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ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2022 第1ステージ

スペイン北東部、フランスとの国境沿いに位置するピレネーの麓、カタルーニャ州。この地を舞台にした、1909年初開催の歴史ある1週間のステージレースである。

ピュアスプリンター向きのコースがないんじゃないかというような、ひたすら山岳に塗れた実にスペインらしいレースであり、この先のアルデンヌ・クラシックやグランツールに向けた、各チームのステージレーサーたちがその足慣らしをしていくレースとなっている。


昨年も第1ステージから逃げ切りが決まるという波乱の展開だったボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ。今年も、第1ステージが波乱が。

最初にアタック合戦の末に出来上がった逃げは6名。

ヨナタン・カイセド(EFエデュケーション・イージーポスト)
マルコ・ブレンナー(チームDSM)
ラウル・ガルシア(エキッポ・ケルンファルマ)
カルロス・カナル(エウスカルテル・エウスカディ)
アントニオ・ソト(エウスカルテル・エウスカディ)
イェツ・ボル(ブルゴスBH)

だが、残り88㎞地点で横風によりエシェロンが発生。

集団が分裂し、抜け出した集団が先頭6名を飲み込んで巨大な「先頭集団」が出来上がる。

総勢30名弱のこの集団の中には、チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコが7名全員を、そしてイスラエル・プレミアテックも本日未出走のアレッサンドロ・デマルキを除く6名全員を入り込ませている一方、こういった展開にめっぽう強いはずのイネオス・グレナディアーズはパヴェル・シヴァコフただ一人、クイックステップ・アルファヴィニルに至っては誰一人この先頭集団に入れられないという、異様な事態に。

ただ、その後、ボーラ・ハンスグローエ、モビスター・チーム、AG2Rシトロエン・チームらが中心となって牽引するメイン集団が着実にタイム差を減らしていき、残り50㎞地点で一つに。

壊滅的な展開は未遂に終わることとなった。


その後、最初の逃げにも乗っていたヨナタン・カイセドのカウンターアタックをきっかけに、新たな6名の逃げが形成される。

ピーター・セリー(クイックステップ・アルファヴィニル)
ブルーノ・アルミライル(グルパマFDJ)
テオ・デラクロワ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
ヨナタン・カイセド(EFエデュケーション・イージーポスト)
ヨナス・ヴィーデベルグ(チームDSM)
アレックス・モレナール(ブルゴスBH)

集団も落ち着きを取り戻し、以後は大きな波乱なく、フィニッシュへと向かうことに。


ただ、この日のフィニッシュも、「平坦」カテゴリとは名ばかりで、結構しっかりとした登りレイアウト。

強力なスプリンターは連れてきていないクイックステップ・アルファヴィニルが、ピュアスプリンターたちを振り切る勢いで猛烈に集団を牽引しながら残り1㎞を切る。

そこから直登の登り。まずは残り880mでロット・スーダルのシルヴァン・モニケがアタック。

するとこれを追う集団の先頭にイネオス・グレナディアーズのリチャル・カラパスが立ち、そのままモニケを捕まえると共にダンシングで加速していく。総合優勝した2019年のジロ・デ・イタリアの第4ステージや2020年ツール・ド・ポローニュ第3ステージのように、こういう局面で結構アグレッシブに登りスプリント勝利を狙ってくるのはカラパスらしいところである。

だがこのカラパスのスプリントも後続を千切ることはできず、むしろその背後にいるアンドレア・バジョーリ、ソンニ・コルブレッリ、そしてマイケル・マシューズのトレインのアシストのような形に。

徐々に勾配を増していく中、次第にカラパスの勢いも衰えていき、残り300mを切って段々と後続の集団も横に広がっていく。

これを見て残り200m。まずは前から3番目にいたコルブレッリが進路を左に取って加速を開始。ほぼ同時にスプリントを開始していたグルパマFDJのカンタン・パシェの前を塞ぐような進路を取る。

すると、一旦取り囲まれそうになっていたマイケル・マシューズの目の前の空間が開ける。ここで、彼は迷いなく、股の間から後方を窺いつつ、誰もいない空間を一人、加速していった。

真ん中からマシューズ。左からはコルブレッリ。パシェはコルブレッリの後輪。

勾配が思った以上にきつく、マシューズは果たして、力を残せるのか?

200mを16秒、登り勾配を時速45㎞で駆け抜け耐え抜いたマシューズが、1年半ぶりの勝利に両手を天に掲げた。

リザルトを見ても、まったくスプリントとは言えないものに。3年前同じ場所にフィニッシュ地点が置かれたときもマシューズ、バルベルデ、インピー、シャフマンといったリザルトだったが、今回はそれ以上にパンチャー・クライマー的なリザルトに。

ただ、その結果、昨年のツール・ド・フランスのピュアスプリントステージでは歯が立たない中、果敢に逃げて勝利を狙いに行っていた2人がワンツーを獲れたというのは、さすがというか何というか。

とりあえずマシューズ、おめでとう。久々の勝利の笑顔に、彼が活躍し始めた頃からレースを見始めていた自分にとっては、非常に思い入れ深く嬉しいものとなった。


なお、レース直後、コルブレッリが心臓発作で倒れ心臓マッサージを受けているという情報が。

大事に至らないことを願う。

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