ツール・ド・ラヴニール2021 第9ステージ
U23版ツール・ド・フランスとも言われ、過去にもエガン・ベルナルやタデイ・ポガチャルなどを輩出している、若手の登竜門の代名詞。
前日に続き、その最終ステージを振り返っていく。
最終ステージは全長151.6㎞。残り66.6㎞地点にツール・ド・フランスでもお馴染みの超級イズラン峠(標高2,758m)を越え、最後はさらに標高2,156mの超級山岳山頂にフィニッシュする。
前日は総合1位~4位までの精鋭軍団が塊になってフィニッシュしており、この日もイズランの山頂に向けてこの4名を含む数名の小集団が形成。
そして、イズランの山頂からの下りで、現イネオス・グレナディアーズ2年目のカルロス・ロドリゲス(スペイン、20歳)がアタックした!
ロドリゲスは現在総合2位。しかし、総合首位のトビアスハラン・ヨハンネセン(ノルウェー、22歳)とのタイム差は2分18秒であり、コロンビエ―ル峠山頂フィニッシュの第7ステージ、クロワ・ド・フェール峠を越える第8ステージの両方でステージ優勝するなど圧倒的な登坂力を見せているトビアスを逆転するのは正直難しいと思っていた。
しかし、ここからロドリゲスの独走が凄まじい。タイム差はどんどん開いていき、残り16㎞地点でそのタイム差は1分30秒。
そして、追走集団に残る総合3位フィリッポ・ザナ(イタリア、22歳)に、総合4位ハイス・レームライズ(オランダ、22歳)はロドリゲスに完全に任せ、前を牽こうとしない。
タイム差はさらに拡大し、残り3㎞で2分10秒差にまで・・・。さらにここから、TOP4に唯一食らいついていけていた総合31位ゲオルク・スタインハウザー(ドイツ、20歳)がアタックし、ザナもこれに追随し、トビアスとレームライズはこれについていけない!
残り1㎞でレームライズを突き放し独走で追走を開始するトビアスだが、果たしてロドリゲスとのタイム差を2分18秒以内に抑えられるのか・・・
まずはカルロス・ロドリゲス、ステージ優勝。イネオス・グレナディアーズ現役選手としての意地を最後に見せた形だ。山岳賞も手に入れている。
あとは総合優勝まで狙えるか・・・最終ストレートに姿を現すトビアス。すでにロドリゲスがフィニッシュしてから2分が経過しているが・・・そのときにはもう、残り150mのバナーを通過していた。
最終的に2分11秒遅れでフィニッシュラインに飛び込んできたトビアスハラン・ヨハンネセン。ギリギリ、本当にギリギリの7秒差で、総合首位を守り抜くことができた。
かくして、2021年のツール・ド・ラヴニール王者はトビアスハラン・ヨハンネセンの手に。2019年のトビアス・フォスに続き、ノルウェー人の戴冠である。一応双子の兄弟のアンデルスハラン・ヨハンネスンと共に来年から3年間、Uno-Xプロサイクリングチームと契約しているが、果たして。
総合2位は7秒差で惜しくも届かなかったカルロス・ロドリゲス。しかしすでにツール・ド・ラ・プロヴァンスなどでも実力の高さを見せつけている彼は、これからイネオスでばっちりと活躍していってくれるだろう。
総合3位は現バルディアーニCSF・ファイザネ所属でジロ・デ・イタリアにも2年連続で出場し、今年は第18ステージで区間7位に入るなどワールドツアー級の活躍をすでに見せているフィリッポ・ザナ。
総合4位は現ユンボ・ヴィスマ所属のハイス・レームライズとなった。
そしてこの最終日にこの4強と共に最終盤まで残り、優勝こそ成し得なかったもののザナと共に最後抜け出してこれをスプリントで下し、区間2位に入り込んだゲオルク・スタインハウザーは、オーストリアのコンチネンタルチーム、チロルKTMサイクリングチームに所属している。
契約は今年までのため、来季どうなるかはまだ不明。ワールドツアーチームやUCIプロチームから声がかかっても良いかと覇思うが、どうなるか。
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ツアー・オブ・ノルウェー第4ステージ
その名の通りノルウェーで開催されている全4日間のステージレース。UCIプロシリーズ。
前日までのレースの模様はブエルタ・ア・エスパーニャ第6~8ステージの記事の文末に載せているので確認してみてほしい。
最終日のこの日はフィニッシュ前8.5㎞地点に登坂距離400m・平均勾配9.8%の激坂3級山岳が用意されており、総合逆転を狙う15秒差の総合2位イーデ・スヘリンフ(ボーラ・ハンスグローエ)、25秒差のマイク・テウニッセン(ユンボ・ヴィスマ)などはなんとかここで抜け出したいところ。
しかし、世界最高峰のTTスペシャリスト、フィリッポ・ガンナが牽引するプロトンはこの登りの手前で逃げをすべて吸収したうえで、ライバルたちにアタックのチャンスを与えないまま登りに突入。
スヘリンフたちも攻撃するほどの足は残っていなかったのか、結局動きはなくこの最後の勝負所を終えてしまった。
となれば、スヘリンフたちにもう逆転の芽はない。目標を切り替えたボーラ・ハンスグローエは、この日のステージ勝利のためのトレインを作って石畳造りのフィニッシュに向けて猛スピード。
最後は今年の東京オリンピックオムニアムで金メダルを獲得したマシュー・ウォルスが、アレクサンダー・クリストフも前日覇者マッズ・ピーダスンも薙ぎ払って、見事ステージ優勝を決めた。栄えあるプロ初勝利である。
総合優勝は第1・第2ステージを優勝しそのまま総合リーダーを守り抜いたイーサン・ヘイター。今年ヴォルタ・アン・アルガルヴェ1勝、ブエルタ・ア・アンダルシア2勝を含む計7勝を叩き出している彼が、キャリア初の総合優勝をプロシリーズで成し遂げた。なんという成長の早さ。
このあとのレース出場予定は未定だが、トム・ピドコックと共に世界選手権に出てくれたりしても面白いところである。
なお、この日の勝者ウォルスとは東京オリンピックのマディソン種目でタッグを組んで惜しくも銀メダルとなってもいるヘイター。
チームは違えど、仲間同士のW勝利となった1日であった。
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