見出し画像

ジロ・デ・イタリア2022 第10ステージ

2回目の休息日を挟んで、今年のジロ・デ・イタリアの2週目が始まる。その開幕ステージは平穏なリカバリーステージとなった・・・ラスト20㎞までは。

最後の30分間を彩った激戦の果て、歴史的なマッチアップが繰り広げられた196㎞の丘陵ステージを振り返る。


アクチュアルスタート直後にすぐさま3名の逃げが出来上がる。

ローレンス・ナーセン(AG2Rシトロエン・チーム)
マッティア・バイス(ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
アレッサンドロ・デマルキ(イスラエル・プレミアテック)

マリア・ローザを保有するトレック・セガフレードはこの日の牽引の責任を放棄。ステージ優勝を狙うアルペシン・フェニックスとアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオが中心となって牽引するメイン集団は、最大で6分ほどのタイム差をつけていたものの、残り30㎞台に入るころにはそのタイム差を1分を切るようになる。

残り32.1㎞で先頭からデマルキが飛び出す。昨年は山岳ステージで悔しくも2位に終わるがマリア・ローザを着用。キャリアも晩年に迫りつつある逃げスペシャリストが、この日もわずかなチャンスを目指して抜け出した。

が、これも残り21㎞で捕まり、先頭は1つに。続く4級山岳(登坂距離1.7㎞、平均勾配6.1%)の登りから、前半の無風のような平穏な展開とは打って変わった、出入りの激しい混沌とした打ち合いが連発されていく。


まず残り11.8㎞。ヨス・ファンエムデンに牽かれた2019年ツール・ド・ラヴニール覇者トビアス・フォス(ともにユンボ・ヴィズマ)がアタック。

この抜け出しは残り11㎞でアルペシン・フェニックスのアシストが牽く集団によって吸収されるが、残り10㎞からはパヴェル・シヴァコフが集団の先頭を牽引してペースアップ。2番手にリチャル・カラパス、その後ろにマチュー・ファンデルプールという、危険な体制。

さらに残り9.3㎞のアレッサンドロ・コーヴィ(UAEチーム・エミレーツ)がアタック。これはアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオのドメニコ・ポッツォヴィーヴォが集団の先頭に立って追いかけたことで残り8.3㎞で吸収。この一連の動きの中でアルノー・デマールやジャコモ・ニッツォーロといったスプリンター勢は全滅してしまった。


残り7.8㎞。ルーカス・ハミルトン(チーム・バイクエクスチェンジ・ジャイコ)が先頭で加速。このカウンターでヴィンツェンツォ・ニバリがアタックするも、これはマチュー・ファンデルプールが自ら捕まえる。

そして残り6.5㎞。アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオの選手がコースミスをしかけ集団が混乱。その隙に、一昨日のブロックハウスで大きく遅れ総合争いから早くも脱落してしまったサイモン・イェーツが飛び出した。

これはすぐさまダヴィデ・フォルモロ、マチュー・ファンデルプール、ジュリオ・チッコーネらが捕まえる。そしてその精鋭4名の中から、残り4.7㎞でファンデルプールがアタックした! 追いすがろうとしたフォルモロもやがて諦め、ファンデルプールが先頭で独走を開始した。


この、危険な状況を振り出しに戻したのがビニヤム・ギルマイ。自ら集団の先頭に立って全力加速。ここでファンデルプールを逃がせば、取り返しのつかないことになると理解していた彼は、わき目も振らずにこれを捕まえにかかったのだ。

そして残り3㎞でファンデルプールは引き戻され、さらにリチャル・カラパス、マグナス・コルトニールセンなど、強力な選手たちによるアタックが鳴りやむことがなかった。


まさに、クラシックレースのような様相。そのすべてが抑え込まれたうえで、ラスト1㎞。ボロボロに傷ついた小集団の中でのスプリント決戦が開幕する。

残り600mまで集団の先頭を牽引したのはアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ。そこからはボーラ・ハンスグローエがバトンタッチするが、まだ誰も本気の加速は開始しない。

残り450m。集団の右側にいたドメニコ・ポッツォヴィーヴォがスプリントを開始。このすぐ後ろにマチュー・ファンデルプールがつき、さらにビニヤム・ギルマイがこのファンデルプールの右隣についた。

先に仕掛けたのはギルマイの方だった。残り350m。すぐさまファンデルプールもその後輪を捉える。

一度はギルマイの横に並び立ち、勢いでは勝っていたように思えるファンデルプール。だが、ギルマイはそれでもなお、失速することなくまっすぐ、前だけを見据えて加速を続けた。

最後は、ファンデルプールが先に折れた。項垂れ、そして諦めた彼は先行するギルマイに右手を掲げ、その力を讃えるサムズアップを示した。

そこで初めてギルマイはファンデルプールを見やり、前を向き、両腕を天に掲げ、歓喜を爆発させた。

この日の勝利と中間スプリントポイントでの6着によって得た合計28ポイントを加算して、ポイント賞ランキングにおける首位アルノー・デマールとのポイント差はわずか3ポイントにまで迫ったギルマイ。

第2週はこのギルマイ向きの丘陵ステージと、デマール向きの平坦ステージとが交互にやってくる週であり、マリア・チクラミーノを巡る争いは、この第2週に最高潮に達することになるだろう。

明日はデマール向きの平坦スプリントステージ。マリア・チクラミーノを守るためには、取りこぼしは許されない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?