ツール・ド・フランス2021 第1ステージ
いよいよ開幕した今年のツール・ド・フランス。
ブルターニュ半島の先頭、歴史ある軍港ブレストで3週間の戦いが開幕する。
第1ステージはブレストからランデルノーまでの197.8㎞丘陵ステージ。
実にブルターニュらしい、しかしグランデパールには珍しいアップダウンの連続と激坂含みの登りフィニッシュ。
2021年最初のマイヨ・ジョーヌは一体誰の手に?
参考リンク
アクチュアルスタート直後、チーム・キュベカ・ネクストハッシュのヴィクトール・カンペナールツとマックス・ワルシャイドが先頭に飛び出し、抜け出しを図る。
これが叶わないと今度は右側からトレック・セガフレードのジュリアン・ベルナールがアタック。
逃げ切りは難しくとも合計8ポイント・・・フィニッシュのポイントを除いても6ポイントを稼げる日ということもあり、次々とアタックが繰り出され、なかなか逃げが決まらない。
そんな中、スタートから8.6km地点に位置する4級山岳コート・ド・トレベオリン(登坂距離900m、平均勾配5.1%)が近づくと、先ほどもアタックしていたカンペナールツが単独で抜け出す。
このまま先頭で4級山岳を先頭通過できるか・・・となったところでアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオの選手が1名、一気にその差を詰めていく。
ギリギリで抜かれてしまうか・・・と思ったところでなんとかかわし、カンペナールツがまずは4級山岳1ポイントを獲得した。
その後、新たな逃げが形成される。
イーデ・スヘリンフ(ボーラ・ハンスグローエ)
アントニー・ペレス(コフィディス・ソルシオンクレディ)
クリスティアン・ロドリゲス(チーム・トタルエナジーズ)
ダニー・ファンポッペル(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
フランク・ボナムール(B&Bホテルス・p/b KTM)
コナー・スウィフト(チーム・アルケア・サムシック)
スタートから20㎞ほど消化して残り179㎞。
いよいよメイン集団も足を止め、6名の逃げが確定した。
27.2㎞地点にこの日2つ目の4級山岳コート・ド・ロスノエン(登坂距離3km、平均勾配4%)。
まずはスプリント力のあるスウィフトが駆けるが、それ以上にスプリント力のある男、ファンポッペルがこれを抜き去り先頭通過。1ポイントを獲得する。
そして残り136.3㎞地点の3級山岳コート・ド・ロクロナン(登坂距離900m、平均勾配9.3%)。
最初に飛び出したのはクリスティアン・ロドリゲスだったが、これをスヘリンフが追随。
だが勾配がどんどん厳しくなっていく中で6名は分裂し始め、最終的にはスヘリンフとファンポッペルとペレスの3名に絞られる。
そこから最初にファンポッペルが脱落。ピュアスプリンターにはやはりこの10%を超える急勾配は厳しかった。
次いで加速するペレスによってスヘリンフが突き放され、この日最初の3級山岳はペレスが先頭通過。
2位通過はスヘリンフ。それぞれ2ポイント、1ポイントを獲得し、この時点での暫定山岳賞首位はペレスの手に。
昨年も序盤から山岳賞争いに積極的で、第3ステージでは暫定首位に立ちそのままフィニッシュに到達すれば山岳賞ジャージを着て表彰台に・・・というところで、チームカーとの衝突というアクシデントによって、肋骨骨折や肺挫傷などの大怪我を負って幻の山岳賞ジャージと共にリタイアすることとなってしまっていたペレス。
今年はその借りを返せるか。
だが、残り82.4㎞地点に用意された4級山岳コート・ド・スタン・アル・ギャロン(登坂距離2㎞、平均勾配3.4%)を前にして先頭集団からスヘリンフがアタック。
一度番手を下げたあとに速度差をつけて飛び出したスヘリンフのアタックで、誰もついていけず。
そのまま4級山岳を先頭通過してこれで合計2ポイント。
暫定首位ペレスと並ぶポイントになったわけだが、このままフィニッシュに到達すると、獲得している山岳ポイントの格の問題で首位にはなれない。
またペレスにとっても、このままポイントを重ねられずにフィニッシュすると、この日のステージ優勝者が山岳賞ジャージを手に入れる可能性が高い。
スヘリンフにとってもペレスにとっても、残り47㎞地点に用意された4級山岳コート・ド・サン=リヴォアール(登坂距離2.5km、平均勾配3.9%)が絶対に取るべき重要なポイントになるわけだ。
だが、残り67㎞地点でスヘリンフ以外の5名が集団に吸収。
そして残り62.7㎞地点の中間スプリントポイントでは、スヘリンフがそのまま先頭通過(20ポイント)。
2位以下はカレブ・ユアン(17ポイント)、ペテル・サガン(15ポイント)、マイケル・マシューズ(13ポイント)、ブライアン・コカール(11ポイント)、アルノー・デマール(10ポイント)といった感じで通過していく。
驚くべきは集団先頭をユアンが獲ったこと。
今年3大グランツール全てに出場し勝利することを目標としているユアンにとって、今回のツールも途中リタイアが前提だと思い込んでいたが、もしかしたら彼はツールに関してはシャンゼリゼまで行くつもりなのだろうか?
その後メイン集団は早々にスヘリンフを吸収しようとはせず、4級山岳コート・ド・サン=リヴォアール(登坂距離2.5km、平均勾配3.9%)をスヘリンフが無事、先頭通過。
これでスヘリンフがこの日の山岳賞ジャージを実質的に確定させた。
そんな、山岳賞を巡る熱い戦いが繰り広げられた中で、大落車が発生。
観客がコース内に差しだしたボードに集団先頭付近で走っていたトニー・マルティンが激突し、ユンボ・ヴィスマの選手もほとんど巻き込むような落車となった。
これでチームDSMのヤッシャ・ズッタリンがリタイア。
その後も集団はやがて一つになり、残り29㎞地点でスヘリンフを吸収。
あとはフィニッシュに向けて淡々と足を貯めていく状況・・・になるはずだったのだが、残り7.6㎞でさらに大規模な落車。また集団の真ん中あたりで、有力勢も巻き込まれている可能性の高い落車となった。
そしてかなり絞り込まれた集団の先頭を、ドゥクーニンク・クイックステップが本気の牽引を見せていく。
バッレリーニやアスグリーンが先頭に立ちペースアップ。EFエデュケーション・NIPPOがここに食らいつき、左からはソンニ・コルブレッリを先導するマテイ・モホリッチやマチュー・ファンデルポールの姿も。
そして残り3㎞。
いよいよ、ラストの激坂区間に突入していく。
あまりにも強烈な勾配の結果、先導していたドゥクーニンクのアシストたちと集団とのギャップが開いてしまい、アラフィリップ自らそれを埋めに加速する場面も。
そして残り2.3㎞。
最後までアラフィリップの前を守り続けていたドリス・デヴェナインスが終了すると同時に、アラフィリップが一気にアタック。アルデンヌ・クラシックでのいつものパターンである。
アラフィリップの後ろにはワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)の姿が。しかしアラフィリップに食らいつくことはしない。後ろを振り向いて、もしかしたらこの日は完全にエースのプリモシュ・ログリッチを最優先しており、彼がちゃんとついてきているか確認していたのかもしれない。
その間に一気にギャップを開いていくアラフィリップ。
やがて残り2.1㎞でピエール・ラトゥール(チーム・トタルエナジーズ)がアタックしてアラフィリップにブリッジを架けようとするが、そこでさらにアラフィリップがもう一段階の加速。ラトゥールは届かない。
後続からはさらにプリモシュ・ログリッチとタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)が抜け出して追走を仕掛けるも、これもラトゥールにすら追い付かないうちに集団に引き戻された。
そしてアラフィリップはそのまま、独走状態のままフィニッシュへ。
最後は左手の指を口に加え、1週間前に生まれたばかりの我が子に捧げるガッツポーズを見せつけた。
昨年は亡き父に送った涙のガッツポーズ、そして今年は、新たなる命に捧げるガッツポーズ。
フランスの英雄、世界王者ジュリアン・アラフィリップは、このブレストの地で、フランスに栄光のマイヨ・ジョーヌをもたらした。
11位以下はエステバン・チャベス、ペリョ・ビルバオ、ヨナス・ヴィンゲゴー、アレクセイ・ルツェンコ、エンリク・マス、リゴベルト・ウラン、ナイロ・キンタナ、ヴィンツェンツォ・ニバリ、カスパー・アスグリーン、マチュー・ファンデルプール、ヤコブ・フルサンが一団に。
そこから5秒遅れでリチャル・カラパスやワウト・ファンアールト、ミゲルアンヘル・ロペスやエマヌエル・ブッフマンはこのログリッチらの含まれる2位集団からは1分41秒遅れ、リッチー・ポートも2分8秒遅れとなってしまった。
初日から大きく総合が動いた波乱のステージ。
翌日はミュール・ド・ブルターニュを2回登る、激坂フィニッシュが続く。
更なる波乱が待ち受けるのか。そしてアルカンシェルにマイヨ・ジョーヌを重ね着したアラフィリップが2勝目まで飾ってしまうのか。
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