム(AG2Rシトロエン・チーム)
ユリウス・ファンデンベルフ(EFエデュケーション・イージーポスト)
ミルコ・マエストリ(エオーロ・コメタ)
パスカル・エーンクホーン(ユンボ・ヴィズマ)
フィリッポ・タリアーニ(ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)

逃げ切れるとは、当の彼らも思っていなかったことだろう。タリアーニなんかは、自分の目標とする残り104㎞地点の中間スプリントポイントを先頭通過したあとは早くも脱落し、先頭は4名に。

最も総合成績の良いエーンクホーンでも50分以上もの総合タイム差がついているため、マリア・ローザを保有するトレック・セガフレードはやる気を見せず、集団の先頭を牽くのは専らグルパマFDJ、クイックステップ・アルファヴィニル、イスラエル・プレミアテック、UAEチーム・エミレーツといった優勝候補スプリンターを抱えるチームばかり。

総合4位のロマン・バルデがまさかの体調不良によるリタイアというアクシデントはありつつも、それ以外の波乱はないまま集団スプリントフィニッシュへと至る、はずだった。


しかし、残り30㎞を切っても、タイム差は3分以上残っており、何事もなく平穏に吸収するはずだった逃げ4名は思ったよりも遠い位置にいることが段々と分かってきた。

事ここに至り、メイン集団もやや慌て始める。クイックステップ・アルファヴィニルのマウロ・シュミットやイスラエル・プレミアテックのアレッサンドロ・デマルキ、イスラエルは採取発射台のリック・ツァベルまで動員して集団の先頭を牽引しながら必死に先頭を追いかけていく。その過程で集団の分裂も起き、サイモン・イェーツなんかはこの日さらに11分を失っている。


残り7㎞を切ってもタイム差は49秒。残り4㎞でもタイム差は32秒。

残り1.6㎞でタイム差15秒。バーレーン・ヴィクトリアスのアシストが必死の牽引。

どうなる? だが先頭4名も一枚岩ではない。先頭を牽いていたエーンクホーンが牽制した瞬間を突いて残り1.3㎞でユリウス・ファンデンベルフが抜け出すが、これをエーンクホーンが先頭で追いかけ、残り1㎞で捕まえる。

するとまた牽制が始まる。逃げ4名は、最後の掴むべきチャンスを失った。


そして、メイン集団では、残り8㎞から5㎞までイグナタス・コノヴァロヴァスによる牽引で15秒ほど縮めたほかは、それ以上あまりアシストを先頭に置いて慌てて逃げを捕まえようとする姿勢は見せていなかったグルパマFDJが、残り1㎞を切ってラモン・シンケルダムを先頭に一気に加速。

集団は縦一列。シンケルダムの後ろにはジャコポ・グアルニエーリ、アルノー・デマール、マキシミリアーノ・リケーゼ、フェルナンド・ガビリア、ジャコモ・ニッツォーロ、フィル・バウハウス、マーク・カヴェンディッシュ、アルベルト・ダイネーゼ、シモーネ・コンソンニの順。

残り500mでシンケルダムが脱落し、グアルニエーリ先頭でさらに加速。逃げ集団は吸収し、最後まで必死にもがいていたマエストリもここで捕える。

このタイミングでリケーゼが横に飛び出してガビリアを別ルートで引っ張り上げようと動くが、ガビリアはそこには乗らずデマールの背後に残ることを選択。これでFDJ以外のアシストを残しているチームは消滅。

残り200m手前で、ポジションが沈んでいたカヴェンディッシュが一気に横に飛び出して加速。自分の前にいる何人かを飛ばして、一気にデマールの背後にまでジャンプアップする狙いだった。

が、直後にデマールが発射。残り180m前後。ガビリアも当然食らいつく。が、ガビリアはそれ以上は伸びない。第11ステージはデマールも早すぎて最後その背後から飛び出して差せていたが、この日はシンケルダム&グアルニエーリの素晴らしいリードアウトによってデマールは彼が勝負できる最適なポジションで発射できていて、ガビリアに勝機はなかった。

それでもカヴェンディッシュは頑張った。加速したガビリアの背後にすぐついて、残り100mでスプリントを開始。デマールに並びかけたが、わずかに届かなかった。

同様にフィル・バウハウスも右から上がっていき、ガビリアを抜いて、カヴェンディッシュすらも抜いて、デマールを差し切るまであとわずかというところまで迫った。

それでも、勝ったのはデマールだった。1日中レースを支配し、ラストの追走劇も制したグルパマFDJのチーム力が、彼に3勝目とマリア・チクラミーノへの絶対的王手をもたらした。

これにて第2週のスプリントステージは終了。

トリノの街で繰り広げられる第14ステージ周回バトルは、「スペルガ大聖堂への登り」を含む凶悪な激坂バトル。

もしかしたら第2週で最も面白くなるかもしれないステージ。

総合では沈んだ意外な男たちによる逆襲劇も、楽しみにしてもいいかも・・?

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