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UAEツアー2021 第6ステージ

アラブ首長国連邦全域を舞台として開催される、今年最初のワールドツアーレース。平坦ステージと山岳ステージ、そしてTTとがバランスよく配置された7日間のステージレースである。

第6ステージは世界の富の集約地ドバイを舞台に、有名な「パーム・ジュメイラ」にフィニッシュする、ドバイ・ツアー時代からの定番スプリントステージ。

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スタート直後に生まれた逃げは6名。

トニー・ギャロパン(AG2Rシトロエン)
アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック)
ルイスレオン・サンチェス(アスタナ・プレミアテック)
マチュー・ラダニュ(グルパマFDJ)
アッティラ・バルタ―(グルパマFDJ)
イニーゴ・エロセギ(モビスター)

このままフィニッシュまでの間に問題なく吸収され、最後は今大会2度目の純正集団スプリントで今大会最強スプリンターたちがその実力を十全に発揮して鎬を削り合う――というわけには、いかなかったようだ。

残り90㎞付近で巻き起こった大規模な集団落車。

この中でチームDSMのフロリアン・ストーク、そして第4ステージ5位と調子の良さを見せていたトレック・セガフレードのマッテオ・モスケッティがリタイア。

優勝候補の1人を欠いたプロトンはさらにドゥクーニンク・クイックステップやEFエデュケーション・NIPPO、そしてイスラエル・スタートアップネーションが仕掛ける横風分断作戦によって混沌に陥る。

ボーラ・ハンスグローエも参加したこの激しいアタック合戦は集団を長く長く引き伸ばし、残り72㎞地点で大きく2つに分裂した。約30人のライダーがおよそ30秒遅れで後方に取り残された。

だがこの分断も、残り50㎞地点で解消。さらに一連のペースアップによって逃げ集団とプロトンとのタイム差も一気に縮まっており、残り25㎞地点でこれはすべて吸収された。

その後、アスタナ・プレミアテックのドミトリー・グルズデフが新たな逃げを打ち、10秒程度のタイム差を生み出すが、これも残り10㎞を前にして捕まえられてしまう。

数々の混乱に彩られながらも、最終的にはモスケッティ以外の優勝候補を揃えた状態で集団はフィニッシュ地点のパーム・ジュメイラへとやってきた。


ラスト1㎞で集団先頭を支配したのはケイデン・グローブス率いるバイクエクスチェンジ。集団左手からはミケル・モルコフに率いられたサム・ベネットが、その後方にダヴィド・デッケル、エリア・ヴィヴィアーニ、そしてカレブ・ユアンを引き連れて上がってくる。

ユアンはここでヴィヴィアーニとのポジション争いに敗れて後退。かつてポジション争いで熱くなりすぎて降格の憂き目に遭ったことのある彼は少し遠慮してしまったのか。いずれにせよラスト1㎞でのポジション争いは彼の課題であり続けており、これを助けるためにアシストの存在はこの位置では欠かせないのだが、今日は残念ながら一人で戦う羽目になってしまっていた。

まず飛び出したのはボーラ・ハンスグローエのアシストだったが、モルコフがベネットを引き連れたまま加速してこのボーラのアシストの背後を奪い取る。

そのまま一気にスピードアップし、他のチームの追随を許さない。先頭を最高速度で牽き伸ばしたまま残り150mでベネットを発射。

まるでお手本のような完璧なリードアウト・スプリントであった。ベネットのすぐ後ろにいたダヴィド・デッケルもいいタイミングで発射するが、ベネットにはまったく届かなかった。デッケルの後ろにいたヴィヴィアーニも昨年から続く絶不調から着実に復活を感じさせる走りを取り戻してはいるものの、それでもベネットに次ぐ2位で終わることが精一杯だった。

完璧な勝利。それは世界最強のリードアウトマン、ミケル・モルコフによって彩られた勝利であった。

第6ステージ

なお、この日、フィニッシュ直前にヤン・ポランツがチームメートのタデイ・ポガチャルを「押した」?ことにより両選手に10秒のタイムペナルティが与えられている。

これで総合首位のポガチャルとアダム・イェーツとのタイム差は35秒に。

最終日も平坦ステージのため普通に考えれば総合逆転に寄与するようなペナルティとは言えないものの、今日も横風分断を狙ってアダム率いるイネオスや総合3位ジョアン・アルメイダ率いるドゥクーニンク・クイックステップがペースアップを仕掛けていたため、最終日もどんな波乱が巻き起こるか予想ができない。

最後の最後までエースを守り切り、昨年は果たせなかった「地元チーム」総合優勝を果たせるか。最後の瞬間まで、油断は許されない。

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