ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第13ステージ
第8ステージ以来となる平坦スプリントステージ。2勝しているジャスパー・フィリプセンがすでにリタイアしており、ファビオ・ヤコブセン一強かと思われていた状況の中で、意外にも波乱あるフィニッシュが訪れることに。
(文末にドイツ・ツアー第2ステージとシマック・レディース・ツアー第3ステージの簡単な振り返りも記載しております)
コースプレビューはこちらから
この日は久々にアクチュアルスタート直後に逃げが確定した。UCIプロチームから1人ずつの計3名。
ディエゴ・ルビオ(ブルゴスBH)
アルバロ・クアドロス(カハルラル・セグロスRGA)
ルイスアンヘル・マテ(エウスカルテル・エウスカディ)
タイム差も3分は許されず集団もじっくりと、あえて泳がすくらいのペースで少しずつ少しずつタイム差を縮めていく。
残り60㎞くらいから横風分断が起こり始めたりもするものの、それも最後まで続くことはなく、基本的には問題なく集団スプリントに突入するはずだった。
しかし、フィリプセンがレースを去ったこともあり、グルパマFDJも発射台のジャコポ・グアルニエーリが去ったこともあり、もはや集団の支配権はドゥクーニンク・クイックステップが一強となってしまった。
残り5㎞を切ってからファビオ・ヤコブセンの前には6枚のアシスト。
そこから一度も他チームに先頭を奪わせることなく残り距離を消化していく。
まだアシストを4枚残している残り2.2㎞ではあまりにも速すぎて集団が分裂。先頭集団はわずか16名となってしまった。
そして残り1.7㎞。時速65㎞で突っ切る先頭集団はドゥクーニンクのアシストが3枚、その後ろにマッテオ・トレンティン、その後ろにヤコブセン、そしてサッシャ・モドロとそのアシストが2枚。合計3チーム8名だけが先頭に残ってしまった。
盤石&盤石。
の、はずだったが、ここでまさかの、ヤコブセン、パンク。
一気にスピードを落とし脱落していくヤコブセン。先頭はドゥクーニンクのアシスト3枚とトレンティンだけが残ってしまった。
だが、それでも見方を変えればまだアシスト2枚と(新)エースが残っているという体制。まだまだ、ドゥクーニンクには十分可能性があった。
残り500m。後続からアルペシン・フェニックスのアレクサンダー・クリーガーが強烈な勢いで前に飛び出してくるが、おそらく彼はサッシャ・モドロのためのアシストのつもりだったのだろう(だがモドロは後続に取り残されたままだった)。あまりにも速すぎる先頭飛び出しにより、最後まで残る余力はなかった。
その後ろからはベルト・ファンレルベルフに率いられてフロリアン・セネシャルがスプリントを開始。このスリップストリームにトレンティンが乗り込む。後続集団からはアルベルト・ダイネーゼが単独で飛び出してくるが、さすがに届くことはなかった。
最後はトレンティンに背後を取られながらもこれを一度も並ばせることなくセネシャルが先頭でフィニッシュラインに到達。まさかのアクシデントを乗り越えて、昨年のヘント~ウェヴェルヘム2位、ブルターニュ・クラシック3位、今年のクラシカ・ドゥ・アルメリアとE3サクソバンク・クラシックで2位を獲っているクラシカル・スプリンターがグランツール初勝利を飾った。
10位に入り込んだベルナルはログリッチたちから5秒を奪い取ることに成功。
明日からはまた総合争いが開幕。果たして、形勢は変化していくのか。
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ドイツ・ツアー第2ステージ
アルペシン・フェニックスのルイス・フェルファーケが最後まで粘っていたものの吸収され、この日も集団スプリントに。
残り4.2㎞でアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオのゲオルグ・ツィンマーマンがアタックし、ここにバーレーン・ヴィクトリアスのマルコ・ハラーが食らいつく。後続の集団の先頭はボーラ・ハンスグローエのニルス・ポリッツが、エースのアッカーマンのために猛牽引し、この抜け出した2名を引き戻す。
ここまでの激しいアップダウンも手伝って集団の数はすでに小さくなっており、前日に続きドゥクーニンク・クイックステップのマーク・カヴェンディッシュの姿は消えていた。
最後はハラーがポイント賞ジャージを(繰り下がりで)着るフィル・バウハウスを牽引していく。アッカーマンはこのバウハウスの番手につけて万全の体制。
だが、雨に濡れた路面とわずかな登りを経てのフィニッシュはアッカーマンの足を確かに削っていた。
スヴェンエリック・ビストラムのリードアウトを終えて先頭のアレクサンダー・クリストフがスプリントを開始すると同時にバウハウスが加速するとアッカーマンはこれについていけない。
最後はそのままバウハウスが前日2位の悔しさを晴らす勝利を掴み取れるか――と思ったところで、一度はバウハウスに抜かれたはずのクリストフがそこからさらにもう一段階踏み込み、最後はこれを抜き去った。
ビストラムがリードアウトを外れるのが早すぎて、一度クリストフが冷静に足を止めたのに対しバウハウスがつられて早く出すぎてしまった、という面ももしかしたらあるのかもしれない。
いずれにせよクリストフ、ベテランとしての貫禄ある勝利。昨年の(やはり雨の中だった)ツール・ド・フランス第1ステージ以来の勝利。
一方で、2011年以来続く「毎年勝利」記録は更新。さらに、ノルウェー人としてはエドヴァルド・ボアッソンハーゲンの81勝に迫る80勝目を記録した。
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シマック・レディース・ツアー 第3ステージ
今年19歳のオランダ人、ダニーク・ヘンゲフェルド(GT Krush Tunap)が単独で逃げ続けていたがこれも残り15.4㎞で吸収。
集団スプリントに突入することが予想されていたのだが――残り6㎞で大落車発生。先頭付近にいた優勝候補ロレーナ・ウィーベスが自らバランスを崩して落車し、その背後にいた集団の大半が巻き込まれた。狭い道路だったことも災いした。
結果、そこから6名だけが抜け出すことに。しかも、4名がSDワークスで、2名がチームDSM。
最後はしっかりと数の有利を生かし、最強チームSDワークスの若き才能ウネケンが今季3勝目を記録した。
総合の逆転も危惧された展開だったが、マーレン・ローセルは29秒遅れの9位集団の中でフィニッシュ。前日のTTでシャンタル・ブラークに39秒差をつけていたローセルはなんとか10秒差で総合リーダージャージを守った。
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