UAEツアー2021 第2ステージ
アラブ首長国連邦全域を舞台として開催される、今年最初のワールドツアーレース。平坦ステージと山岳ステージ、そしてTTとがバランスよく配置された7日間のステージレースである。
第1ステージはアブダビ首長国のフダリアット島を舞台とした13㎞個人TT。
2年前はチームTTの舞台として使用された、直角カーブの少ないオールフラットTTで、ハイスピードな戦いが期待された。
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世界選手権個人タイムトライアルのU23カテゴリで3年連続勝ち続けてきたままエリートに入ってきたミッケル・ビョーグ(UAEチーム・エミレーツ)。
本日も上位入賞候補だった彼が早くも3番出走で登場。
期待通りの好成績でこのまましばらくホットシートを保持できそうか。
と、思っていたら、彼がフィニッシュしてからわずか2分21秒後。
EFエデュケーション・NIPPOに所属する今年23歳のスイス人、シュテファン・ビッセガーが中間計測でビョーグの記録を11秒塗り替える。
そのままフィニッシュ地点でもしっかりとキュングのタイムを7秒上回り、暫定首位に。
正直、まったく予想していなかった台頭であった。
彼については過去の記事で言及している。
2019年にその実力が花開いたようで、ツール・ド・ランの第1ステージで早くもプロ初勝利を果たしているほか、同年のツール・ド・ラヴニールではケイデン・グローブスを打ち破り、U23世界選手権でも2位に入り込んでいる。
その意味ではスプリンターというイメージの強い選手だったが、今回のUAEツアーでTT能力の高さも見せつけた。
このあたりは元トラック選手という経歴ゆえなのかもしれない。
さて、そんなビッセガーの暫定首位はしばらく揺らぐことなく、2019年の世界選手権で5位に入ったアレックス・ドーセット(イスラエル・スタートアップネーション)も、同じく6位のローソン・クラドック(EFエデュケーション・NIPPO)も届かない。
だがそれでも、やはりこの男は格が違った。
フィリッポ・ガンナ。
言わずと知れた世界王者であり、現在個人タイムトライアル7連勝中の男。
最盛期のトニー・マルティンにすら匹敵する安定感を誇る文句なしの世界最強TTスペシャリストである彼は、2時間近く護り続けてきたビッセガーのホットシートを容赦なく奪い取る。
叩き出した記録は13分56秒で、平均時速は55.981km。
同じ場所で2年前に開催されたチームTTでは(3㎞ほどそのときの方が長いとはいえ)6位のCCCチームが55.760km/hであり、ガンナはたった一人でドゥクーニンクやEFやボーラの精鋭軍団を打ち倒した形となる。
だが、そんなガンナにわずか14秒遅れで食らいついているビッセガーも十分に強い。
シュテファン・ビッセガー。これからも注目していくべき男だ。
そして、総合争いにも注目が集まる。
もとより今大会の総合優勝候補筆頭であり、昨日の大分断によってその意味がよりリアルなものとなりつつある3名、すなわちタデイ・ポガチャルとホアン・アルメイダとアダム・イェーツ。
その中でもポガチャルとアルメイダはTTが得意なオールラウンダーであり、この日どちらがより上位でフィニッシュできるかに注目が集まっていた。
最初、中間計測でよい記録を叩き出したのがポガチャルだった。
ガンナ、ビッセガーに次ぐ暫定3位の中間計測タイムを更新したポガチャル。2分後にそこにやってきたアルメイダはポガチャルから8秒遅れの暫定10位であった。
だがそこからポガチャルはやや失速。逆にアルメイダはよりペースを上げていき、最終的にこのタイム差は6秒に。
ポガチャル4位。アルメイダ5位。昨日はアルメイダがポガチャルを総合で1秒上回っていたわけだが、これをポガチャルが逆転し、総合首位に立つことに。
やはりこの男、昨年のスロベニア国内選手権やツール・ド・フランス第20ステージでプリモシュ・ログリッチを打ち倒したのは決してまぐれではない。
世界で最もTTの速いクライマーの一人であることは間違いない。
そしてそれはアルメイダも同様である。
【UAEツアー第2ステージ リザルト】
一方、ここでどれだけタイムを失わずに済ませられるか、というアダム・イェーツは、ガンナから58秒遅れの34位。ポガチャルからは34秒遅れということで、総合では39秒のビハインドを手に入れることに。
【UAEツアー第2ステージ終了時点での総合リザルト】
明日はいよいよ今大会最初の山頂フィニッシュ、「ジャベルハフィート」。
果たして総合争いにはどんな動きが巻き起こるのか。
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