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パリ~ニース2021 第7ステージ

「太陽へと向かうレース」「ミニ・ツール・ド・フランス」の異名で知られる、サイクルロードレースシーズンの本格開幕を告げる8日間のステージレース。

第7ステージはニースからヴァルドゥブロール・ラ・コルミアーヌまでの166.5kmの山岳ステージ・・・のはずだったのだが。

週末のニースがロックダウンされる関係でコース変更。ニースからスタートするステージ前半部分が丸々カット。最初の1級山岳が消滅する形となった。

但し、中盤以降の2つの2級山岳と最後の1級山岳コルミアーヌ峠の山頂フィニッシュは健在のため、やはりこの日がクイーンステージであることに変わりはない。

下馬評通りプリモシュ・ログリッチが強さを見せつけるのか、それともこれに抗う存在はいるのか。

注目の一戦である。

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逃げは13名。

ニールソン・ポーレス(EFエデュケーション・NIPPO)
アンドレイ・アマドール(イネオス・グレナディアーズ)
ローレンス・デプルス(イネオス・グレナディアーズ)
アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック)
ジュリアン・ベルナール(トレック・セガフレード)
ケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)
トーマス・デヘント(ロット・スーダル)
サム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)
マッティア・カッタネオ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
アントニー・ペレス(コフィディス・ソルシオンクレディ)
ダビ・デラクルス(UAEチーム・エミレーツ)
ディラン・トゥーンス(バーレーン・ヴィクトリアス)
ジーノ・マーダー(バーレーン・ヴィクトリアス)


山岳賞ジャージのアントニー・ペレスは本日も3つの山岳ポイントをすべて先頭通過。
これで山岳賞確定。コフィディス一筋の29歳。昨年もツール・ド・フランスで山岳賞ジャージを着ながら落車してリタイアするという悔しい思いを味わった彼がしっかりとチームに結果を持ち帰ってみせた。

一方、ポイント賞で6ポイントのビハインドを抱えているサム・ベネットも
山岳ステージながらもポイント収集のために逃げに乗る。
この日のスプリントポイントはラスト33㎞地点とラスト5.5㎞地点(コルミアーヌ峠の終盤)とかなり厳しめだが、総合争いでログリッチを逆転することがあまり現実的でない中、少しでも結果を出そうというチームの意地を感じる。

なお、そのベネットとタンデムを組んでいるマッティア・カッタネオは、総合タイムで2分01秒遅れの総合23位。
バーレーン・ヴィクトリアスのトゥーンス、マーダーもそれぞれ2分14秒遅れ・2分21秒遅れ、EFエデュケーション・NIPPOのポーレスも2分30秒遅れと、この日の逃げ状況次第で総合ジャンプアップも狙える、そんな面子であった。

そして、リッチー・ポートとテイオ・ゲイガンハートというダブルエースを失い、いつもの「解き放たれた狼」状態となったイネオス・グレナディアーズからはアマドールとデプルスという実力間違いなしの最強アシストたち。

とくにアマドールは今でこそ最強山岳アシストとして名を馳せているものの
かつてはジロ・デ・イタリア総合4位など自らエースとして活躍する機会も多かったクライマー。

この日、彼らの本気を見ることができるかも――

と、思っていたが、これを許さないのが今年も最強、チーム・ユンボ・ヴィスマ。

残り41㎞でタイム差1分20秒と、逃げ切りはかなり厳しいと言えるタイム差にまで縮まっていた。


山岳賞ポイント収集を終えたペレスは集団に吸収。

サム・ベネットが1つ目の中間スプリントポイント(残り33㎞地点)を先頭通過。カッタネオも2位通過でボーナスタイム2秒も獲得した。

いよいよ最後のコルミアーヌ峠に突入し、残り15㎞で逃げていたデプルスとデヘントも吸収。

集団先頭はコフィディス・ソルシオンクレディが積極的に牽引していく。

残り11.7㎞でルツェンコが先頭から脱落すると、同じタイミングで集団先頭のコフィディス列車からシモン・ゲシュケがアタック。

元サンウェブ。CCCチームを経て、今年からコフィディスに。かつてはトム・デュムランのアシストとして彼の2017年ジロ・デ・イタリア総合優勝を支えた男だが、2015年のツール・ド・フランスではピレネーの山でまさかの逃げ切り勝利。子どもの頃からの夢だったとインタビューで涙ながらに語るその姿は、ロードレースを見始めたばかりの私の心に今も鮮やかに残っている。

そんなゲシュケが目指す先頭はすでにエリッソンドとマーダー、ポーレスの3名だけに。

ゲシュケとのタイム差は36秒。プロトンは48秒差。残り距離数は12.43㎞。逃げ切るには、少し厳しいタイム差ではあった。


だが先頭のマーダー、そしてポーレスは粘る。残り7㎞でタイム差は50秒。ここでエリッソンドが脱落する。

2016年のツアー・オブ・カリフォルニアで、当時同じアクセオン・ハーゲンスバーマンのチームメートだったテイオ・ゲイガンハートとルーベン・ゲレイロと共に新人賞のワンツースリーを独占した「アメリカ最大の期待の星」ポーレス。

そして、タデイ・ポガチャルの総合優勝した2018年のツール・ド・ラヴニールで区間2勝し、これもまた新時代の注目選手だと信じられていたマーダー。

ともに、実力は申し分ないはずなのに、どこかうまくいかなかった二人が、ここで結果を出すべく懸命にペダルを回していく。

残り4.7㎞でマーダーがポーレスを突き放して独走を開始。

集団ではオマール・フライレが背後にルイスレオン・サンチェスを引き連れてペースアップ。

残り4.2㎞でフライレが仕事を終え、サンチェスが前に出てくるが、思うようにペースが上がらない彼を押しのけて、ユンボ・ヴィスマのニュージーランド王者ジョージ・ベネットが先頭を牽き始める。

ベネット、アレクサンドル・ウラソフ、ヨン・イサギレ、プリモシュ・ログリッチ、マキシミリアン・シャフマンの順で縦に引き伸ばされるプロトン先頭。ここからダヴィ・ゴデュ、ルイスレオン・サンチェス、ワレン・バルギルなどが落ちていく。

残り3㎞。タイム差36秒。

ログリッチの隣に、後方からポジションを上げてきたステフェン・クライスヴァイクが並ぶ。

そのまま仕事を終えたベネットと代わり、先頭を牽き始めるクライスヴァイク。2019年ツール・ド・フランス総合3位の男の本気の牽引に、さらに集団のペースが上がり2017年パリ~ニース覇者セルジオ・エナオ(キュベカ・アソス)も脱落し、先頭は11名に。

残り1.6km。24秒差。

ここでクライスヴァイクが終了。と、同時にプリモシュ・ログリッチがアタック!

昨年の総合優勝者マキシミリアン・シャフマンもすかさずここに貼りつく。残り1.3㎞でカウンターアタック。しかし決まらず。

先頭は5名。シャフマン、ウラソフ、ルーカス・ハミルトン、ログリッチ、昨年総合2位のティシュ・ベノート。

残り1㎞。タイム差17秒。

再びログリッチ、アタック。シャフマンが食らいつく。

残り550m。タイム差4秒。

ここでログリッチ、一旦ペースを緩め、シャフマンが前に出る。

残り300m。

ベノート、ハミルトン、ウラソフも再び合流。これは、マーダー、逃げ切れたか?


だが、残り250mでみたび、ログリッチがアタック。

そしてこれが決定打となった。

追いすがれないシャフマン。

50m先にフィニッシュラインを見据え、勝利を確信したはずのマーダー。

しかし残り25mで、その左隣にマイヨ・ジョーヌの男が並んでいた。


まさに容赦ない一撃。言い換えれば、勝利への飽くなき執念。その執念が、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝を導いた。

その貪欲さこそが、この男の強さの秘訣。フィジカル面での最強ではないかもしれないが、その精神性においては間違いなく現役最強の男である。

第7ステージ


翌日の第8ステージはやはりニース封鎖の影響でいつものエズ峠~キャトル・シュマン峠の「大逆転劇コース」ではなくなっている。

厳しさはどれくらいかは分からないが山頂フィニッシュではあるようで、その意味でプリモシュ・ログリッチがあくまでも最有力なのは変わらなそうだ。

あとは総合表彰台争い。総合2位のシャフマンと総合3位のウラソフとのタイム差は19秒、ウラソフと総合4位イサギレとのタイム差は4秒。このあたりはまだまだどうなるか分からない。

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