ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第5ステージ
相変わらず山岳ポイントの一切ない平坦ステージが続く。本当にここはブエルタなのか。
しかしこの日は公式サイトにも書かれている「横風ステージ」。もちろん、警戒しているときほど分断は起きないというが・・・。
果たして、プロトンは無事、予定された大集団スプリントを迎えることができるのか。
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逃げは3名。
ペラヨ・サンチェス(ブルゴスBH)
オイエル・ラスカノ(カハルラル・セグロスRGA)
シャビエルミケル・アスパレン(エウスカルテル・エウスカディ)
いつものUCIプロチームから3名。サンチェスは2000年生まれ。ラスカノとアスパレンは1999年生まれ。タイム差は一気に7分まで開くが、その後は着実に縮まっていく、何の衒いもない平坦ステージ展開。
ただ、ちょっと普段と違うのが、この3名の中での戦力差。
コース終盤に向けて時速20㎞~40㎞程度の強めの横風が吹き始めたこともあり、先頭3名の中で小さなエシェロンができ始める。
その煽りを受けて、まず落ちたのがサンチェス。21歳のネオプロ。残り34.4㎞で力なく遅れていく。
2人だけになった先頭集団。最も力があったのが、第2ステージ出も逃げに乗った、21歳のラスカノ。2019年にカハルラルのトレーニーとなり、翌年正式にプロデビュー。今年が2年目。昨年のヴォルタ・ア・ポルトガルで1勝しており、3名の中では最も実力者である。
淡々とシッティングのまま踏んでいくラスカノに対し、その後ろでダンシングを織り交ぜながらなんとかついていこうとしていたアスパレン。第2ステージでも逃げに乗っていた、積極的な22歳の彼もまた、ネオプロ。最後は普通に足を売り切らせ、脱落していった。
たった一人となったラスカノはそのあとも残り15.7㎞まで逃げ続ける。
そのペースは悪くなかったが、後方ではいよいよ、ときに時速40㎞にも達し始めた横風の中で、少しずつ分断作戦を敢行しようとするチームが現れていた。
だが、その思惑は結局成功しなかった。
やはり警戒されすぎると逆に起きないものなのか。どのチームも分断が起きたときのための守備的な姿勢を崩さず、アスパレンが吸収されたあたりでドゥクーニンク・クイックステップやグルパマFDJ、アルペシン・フェニックスといったこの日の優勝候補チームたちが前に出て積極的にローテーション、集団を割りにかかるが、うまくいかずまもなくその試みも霧散することとなった。
むしろ、集団を破壊したのは横風ではなく、残り11.7㎞で巻き起こった大規模な落車だった。
比較的ダメージは少ない落車だったが、それでもマイヨ・ロホを着るレイン・タラマエがアスファルトに叩きつけられ、ブエルタ・ア・ブルゴスのクイーンステージで区間4位だったミケル・ニエベが激しい擦過傷を負う。そして、その同じステージで3年ぶりの優勝を果たし調子が良さそうだったロマン・バルデもまた、路肩に座り込んでいた。
彼らはみな走り始めるも、集団に復帰することは叶わず。2日前人生最大の歓喜を味わったタラマエは続く2日間で立て続けに落車し、本来であれば明日、あるいはその翌日くらいまでは守れそうだったレッドジャージを早くも手放すこととなってしまった。
生き残った集団たちも一度はペースを落としある程度の復帰は待ったが、それでもタラマエはそこに間に合わなかった。
それでもそれなりの規模に戻った集団で最後のスプリントが繰り広げられる。
残り2.2㎞くらいまではアルペシンが。残り2㎞からはUAEチーム・エミレーツが支配する先頭。
残り500mを切って再び前に躍り出てきたアルペシン・フェニックスは、ジャスパー・フィリプセンの前にアシストがあと1枚。左側からは、グルパマFDJが番手を上げてくるが、デマールの姿はない?
マイヨ・プントスを着る前日覇者ファビオ・ヤコブセンは、アシストもいない中で一人、沈んでいた。
そして残り200m。おそらくサッシャ・モドロであろうアルペシンの最終発射台が外れ、フィリプセンがスプリントを開始。
早すぎる? しかしその勢いは留まることを知らない。背後にはアルベルト・ダイネーゼが貼り付いており、こちらも非常に素晴らしい足を持っていたが、フィリプセンの前に出ることは叶わなかった。
一方、番手をずっと落としていたヤコブセンが、ここでするするとライダーたちの間を縫って前に上がってくる。
最後は残り100mでコースの左側からスプリントを開始。
マシューズも、モラノも、ダイネーゼも、それぞれ誰かのスリップストリームに入っていた選手たちよりを遥かに上回る勢いで、誰もいない空間をヤコブセンは一気に突っ切っていった。
だがそれでも、届かなかった。位置取りさえ完璧ならば、そうはいかなかったかもしれない。
だから、この日のフィリプセンの勝利はチームの勝利でもあった。前日はフィリプセン自身が最後足を失ってしまったが、今日はしっかりと仲間に引き連れられて集団の先頭からとび立ち、そして200mという長距離を最後まで失速することなく突き進むことができた。
ジャスパー・フィリプセン、今大会2勝目。「最強」の名に王手をかける、鮮烈なる勝利を飾った。
結局タラマエは2分21秒遅れ。バルデに至っては12分遅れ。
それ以外の有力勢が落ちることはなかったようだし、リタイアもいなかったが、波乱がないまま終わることはない1日だった。
明日は第6ステージ。一旦平坦のように見えるが、最後の2㎞が最大勾配21%の超激坂。
昨年のボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナではタデイ・ポガチャルがアレハンドロ・バルベルデとディラン・トゥーンスを降して勝利した登り。
もしかしたら総合もわずかに動く可能性はある。
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