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パリ~ニース2021 第1ステージ

「太陽へと向かうレース」「ミニ・ツール・ド・フランス」の異名で知られる、サイクルロードレースシーズンの本格開幕を告げる8日間のステージレース。

第1ステージはパリ近郊のサン=シル=レコールを発着する166km丘陵ステージ。パリ~ニースらしい、一筋縄ではいかないアップダウンコースにはなっているものの、最後は集団スプリントが期待された。

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本日の逃げはチーム・トタル・ディレクトエネルジーのファビアン・ドゥベただ一人。

最大で6分近いタイム差をつけた彼も、残り100kmを切ってから少しずつその差を減少させていき、残り60㎞を過ぎると1分を切り始めた。

そして、残り53.5㎞。タイム差が41秒にまで縮まったタイミングで、集団からフィリップ・ジルベールがアタック。

ここにチームメートのステファノ・オルダーニとコフィディスのアントニー・ペレス、そしてトタル・ディレクトエネルジー(すなわち先頭のドゥベのチームメートの)クリストファー・ローレスが食らいついていった。

先頭は5名に。その中にロット・スーダルとトタル・ディレクトエネルジーがそれぞれ2名ずつ含めることになったはずだったのだが、なんとここでローレスがすぐさま脱落。

一体何のための動きだったのか・・・ずっと一人で逃げ続けていたドゥベもやがて脱落し、先頭はジルベール、オルダーニ、ペレスの3名だけに。


そして残り33.2㎞でリッチー・ポートが落車。

腰のあたりを強く打ち付けたようで、やがて自転車を降りることに決めた。

彼の不幸体質はまだ鳴りを潜めていないのか。昨年はまさかのツール・ド・フランス総合3位で復活を感じさせた中で、再び不安になる走り出しとなった。


残り26.5㎞でジルベールたちが吸収。

その後はしばらく大きな先頭集団のまま推移するが、残り15.5km地点に用意されたこの日2つ目の中間スプリントポイントに向けての「登り」で、1つ目の中間スプリントポイントを2位通過(集団先頭通過)していたマイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ)がアタック。

昨年総合2位で今年もコツコツとボーナスタイムを稼いでおきたいティシュ・ベノート(チームDSM)もここに追随し、マシューズ、ベノート、トレック・セガフレードのジャスパー・ストゥイヴェンの順での通過となった。


この中間スプリントポイントでの動きのあともしばらく集団先頭は落ち着かない様子を見せ、その中で残り14.9㎞でピエール・ラトゥール(トタル・ディレクトエネルジー)がアタック。

ここにアルペシン・フェニックスのクリスティアン・ズバラーリやトレック・セガフレードのエドワード・トゥーンスなどが追随し、さらにのちに集団からルイスレオン・サンチェスに牽かれて総合上位候補のアレクサンドル・ウラソフがアタック。

先頭は以下9名で構成された。

セーアン・クラーウアナスン(DSM)
エドワード・トゥーンス(トレック)
マッティア・カッタネオ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
ダビ・デラクルス(UAEチーム・エミレーツ)
ピエール・ラトゥール(トタル・ディレクトエネルジー)
シリル・ゴチエ(B&Bホテルス・p/b KTM)
クリスティアン・ズバラーリ(アルペシン・フェニックス)
アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック)
ルイスレオン・サンチェス(アスタナ・プレミアテック)

だがさすがにウラソフを含むこの危険な逃げを集団が許すことはなく、残り11㎞で完全吸収。

その後は集団スプリントでの勝利を狙うチームが中心となって先頭を支配し、大集団のままフィニッシュに到達することとなる。


残り4㎞まではトレック・セガフレード、ボーラ・ハンスグローエ、トタル・ディレクトエネルジー、B&Bホテルス、そして新城幸也が牽引に加わるバーレーン・ヴィクトリアスなどがそれぞれトレインを作って横並びにペースアップしていく。

だが残り4㎞からはここにグルパマFDJのトレインが上がってきて一気にペールアップ。彼らのペースについていけるのはトレック・セガフレードくらいとなった。

しかし、グルパマFDJはあまりにも早すぎたか。残り1㎞を過ぎてから、早くもデマールの前にはジャコポ・グアルニエーリただ一人だけとなる。

一方のドゥクーニンク・クイックステップはいつも通り残り2㎞を切るまでは全く姿を現さなかった中で、そのタイミングでしっかりとサム・ベネットを牽き上げ始める。

ラスト数百メートルでの落車で混乱する中でややベネットもトレインを失う結果となったが、ジョルディ・メーウスが強烈なリードアウトでパスカル・アッカーマンを引き上げると、そのアッカーマンの背後というベストポジションをベネットは手に入れることに成功する。

一方のアルノー・デマールは、グアルニエーリの番手を奪おうとするジャスパー・ストゥイヴェンとの競り合いの中でタイミングを失い、アッカーマンの番手をベネットに奪われたことで、しばらく向かい風を受ける結果となってしまった。

最後はベストタイミングで放たれたはずのアッカーマンが(もしかしたらわずかな登り勾配のせいで)思った以上に伸び切らず、逆にロケットのような勢いで発射されたサム・ベネットがライバルたちを圧倒するスプリント勝利をぶちかますこととなった。

第1ステージ


アルノー・デマールの敗因はチームの先頭支配があまりにも早すぎたこと。

その(ゴデュに対するアシストを犠牲にしてでも用意した)牽引力、チーム力は全チーム中随一だが、あと1㎞先頭支配を開始するタイミングが遅ければ、なんとかなったかもしれない。あの場面で、メーウスがアッカーマンを牽き上げて前に抜け出す余裕を与えることさえなければ、デマールが先頭で勝利のスプリントを開始することができていただろう。


今年のツール・ド・フランスを占うスプリント勝負を垣間見ることができた一戦。明日もまた、どんな結果になるのか楽しみである。

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