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UAEツアー2022 第3ステージ

第2ステージはこちらから

今年最初のワールドツアー、UAEツアーがいよいよ開幕。タデイ・ポガチャル、アダム・イェーツ、アレクサンドル・ウラソフ、マーク・カヴェンディッシュ、サム・ベネット、ディラン・フルーネウェーヘンなど、世界トップライダーたちが集まる豪華な7日間。

第3ステージは「最小の首長国」アジュマーン首長国の首都アジュマーンを舞台とした9㎞ド平坦短距離個人タイムトライアル。

今期、ここまで2回登場している短距離個人TTで両方とも優勝している世界王者フィリッポ・ガンナがこの日も強さを見せつけるか。

総合争いにおいても大きな影響を及ぼしうる重要な1日である。


序盤でトップタイムを記録したのは8番出走のミッケル・ビョーグ(UAEチーム・エミレーツ)。2017年~2019年の3年連続でU23個人TT世界王者に輝いているデンマークの天才。この日も強さを見せつけて、その時点で最速であったマティアス・ノルスガード(モビスター・チーム)を15秒上回っての暫定1位に躍り出た。

さらに、直後に出走したアレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)も1秒遅れという驚異的な記録を叩き出す。昨年のロシアTT王者であり、ブエルタ・ア・エスパーニャ初日のTTでも10位と、世界トップクラスのオールラウンダーたちに食らいつかんばかりのTT能力向上を見せつつある男だ。

そして、ビョーグ出走から6分後の14番手で飛び出したシュテファン・ビッセガー(EFエデュケーション・イージーポスト)。昨年大ブレイクした新世代のTTスペシャリストであり、昨年もこのUAEツアーで区間2位という活躍を見せている23歳のスイス人は、4.5㎞地点の中間計測地点ではビョーグの記録を11秒更新し、さらにフィニッシュ地点では24秒更新と圧倒的な強さを見せつける。追い風基調の前半部分は時速60㎞。最終的な速度も時速55㎞と、ビョーグを2㎞/hも上回る圧倒ぶりであった。


このビョーグを倒せるとしたらやはりこの男。昨年同じUAEツアーの個人TTでビッセガーを倒し優勝している世界王者フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)。短い距離という意味ではビッセガーに有利だが、体重が純粋にパワーに繋がるド平坦TTという意味ではガンナに有利なこの日のレイアウト。前半4.5㎞は・・・ビッセガーが1秒遅れの暫定2位。そして向かい風基調となる後半は?

最終的には、まさかの7秒遅れでのフィニッシュ。向かい風というコンディションが、パワーを生み出す巨体には逆に不利になったのか? ビッセガーは1年越しのリベンジを果たした。

その後も、タデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)、トム・デュムラン(ユンボ・ヴィスマ)と有力勢が次々と出走するもビッセガーのタイムには届かず。

新鋭シュテファン・ビッセガー、今期初勝利。そしてチームとしても、今シーズン初勝利。同国の大先輩シュテファン・クンも未だ届かぬ世界の頂点に向けて、さらなる躍進を遂げることができるか。

そして総合争いでは、先ほど名前を挙げたウラソフが頑張っているほか、優勝候補でもあり昨年のツール・ド・フランスの個人TTでも優勝しているタデイ・ポガチャルが18秒遅れの4位。これを、東京オリンピック個人TT銀メダリストのトム・デュムランが4秒上回る好走を見せる。

チーム・メートのジョアン・アルメイダを4秒上回っているポガチャルは決して遅くはない。むしろ新型コロナウィルス明けでコンディションを不安視されていたポガチャルとしてはかなり良い滑り出しができたとは思うが、それすらも上回ったトム・デュムランの走りは賞賛に値する。今年、ジロ・デ・イタリアで総合エースとしての復帰を目指す彼にとって、まずはこのUAEツアーでしっかりと結果を出したいところ。明日の山岳はいかに?

そしてTOP10に入っていないメンバーとしては昨年総合3位のアダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ)が29秒遅れの総合12位。ポガチャルからは11秒遅れと、かなりビハインドを抑え込むことに成功した。昨年は13㎞とはいえ34秒差もつけられていたことを考えると、調子の良さはポガチャル以上かもしれない。

デュムラン、ポガチャル(アルメイダ)、ウラソフ、イェーツといった今大会最大の優勝候補たちが比較的団子で終わった一方、そこに挑戦すべきダビ・デラクルス(アスタナ・カザフスタンチーム)、ファウスト・マスナダ(クイックステップ・アルファヴィニル)、ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)、ロマン・バルデ(チームDSM)などはデュムランから20~30秒差をつけられてしまう(下記参照)。

トム・デュムランを基準とする総合有力勢のタイム差

昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合5位で今大会も期待していたジーノ・マーダーは45秒も遅れ、総合争いにおいては絶望的とも言えるビハインドを抱える。

先日のツアー・オブ・オマーン総合優勝のヤン・ヒルトも47秒遅れと、TTの弱さが如実に出る形に。もう一人のエース、昨年のブエルタでマイヨ・ロホも着用しているレイン・ターラマエもほとんど変わらず、アンテルマルシェが存在感を出すためには山岳でしっかりと稼ぐ必要がありそうだ。



TTの得意なクライマーと苦手なクライマーとで明暗が分かれたが、結論を繰り返すと元々の総合優勝候補たちはほとんど団子状態。

この状態のまま、いよいよ今大会最初の山頂フィニッシュへと突き進むこととなる。


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