見出し画像

イツリア・バスクカントリー2021 第2ステージ

スペイン・バスク地方で開催される、パンチャーとオールラウンダーのためのステージレース。

今年はタデイ・ポガチャル、プリモシュ・ログリッチ、アダム・イェーツといった今年の「3強」が初めて激突するレースであり、今年最注目の1週間である。


第2ステージはサリャからセスタオまでの154.8km丘陵ステージ。

アップダウンの激しいルートを辿りつつ、最後はフィニッシュ前14㎞地点に頂上が置かれたラ・アストゥリアーナ峠(登坂距離7.6㎞、平均勾配6.2%)を越えつつ、長い下りと2㎞の平坦、そして短い登りのフィニッシュへと辿り着く。

実にイツリア・バスクカントリーらしいパンチャー向けステージで、前回大会の2019年大会でジュリアン・アラフィリップやマキシミリアン・シャフマンが大暴れしたようなタイプのレイアウトである。

コースプレビューはこちらから


逃げは7名。

クエンティン・ヘルマンス(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
マーティン・トゥスフェルト(チームDSM)
ケヴィン・ヴェルマーケ(チームDSM)
ベン・ガスタウアー(AG2Rシトロエン・チーム)
ヨン・イリサール(カハルラル・セグロスRGA)
オスカル・カベド(ブルゴスBH)
ミケル・イツリア(エウスカルテル・エウスカディ)

メイン集団はユンボ・ヴィスマ、次いでモビスター・チームが牽引し、タイム差は最大で4分台にまで開いたものの、残り40㎞地点で2分を切るペースで減少していった。

勝負所のラ・アストゥリアーナ峠へと向かう下り坂で集団はペースアップ。2~3名しか横に広がれないような非常に狭い道を目前とした中での位置取りの激化であった。この中で、ボーラ・ハンスグローエのウィルコ・ケルデルマンとコフィディス・ソルシオンクレディのギヨーム・マルタンが落車の影響を受けて遅れる場面があり、マルタンは最終的に集団に復帰できず2分以上の遅れを喫することとなる。


逃げはラ・アストゥリアーナ峠への登りを前にしてすべて吸収。

そしてこの登りで、大きくレースが動き始める。

残り19㎞。まずはグルパマFDJのエース、ダヴィド・ゴデュがアタック。ここにタデイ・ポガチャルが食らいつく。

しばらく2人が抜け出す展開が作られるが、やがてイスラエル・スタートアップネーションのマイケル・ウッズが先導し、そこにプリモシュ・ログリッチが追随するような動きの中で集団に捕まえられる。

残り16㎞でマキシミリアン・シャフマンがアタックし、再びポガチャルが反応。

これが捕まえられたあとに再度ダヴィド・ゴデュが動いてすぐに引き戻されると、シャフマンが2度目のアタックを繰り出した。

そしてここでログリッチ、動く。ポガチャルは今度は自ら反応せず、チームメートのブランドン・マクナルティにチェックを行わせる。

結果、集団からはシャフマン、ログリッチ、マクナルティ、そしてEFエデュケーション・NIPPOのコロンビア王者セルジオ・イギータの4名が抜け出す格好となった。


雨に濡れた路面のラ・アストゥリアーナからの下りはリスクが高く、シャフマンとログリッチは安全を優先して早々に集団に引き戻された。

一方のイギータとマクナルティはしばらく二人だけで先行したものの、下り終えたあとの2㎞の平坦区間にてやがて吸収され、集団は一団のまま登りフィニッシュに向けて加速を開始していった。


ここで、アスタナ・プレミアテックの波状攻撃。まずはオマール・フライレのアタック、そしてこれが吸収されたあとの、アレックス・アランブルのカウンターアタック。

ともにバスク出身の2人による攻撃の末に、バスクの若き才能アランブルが集団から30秒以上のタイム差を開いて独走。

最後の登りフィニッシュでは幾分か減速してしまったものの、最後まで集団に追いつかせることなく、見事なワールドツアー初勝利を飾った。


1995年9月生まれの25歳。2019年まではスペインのプロコンチネンタルチーム、カハルラルに所属し、今日と同じビスカヤ県を舞台にしたシルキュイ・ド・ゲチョで勝つなど、激坂含む登りスプリントに強い男である。

2020年からはアスタナに所属。トップカテゴリにおいても登りスプリントフィニッシュでは常に上位にその名を並べてきていた有望な男が、ついに世界最高峰の舞台、それも地元バスクのレースで、栄光を掴み取った。

第2ステージ


2位は同じくバスク出身のフライレが入り込み、アスタナにとって今シーズン最初の勝利を、見事なワンツーで決めることとなった。

総合争いは激しい動きはあったものの基本的にはノーコンテスト。ポガチャルが区間3位に入りボーナスタイム4秒分だけを、ログリッチから奪い取った。

ただしイネオス・グレナディアーズのリチャル・カラパスが登りでの落車によって遅れ、総合争いからは脱落。

昨日の個人タイムトライアルでテイオ・ゲイガンハートが大きなビハインドを抱えているので、トリプルエース体制と見込まれていたイネオスは早くもアダム・イェーツの単独エース体制に。

ただ、逆にいえばチームとしても戦略が明確になり、ゲイガンハートとカラパスという強力なアシストをアダムが手に入れたことも意味し、ユンボやUAEにとってはむしろ脅威となることだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?