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ツール・ド・フランス2021 第15ステージ

第2週最終日はツールでは5年ぶりの登場となるピレネーの小国アンドラ。南西フランス・オクシタニー地域圏のセレからアンドラの首都アンドラ・ラ・ベリャまでの191.3㎞山岳ステージ。

今大会最標高地点となる標高2,408mの地点も通過する重要なステージで、果たして総合での動きは巻き起こるのか。

コースプレビューはこちらから


アクチュアルスタート直後からやはり出入りの激しい展開が続き、30㎞ほどを消化して32名の先頭集団が形成される。

ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)
ステフェン・クライスヴァイク(ユンボ・ヴィスマ)
セップ・クス(ユンボ・ヴィスマ)
ジョナタン・カストロビエホ(イネオス・グレナディアーズ)
ディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ)
ダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション)
マイケル・ウッズ(イスラエル・スタートアップネーション)
ヴィンツェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード)
ジュリアン・ベルナール(トレック・セガフレード))
ケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)
ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
ダヴィデ・バッレリーニ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
アレハンドロ・バルベルデ(モビスター・チーム)
ルーカス・ペストルベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)
ダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)
ブルーノ・アルミライル(グルパマFDJ)
ヴァランタン・マデュアス(グルパマFDJ)
ルーベン・フェルナンデス(コフィディス・ソルシオンクレディ)
ルーベン・ゲレイロ(EFエデュケーション・NIPPO)
ニールソン・ポーレス(EFエデュケーション・NIPPO)
オレリアン・パレパントル(ボーラ・ハンスグローエ)
ナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック)
マーク・ドノヴァン(チームDSM)
トーマス・デヘント(ロット・スーダル)
ワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス)
ディラン・トゥーンス(バーレーン・ヴィクトリアス)
マイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ)
ヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック)
セルジオ・エナオ(チーム・キュベカ・ネクストハッシュ)
ヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック)
ピエール・ラトゥール(チーム・トタルエナジーズ)
フランク・ボナムール(B&Bホテルス・p/b KTM)

すでに3名のリタイア者を出して残り5名となっているユンボ・ヴィスマからは登れる選手すべてを先頭に逃げに乗せ、総合4位ヨナス・ヴィンゲゴーは実質的にプロトンの中で一人に。

さらにイネオス・グレナディアーズもカストロビエホとファンバーレという重要なアシストを前に乗せたことで、前待ち作戦への明確な意思を感じられた。

さらには山岳賞首位~4位(ウッズ、キンタナ、プールス、ファンアールト)がすべてそろうという豪華さ。それぞれポイントは54、50、49、43ということで、接戦が期待された。


残り105㎞地点のこの日最初の1級山岳モン・ルイス峠(登坂距離8.4㎞、平均勾配5.7%)は激しい山頂スプリントバトルの結果プールスが先着。ファンアールト、ウッズが2位・3位で通過。

さらに残り58.2㎞地点の2級山岳ピュイモレンス峠(登坂距離5.8km、平均勾配4.7%)ではファンアールトが持ち前のスプリント力を発揮し先頭通過。続いてプールス、ウッズの順で通過する。


一方、第1週を山岳賞ジャージを着て終えたナイロ・キンタナはここまでの山岳で色気を出してこなかったものの、次の1級山岳ポート・デンバリラ(残り44.6㎞地点、登坂距離10.7km、平均勾配5.9%)の山頂(標高2,408m)まで残り2㎞を切ったところでアタック。

一気に追走集団を突き放して山頂を先頭通過。ステージ優勝に向けて、重要な一手を突き出すこととなった。

2位はファンアールト、3位・4位はそれぞれプールス、ウッズが獲得した。


メイン集団でもこの2級ピュイモレンス峠そして1級ポート・デンバリラの、フランス~アンドラ国境に位置する一連の登りにおいて、大きな動きが巻き起こってくる。

そこまでUAEチーム・エミレーツがひたすら牽引し、タイム差が10分を超えるほどだったものの、ピュイモレンスの山頂付近でイネオス・グレナディアーズとモビスター・チームが集団を猛牽引。

1㎞消化するごとに30秒縮まるハイ・ペースによって集団は一気に崩壊。

先頭集団からもボロボロと選手が落ちていき、その中にはイネオスの2人の姿も――これは、前待ちのための動きであることは明白であった。

1級ポート・デンバリラ山頂間際で、ミハウ・クフィアトコフスキが猛牽引の末にいつも通りオールアウトして脱落していく。集団の人数はすでに10名ちょっと。集団の中にはゲラント・トーマス、リチャル・カラパス、タデイ・ポガチャル、ヨナス・ヴィンゲゴー、エンリク・マス、ウィルコ・ケルデルマン、リゴベルト・ウランなど・・・すでに、UAEのアシストは当然のごとく姿を消している。


そしていよいよこの日の最大の勝負所。

残り14.8㎞地点に山頂が置かれた1級山岳ベイクサリス峠(登坂距離6.4km、平均勾配8.5%)

18名にまで絞り込まれた先頭集団では、一度捕まえられていたキンタナが再び登り口でアタック。

しかしこれは思うほど差をつけられないまま集団に引き戻され、むしろ直後に遅れていく。

残り19.5km。山頂まで5㎞。ここで、ユンボ・ヴィスマのセップ・クスがアタック。

アレハンドロ・バルベルデだけが唯一ここに食らいついていったが、やがて彼も突き放し、クスが独走を開始する。

5分差にまで詰め寄ってきていたメイン集団でもリチャル・カラパスがアタックしたり、ポガチャルがペースアップを図ったり、さらには山頂が近づいてきたところでヨナス・ヴィンゲゴーが2度に渡りアタックしたりと、打ち合いが激しく続いていく。

しかし、誰一人抜け出すことは能わず。むしろ、インターバルのかかりまくるアタックの打ち合いの結果、ペースはむしろスローダウンし、一度は近づいた先頭とのタイム差も再び開き始めた。


ゆえに、先頭のクスにとっては安泰であった。

単独2番手でクスを追うバルベルデが一度は20秒弱まで迫ったものの、アンドラに住んでいてこの道もよく知っているというクスがテクニカルな下りを危なげなくこなしていった。


結果、エースを失ったチームの「最強アシスト」が見事なツール初勝利。

ヴィンゲゴーのアシストをすべて前に乗せるというチャレンジを、ユンボ・ヴィスマは見事結果に結びつける結果となった。

第15ステージ

熾烈な争いを繰り広げた山岳賞ランキングでは、ワウト・プールスが最終的に74ポイントにまで積み上げ、ジャージをウッズから奪い返す。

2位はウッズで66ポイント、キンタナが64ポイントで3位。そしてファンアールトが同じ64ポイントで同率3位。

ここの争いもまた、最終週にまでもつれ込むこととなった。


そして、総合争いである。

結果として、総合2位ギヨーム・マルタンと総合8位アレクセイ・ルツェンコを除き、総合3位から総合9位までのウラン、ヴィンゲゴー、カラパス、オコーナー、ケルデルマン、そしてエンリク・マスまですべてそろってのフィニッシュとなり、激しい打ち合いが行われたにも関わらず総合での動きはほぼほぼなかった。

第15ステージ後の総合リザルト


それは逆に言えば、第1週であれほど圧倒的な力を見せつけたポガチャルが、「やらなかったのか」「やれなかったのか」は不明ながら、あの力を発揮するには至らなかったということも意味する。

そして戦いは第3週へと突入する。

超級山岳山頂フィニッシュ2連戦。そして30㎞超の平坦個人TT。

まだ、何が起こるか、まったく予想がつかない。

激しいドラマが描かれることに、期待していきたい。

そして、マーク・カヴェンディッシュの、「伝説」超えは果たされるのか・・?

第3週のコース詳細は以下を参照のこと。


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