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UCIロード世界選手権2021「フランドル」男子エリートロードレース

最後のルーヴェン周回からの独走で勝利を決めた男子U23。

最後まで決定的なアタックが決まらず、小集団でのスプリントで決着した女子エリート。

いずれにせよ、残り40㎞より前のフランドリアンサーキットで決定的な動きが起こることはなく、難易度がそこまででもないルーヴェン周回で、スプリンターにもチャンスのある展開になるのではないか。

そんな予想は見事に裏切られる結果となった。


私の知る限り近年の世界選手権で最も勝者の予想できない(別の言い方で言うと決定的なアタックポイントが予想できない)世界選手権となった今年の「フランドル」。

蓋を開けてみれば出てきたのは、ここ近年で最も早い段階から動き続け、サバイバルな展開が続いた激しいロードレースだった。

そんな中、勝利を手に入れたのは、その展開を常に自ら作り続けてきた、決して「優勝候補ではない」チームであった。


あまりにも激しすぎる「前半戦」

全長267.7㎞。総獲得標高2,562m。

「フランドルの首都」アントウェルペン(アントワープ)から出発したプロトンは、アクチュアルスタートから5㎞ほど消化したのちに早速8名の逃げを確定させる。

ホセティト・エルナンデス(コロンビア、27歳)・・・チーム・メデジンEPM
ヨエルレビ・ブルバーノ(エクアドル、32歳)・・・無所属
パヴェル・コシェトコフ(ロシア、35歳)・・・ガスプロム・ルスヴェロ
パトリック・ガンパー(オーストリア、24歳)・・・ボーラ・ハンスグローエ
ロリー・タウンゼンド(アイルランド、26歳)・・・キャニオンdhbサンゴッド
オスカル・ニス(エストニア、27歳)・・・エヴォプロ・レーシング
キム・マウヌッセン(スウェーデン、29歳)・・・リワル・サイクリングチーム
ジャンバルジャム・サインバヤル(モンゴル、25歳)・・・トレンガヌ・サイクリングチーム

タイム差は最大で5分半程度。

メイン集団は最大の優勝候補ベルギーの大牽引役ティム・デクレルクが早速牽引を開始し、序盤から落車が頻発した男女ジュニアや男子U23、そして逃げがほとんどできなかった女子エリートと違い、非常にオーソドックスなコントロールされた展開で幕を開けた。

このまま残り80㎞を切ったあたりから始まる「2回目フランドリアンサーキット」まで大きな動きはない—―そんな常識を打ち破る展開が巻き起こったのは、残り183.3㎞地点。

最初に動き出したのは、フランスであった。


残り183.3㎞。

最初のルーヴェン周回を終え、最初のフランドリアンサーキットへと向かう道の途上で、フランスのアントニー・テュルジスがアタック。

この動きにドイツのゲオルグ・ツィマーマンとスイスのミヒャエル・シェアー、そして先ほどまで集団を牽いていたデクレルクも反応する。さらには同じくベルギーのレムコ・エヴェネプールも。

この動きが一旦引き戻されると、縦に長くのばされた集団の先頭からさらにシェアーがアタック。この動きにもすぐさま、エヴェネプールが反応した。

さらにフランドリアンサーキットの入口にあたるスメイスベルフ(登坂距離700m、平均勾配8.8%)に入ると、フランスのブノワ・コヌフロワがアタック。

ブルターニュ・クラシックを制したばかりの男の危険なアタックに、ここでもエヴェネプールが食らいつく。さらにはブエルタ・ア・エスパーニャ3勝の男マグナス・コルトニールセン(デンマーク)も。

このまま逃げ切ってもおかしくないような非常に強力な3名が集団から抜け出すこととなった。まだ、フィニッシュまで180㎞も残っているというのに!

ところでエヴェネプールの今日の「仕事」はこれのようだ。戦前は明確にエースではないと宣言され、エヴェネプール自身もそれを受け入れていると伝えられていた。それでもなお、エディ・メルクスは彼が彼自身のために走る男でありチームに入れるべきではないとコメントし、エヴェネプールがそこに反論するなんて話も。

しかしここでエヴェネプールは序盤~中盤の危険な攻撃にいち早く反応するという役割を買って出ることで、しっかりとチームに対する忠誠を示すこととなった。


とはいえ、それでもなお、この180㎞の距離からでも逃げ切ってしまうかもしれない、と思わせるだけの怖さが彼にはあった。

残り177.8㎞。フランドリアンサーキット最大の勝負所であるモスケストラート(登坂距離550m、平均勾配8%)に突入。ブラバンツペイルでも使われる石畳の急坂で、逃げ8名からヨエルレビ・ブルバーノが脱落する。

コヌフロワ、エヴェネプール、コルトニールセントリオは先頭7名から3分20秒差。メイン集団とは22秒差をつけていた。メイン集団ではイギリスのルーク・ロウなどが前に出て牽き始め、モスケストラートを登り終える頃には、小さな集団がいくつかできる分裂状態と化していた。

残り170.6㎞。今年のブラバンツペイルに「登坂区間としては」初登場した「オーベレルエイセのS字コーナー」でスイスのシュテファン・ビッセガーがアタックし、ここにスロベニアのヤン・トラトニクが反応。2人はやがてエヴェネプールたちに合流する。

さらに複数名が遅れて追いついてきた結果、残り169㎞時点で15名の「第2集団」が出来上がる。

ブノワ・コヌフロワ(フランス)
アルノー・デマール(フランス)
ティム・デクレルク(ベルギー)
レムコ・エヴェネプール(ベルギー)
プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)
ヤン・トラトニク(スロベニア)
ベン・スウィフト(イギリス)
パスカル・エーンクホーン(オランダ)
カスパー・アスグリーン(デンマーク)
マグナス・コルトニールセン(デンマーク)
イマノル・エルビティ(スペイン)
ネイサン・ハース(オーストラリア)
シュテファン・ビッセガー(スイス)
マークス・フールガード(ノルウェー)
ブランドン・マクナルティ(アメリカ)

さらにこの直後のベケストラート(登坂距離439m、平均勾配7.7%)でベルギーチームが集団先頭を物理的に蓋したことによってメイン集団の追走速度が一気に低下。

残り165㎞を切った時点でこの「第2集団」とプロトンとのタイム差は1分近くにまで広がる。

完全に後手を踏むこととなったイタリアチームは、アレッサンドロ・デマルキジャンニ・モスコンディエゴ・ウリッシ、さらには優勝候補の一人であったはずのマッテオ・トレンティンも酷使しての全力追走。

女子エリートでは最後の最後まで息をひそめることで成功したイタリアだったが、今回はその戦略が完全に裏目に出てしまったようだ。

一方の逃げ集団も、平坦はティム・デクレルクが、登りではレムコ・エヴェネプールがペースアップを図り、ときにログリッチまでも先頭交代に回る強力な総力戦体制。

それでいてワウト・ファンアールトやジャスパー・ストゥイヴェン、タデイ・ポガチャルにマテイ・モホリッチといったエース陣は集団内で全くの無傷状態で残れているため、イタリアは優勝候補チームの中で自分たちだけが足を使わされている完全なる劣勢状態。

そこにダヴィデ・バッレリーニの落車やモスコンのパンクなどが重なり、まさに踏んだり蹴ったりの状態であった。

それでも全力の牽引を続けていった結果、残り133.2㎞。

ようやく、メイン集団がエヴェネプールたち15名を捕まえる。

残り169㎞地点からの、実に36㎞以上にわたるイタリアの全力牽引がようやく実を結んだ。

そして同時に、ずっと前を牽き続けていたトレンティンが脱落。

2019年世界選手権で2位にまでなった男が見せた、チームに捧げる全力の献身であった。


だが、この時点でまだ133㎞。全体のようやく半分が消化されただけであった。

戦いはむしろここから、本格化していく。

このトレンティンのあまりにも早すぎる脱落は、この日が平穏には終わらないことを否が応でも暗示していた。


勝負権を許された「17名」ができるまで

残り131㎞。第2集団がプロトンに捕まった直後、わずか17秒差でしかなかった先頭の7名もすぐさま捕まえられ、集団は1つに。

当然、すぐにカウンターの動きが巻き起こる。今度もまた、フランスの動きがきっかけだ。

集団の先頭が小集団に。そこから遅れたマチュー・ファンデルプール(オランダ)を、バウケ・モレマが牽き上げる姿も。

残り126.3㎞で今度もまたフランス、今度はヴァランタン・マデュアスがアタック。ベルギーもすぐさま反応。今度はイヴ・ランパールト

止まらないフランスの波状攻撃。そしてこれを常に抑え込むベルギー。

昨年の覇者ジュリアン・アラフィリップを抱えるフランスチームは今大会のゼッケンNo.1を保有するチームではあるものの、メンバーは決して今大会の優勝候補チームとは言い難いものであった。アラフィリップが有利というにはあまりにも難易度の低いコースであり、その他のメンバーもタフネスさは持ち合わせてはいるものの、決定力に欠いていた。少なくとも、ベルギーやイタリアの完璧さには劣っていた。

そんな、王者にして挑戦者たるフランスチームがこの日取るべきと判断した戦略は、「ひたすら攻め続ける」であった。


残り117㎞。ルーヴェンサーキットにおけるある意味最も重要な登りワインペルス(登坂距離360m、平均勾配7.9%)

ここでまた、今大会最初にアタックしたフランス人であるアントニー・テュルジスが加速。

そしてまたベルギーがこれを抑え込む。残り113.4㎞で「トラクター」デクレルクがまた前に出てきて牽き始める。

荒らしに荒らしまくろうとするフランスに対し、ベルギーはひたすらこれを抑え込み続けようとする作戦。


だが、レースが落ち着きを取り戻す瞬間はこのわずか十数㎞でしかなかったようだ。


残り95㎞。

再び集団内で動きが巻き起こり、11名の新たな「逃げ」が完成。きっかけを作ったのはドイツのニルス・ポリッツであった。

ヴァランタン・マデュアス(フランス)
レムコ・エヴェネプール(ベルギー)
ヤン・トラトニク(スロベニア)
アンドレア・バジョーリ(イタリア)
ディラン・ファンバーレ(オランダ)
マッズ・ウルツシュミット(デンマーク)
イバン・ガルシア(スペイン)
ロバート・スタナード(オーストラリア)
ニルス・ポリッツ(ドイツ)
ラスムス・ティレル(ノルウェー)
ニールソン・ポーレス(アメリカ)


残り71㎞。メイン集団からデクレルクがついに脱落。

残り70㎞。2回目のフランドリアンサーキットの入口「スメイスベルフ」でメイン集団から(1回目のとき同様に)ブノワ・コヌフロワがアタック。

ベルギーはすぐに反応する。今度はヴィクトール・カンペナールツ。ついて離れないカンペナールツにコヌフロワも諦め集団に引き戻される。そして間もなくやってくる危険なモスケストラートに備えてディラン・トゥーンスが集団先頭を牽引。彼に従ってベルギーの選手たちが全員集団の先頭に集まってきてモスケストラートに突入していく。

登りに突入するとここまで沈黙していたポーランドのミハウ・クフィアトコフスキが先頭に出てペースアップ。

集団が縦に引き伸ばされ、バラバラに引き裂かれる。それは先頭で逃げていた11名も同様で、最終的にモスケストラート終了時点で以下の5名だけが先頭に生き残った。

ヴァランタン・マデュアス(フランス)
レムコ・エヴェネプール(ベルギー)
アンドレア・バジョーリ(イタリア)
ディラン・ファンバーレ(オランダ)
ニールソン・ポーレス(アメリカ)

メイン集団からもミハウ・クフィアトコフスキが単独で抜け出して逃げから零れ落ちてきたポリッツと共にローテーションを回しながら先頭5名を追走。

だがメイン集団も縦に長く伸び切りながらこれを追撃。最終的にはヴィクトール・カンペナールツがブリッジを仕掛けクフィアトコフスキらを引き戻した。序盤ではエヴェネプールが担っていたアタック潰しを、このタイミングではカンペナールツが担っていたようだ。


続く「オーベレルエイセのS字コーナー」でもイヴ・ランパールトを先頭にベルギーチームが集団先頭を支配。重要所ではきっちりと集団をコントロールするベルギーは今大会最強の戦略と最強のチーム体制を持っていたことは間違いない。

レースが安定したままフィニッシュを迎えれば、彼らが勝つことは必然だったかもしれない。

しかし、そんな安定を常に破壊しつくそうと考えていたのがフランスだった。


今大会最後の本格的な石畳の登りとなる残り60㎞「ベケストラート」。

登坂距離439m。平均勾配7.7%。最大勾配15%。

50名程度しか残っていなさそうなメイン集団の先頭にジュリアン・アラフィリップが躍り出てくる。すぐさまワウト・ファンアールトもこの背後につける。ファンアールトの後ろにはベルギーのもう1人のエース、ジャスパー・ストゥイヴェン。チェコのゼネク・スティバルとスロベニアのマテイ・モホリッチ、イタリアのソンニ・コルブレッリもここに連なってくる。

いずれも今大会の優勝候補たち。少し遅れたトム・ピドコック(イギリス)やマチュー・ファンデルプールらも追いついて、残り55.7㎞。

先頭5名に対して12秒遅れの「超強力な」11名の追走集団が出来上がった。

ジュリアン・アラフィリップ(フランス)
フロリアン・セネシャル(フランス)
ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)
ワウト・ファンアールト(ベルギー)
マテイ・モホリッチ(スロベニア)
ソンニ・コルブレッリ(イタリア)
ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)
トム・ピドコック(イギリス)
マチュー・ファンデルプール(オランダ)
ゼネク・スティバル(チェコ)
マークス・フールガード(ノルウェー)

この追走集団が先頭5名と合流した瞬間、戦いは1つのターニングポイントを迎えた。

すなわち、デンマークのカスパー・アスグリーンやポルトガルのネルソン・オリヴェイラジョアン・アルメイダらが懸命に牽く「メイン集団」は、この瞬間に、今日という日における勝負権を失ったのである。

残り52㎞。レムコ・エヴェネプールが献身的に先頭を牽き続ける先頭17名が、この日の勝利の権利をもつ唯一の戦士たちとなった。

ジュリアン・アラフィリップ(フランス)
ヴァランタン・マデュアス(フランス)
フロリアン・セネシャル(フランス)
レムコ・エヴェネプール(ベルギー)
ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)
ワウト・ファンアールト(ベルギー)
マテイ・モホリッチ(スロベニア)
アンドレア・バジョーリ(イタリア)
ソンニ・コルブレッリ(イタリア)
ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)
トム・ピドコック(イギリス)
ディラン・ファンバーレ(オランダ)
マチュー・ファンデルプール(オランダ)
ミケル・ヴァルグレン(デンマーク)
マークス・フールガード(ノルウェー)
ニールソン・ポーレス(アメリカ)
ゼネク・スティバル(チェコ)


メイン集団とのタイム差は1分。

勝負権は先頭の17名に託された。


3度のアタックで掴み取った勝利

残り35㎞。

メイン集団とのタイム差を1分23秒にまで開いた17名の先頭はひたすらレムコ・エヴェネプールによって牽引されていた。

戦前の「アシストができない」という風評に対するアンサーであるかのように懸命に先頭を牽き続けるエヴェネプール。

この彼の働きについて、「なぜ彼はもっと背後のアンドレア・バジョーリに先頭交代を要求しなかったんだ?」という見解もありうるだろう。実際、残り26.2㎞地点で、彼は早くも脱落してしまう。

もしここで少しでも足を残すことができていれば、もしかしたら最終局面の展開も違っていたかもしれない。


だが、一方で、彼が牽き続けていた30㎞は、今大会でも珍しい平穏な時間であった。

レムコ・エヴェネプールがひたすら高速域で先頭を牽き続けていた間だけが、ベルギーチームが理想とするアンダーコントロール状態を維持できていたと見ることもできる。

だからこそ、彼が去った直後、再び先頭集団内は混沌とし始める。

その口火を切ったのはやはり、フランスであった。


すでに最後のスメイスベルフでも一度アタックをしていた前回覇者ジュリアン・アラフィリップ。

残り21.5㎞地点の「最後から2回目のワインペルス」で彼はお得意の「アシストに導かれての」アタックを繰り出す。今回はその2.5㎞前でも一度アタックをしていたヴァランタン・マデュアス。アムステルゴールドレースや今年のツール・ド・フランス第2ステージ、そして昨年の世界選手権でも見せた「ジュリアン・ミサイル」の発射だ。

だが、今年の世界選手権が難しいのは、昨年のイーモラのように「ここで仕掛ければ確実に決まるだろう」と言えるような難しさがこの登りにはないこと。

短すぎる激坂で得られたのはわずか5秒のタイムギャップ。

間もなく捕まえられてしまうアラフィリップ。

しかし残り19.4㎞で再びアタック。

だがこれもまた、捕まえられてしまう。

やはり今回の世界選手権のコースは、アラフィリップには不利なのか?

これしか勝つ方法がないとはいえ、何度も何度も、無謀な攻撃を続けるしかないのか?


そうかもしれない。

だが、それを勝利の瞬間を引き寄せるまでやり遂げるだけの力と強い思いとが、この男にはあった。


そして残り17.4㎞。

今大会最もフィニッシュに近い位置に用意されたわずか200mの激坂「シント=アントニウスベルグ」。

ここで彼は、3度目の、そして決定的な一撃を繰り出す。

それは何の衒いもない、真っ直ぐな、しかしそれがゆえにあまりにも美しい、ジュリアン・アラフィリップという男を象徴するような一撃であった。


あとは、迷うことなくペダルを踏むだけであった。

後続はジャスパー・ストゥイヴェン、ディラン・ファンバーレ、ミケル・ヴァルグレン、ニールソン・ポーレスの4名が追走集団を形成して追いかけようとするが、そのうちの何名かは後続の集団にいるはずのエースのことを気にかけ、あるいは別の誰かはライバルに先を越されないように慎重に立ち回ることを優先していた。

迷いのない走りをできたのはただ一人先頭のアラフィリップだけだった。


ゆえに勝つのは必然であった。

決して筆頭の優勝候補とは言えない布陣で臨んだ今大会。そのすべてのメンバーが各々の全力を尽くして長いレースをかき回し続け、最後にエースに舞台を用意した。

そしてそのエースが信頼に応えるべく、実に3度、4度のアタックを繰り出して、「必勝の10㎞」をもたらした。


だからその勝利は必然であった。

ジュリアン・アラフィリップ。決して常に勝ち続ける男ではない。先日のブルターニュ・クラシックでも、チームメートとの2対1の局面に持ち込むことができながらも最後の勝利を目の前で失った。昨年のリエージュ~バストーニュ~リエージュも酷かった。常に期待されながら、その期待に応えられないときも多々あった。

だが、昨年の世界選手権でも、今年のツール・ド・フランスの第2ステージでも、そして今回の世界選手権でも、彼はやっぱり大きな舞台での大きな勝利を、いとも簡単なように見える方法で掴み取って見せる。

彼は完璧ではないけれど、全フランス人が愛するスターであることは間違いがなかった。

そしてそれは、ときに無謀とも思える試みの連続の末に掴み取ることができるものだったのかもしれない。


これはある意味、ワウト・ファンアールトにとっては一つの学びだったのかもしれない。

キャリア最大のプレッシャーと共に迎えた今回の世界選手権。最終局面の彼の動きは、そのプレッシャーに圧し潰されたかのように見えた。

だが、アラフィリップの、常に失敗し続けながらも、期待に応え続けようともがき、そしてときに強く光り輝くその姿は、ファンアールトにとって、ストゥイヴェンにとって、あるいは(残り6㎞でようやく集団から飛び出した)トム・ピドコックにとってすら、一つの大きな指標となりうるものかもしれない。


おめでとう、ジュリアン・アラフィリップ。素晴らしいレースをありがとう。

そしてワウト・ファンアールト、今回のこの敗北を糧に、彼がより大きな達成を近い将来に掴み取ることを期待している。

男子エリートロードレースリザルト


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