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ノケレ・コールス2021

石畳の短い登り「ノケレベルグ」を全部で4回登らせるレイアウトで、最後のこの登りの頂上にフィニッシュラインが引かれている。

それだけ見れば「登りスプリント」レースのようにも見えるが、実際にはその前の下りの勢いを利用して一気に登ることができるため、必ずしも登れるスプリンターに有利というわけではない。

とはいえ石畳レースでもあり、トレインを形成して勝敗を決める純粋なスプリントワンデーとはまた違う。

まさに「クラシック・スプリンター」たち向きのレースと言えるのがこのノケレ・コールスだ。


しかし今年はそんな「例年通り」の展開からはやや異なる結果に。

スタートから50㎞ほど消化してようやく生まれた逃げは8名。

アントニー・ジュリアン(AG2Rシトロエン・チーム)
セバスチャン・グリニャール(ロット・スーダル)
ティボー・フェラッス(B&Bホテルス・p/b KTM)
サミュエーレ・ゾッカラート(バルディアーニCSF・ファイザネ)
ルドヴィク・ロベート(ビンゴーワル・ワロニーブリュッセル)
アーロン・ファンパウク(スポートフラーンデレン・バロワーズ)
ワード・ファンホーフ(スポートフラーンデレン・バロワーズ)
ダミアン・ゴダン(チーム・トタル・ディレクトエネルジー)

ここに元々タルタレット・アイソレックスのアルバニア王者イルベル・セファも乗っていたが、彼は早々に脱落。

悪くない面子ではあるものの、最後まで逃げ切るには厳しいとも言えるメンバーで、そもそもこのノケレ・コールスは過去逃げ切りがほとんどないようなレースだった。

タイム差は順調に縮小していき、残り40㎞で2分半、残り10㎞で30秒ほど。決して、捕まえられないタイム差ではなかった。


しかし、集団の中でも残り35㎞で落車が発生し、集団がやや分裂気味に。

残り11.4㎞地点ではイスラエル・スタートアップネーションのセップ・ファンマルクがアタックし、そこにヨセフ・チェルニーや3名のキュベカの選手などを含めた20名近い小集団が抜け出すなど、やや混乱した展開に。

その隙に逃げ集団から抜け出したロベートとゴダンの2名が、思ったよりも快調なペースで集団とのギャップを維持し続ける。


残り5㎞で先頭2名と追走のイーサン・ヘイターとルカ・モッツァート、逃げ残りのゾッカラートの3名が14秒差。

そしてメイン集団はこの時点で30秒は後方にいた。


残り2.7㎞でメイン集団とのタイム差は21秒。これはいける!

そして残り2.1㎞でロベートがペースアップ。ゴダンが離れ始める。

いよいよ最後のノケレベルグに。

登坂距離400m。平均勾配4.3%。ラスト300mから200mまでの平均勾配が7.5%のパンチ力のある登り。

普段はそのスプリントで各スプリンターが足を削りながら勝負し合う白熱の登りではあるのだが、この日そこを先頭で駆け抜けたのはたった一人だった。

最後の瞬間まで、その頭を必死に左右に振りながら限界を超える勢いで踏み続けるロベート。

ゴダンもゴダンで最後まで諦めることなくペダルを踏みつけていたが、その背後にはすぐ大集団が迫ってきていた。

それでも、ロベートたちを捕まえることは叶わなかった。

最後はロベートもふらふらになりながらゆっくりとラインを越える。

あまりの疲労に、ガッツポーズを取ることもままならなかったが、2年前のセッティマーナ・コッピ・エ・バルタリ第4ステージでの勝利以来のプロ2勝目である。そういえばあのときも、逃げ切りだった。

7.ノケレ・コールス

ロベートのチームメートで今大会最大の優勝候補の1人だったティモシー・デュポンはフィニッシュ直前に単独落車。良いポジションを取れていただけに、残念。

また、今年ドゥクーニンク・クイックステップに驚きの移籍を果たしていたマーク・カヴェンディッシュも落車。最後は5分50秒遅れの84位でフィニッシュする。

さらに、同じドゥクーニンク・クイックステップの若きアタッカー/スプリンターであるヤニク・ステイムルも落車し、即時リタイア。今後が心配である。


リザルトに戻ると、逃げメンバー以外で集団先頭を獲ったのはボーラ・ハンスグローエのジョルディ・メーウス。

先日のパリ~ニースでも、パスカル・アッカーマンの強力なリードアウトを見せていた期待のネオプロが、見事実力を示してくれた形だ。2019年大会(前回大会)の優勝者も、当時ネオプロだったケース・ボル。ボルは今年、パリ~ニース優勝などその戦績を着実に伸ばしているだけに、メーウスもまた、今後やはりわかっていたことだが期待しかない存在である。

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