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クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2021 第1ステージ

ツール・ド・フランス前哨戦として最も注目される、フランス南東部ドーフィネ地方を舞台とした8日間のステージレース。

今年は昨年総合ワンツーのタデイ・ポガチャルとプリモシュ・ログリッチは出場を回避したものの、ゲラント・トーマス&テイオ・ゲイガンハート&リッチー・ポートのトリプルエース体制で挑むイネオス・グレナディアーズや、ミゲルアンヘル・ロペス&アレハンドロ・バルベルデ&エンリク・マスのこれまたトリプルエースのモビスター・チームなど、ツール・ド・フランス注目の選手・チームは揃っている。

果たして各チーム、選手たちのコンディションはいかに?


第1ステージはオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏、ピュイ=ド=ドーム県のイソワール(Issoire)を発着する周回コース(181.8㎞)。

全部で7つの山岳ポイントを擁し、最後の山頂からフィニッシュまでも12.1㎞しかない。

スプリントで決着する可能性はあるが、ピュアスプリンターが残るのは難しいかもしれない。そんな予想の難しいステージとなった。


アクチュアルスタート直後に4名の逃げが形成。

パトリック・ガンパー(ボーラ・ハンスグローエ)
ブレント・ファンムール(ロット・スーダル)
イアン・ガリソン(ドゥクーニンク・クイックステップ)
シリル・ゴチエ(B&Bホテルス・p/b KTM)

ワールドツアーチームが多めではあるが、ゴチエ以外のその3名の平均年齢は23.3歳と非常に若い。初日逃げによる山岳賞ジャージ獲得というチャンスを目指し、新時代の旗手たちが丘陵地帯に挑む。

残り116.1㎞。最初の4級山岳コート・ド・ベルゴンヌ(登坂距離1.2km、平均勾配6.7%)はファンムールが先頭通過。まずは1ポイントを獲得する。

続いて周回コースに突入し、その最初の3級山岳コート・ド・シャトー・ド・ブロン(登坂距離3.2km、平均勾配6.8%)も同様にファンムールが先頭通過し、ゴチエが2番通過。

直後(2.6km先)に用意された4級山岳コル・ドゥ・ラ・クロワ・デ・ギャルド(登坂距離1.6km、平均勾配5.1%)もファンムールが先頭通過し、これでファンムールは山岳賞ポイントを4ポイントにまで積み上げていった。


残り54.9㎞地点から2周目の3級山岳コート・ド・シャトー・ド・ブロンに突入する。集団の先頭はUAEチーム・エミレーツが強力に牽引し、ペースアップ。元々5分近く開いていたタイム差が、一気に削られていって3分台前半に迫っていく。

その勢いの中で、この日の優勝候補とも目されていた元世界王者マッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード)も脱落。同チームのゼッケンNo.1をつけるミッヘル・リースも同様に遅れていった。

2周目のシャトー・ド・ブロン、そしてクロワ・デ・ギャルドも共にファンムールが先頭通過。7ポイントに。

残り49.1㎞地点で2周目の山頂を超えた時点でタイム差は3分10秒に。


3周目に突入すると今度は集団をイネオス・グレナディアーズが猛牽引。イツリア・バスクカントリーで一時総合リーダージャージを着ていたブランドン・マクナルティ(UAEチーム・エミレーツ)が何かしらのトラブルで遅れ、やがて集団復帰するものの、このとき誰もチームメートが助けに降りてくることがないことが気になっていた。

そして残り17.8㎞地点から始まる3周目(そして最後の)シャトー・ド・ブロンに突入。ここでついにマクナルティが脱落。やはり、調子が悪かったのか。

先頭でも動きが。ここまですべての山岳ポイントを先頭通過してきて明らかに調子の良い様子を見せていたファンムールがついに伴走者たちをすべて突き放して独走を開始。

メイン集団からはカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ)などがハイ・ペースを刻むメイン集団からショーン・ベネット(キュベカ・アソス)ヴァランタン・マデュアス(グルパマFDJ)フェリックス・ガール(チームDSM)などが次々とアタックしては吸収されるを繰り返していたが、最後の4級山岳クロワ・デ・ギャルド通過時点(残り12.1㎞)で先頭ファンムールとメイン集団とのタイム差は50秒。

メイン集団の先頭にはイネオスだけでなくモビスターやグルパマFDJ、バイクエクスチェンジなどが出てくるが、タイム差はなかなか縮まらない。

残り5㎞。50秒差。

残り2.5㎞。47秒差。

山岳賞ジャージを10ポイント独占して特別賞ジャージをすでに確定させていた男が、もう1つの栄光に向けて迷いなく突き進んでいた。


そもそも彼は、わずか1週間前も、同様に逃げ切り勝利――そして、プロ初勝利――のチャンスをほぼ確実なものとしていた。

しかしこのとき、彼は最後の最後でまさかの誘導ミス?によりコースミス。せっかくのチャンスを無にしてしまっていた。


だが、神様はちゃんと見ている。

このときの彼の走りは決してそのときだけの奇跡ではなかった。今日、彼の走りは間違いなく誰よりも最強であり、そして1週間前に失った栄光よりも遥かに大きな栄光を、この23歳の若きベルギー人の手にもたらしてくれた。

第1ステージ


集団先頭はツール・ド・ロマンディでも丘陵地帯で絞り込まれた集団の中でスプリント勝利を果たしているコルブレッリが制する。以下、ヴァントゥリーニやストゥイヴェンなど、荒れた展開に強いスプリンターたちが続くが、その中でオーストラリアの若手期待の星グローブスが5位につけているのが意外。ピュアスプリンタータイプと思っていたので、ちょっとした驚きであった。

まずは特別賞ジャージを独占したファンムール。このあとどこまでこれらのジャージを護り切ることができるのか。というか、山岳賞のために、マイヨ・ジョーヌが逃げるなんてことが・・・さすがに難しいかな?


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