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2021シーズン最強「クライマー」ランキング

2021シーズンの「全1クラス以上のレース」のTOP10に独自のルールでポイントを付与。その結果出された、今シーズン最も実績を出した「最強クライマー」を発表していきます。

山岳ステージでの成績に絞ったランキングは、UCIワールドランキングとはまた違った結果になっており、なかなか興味深いものに。

ポイント振り分けやレース選択については異論もあると思うが、気になったらコメントなどで!

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20位~11位(名前のみ)

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ツール・ド・フランス総合4位のベン・オコーナーに、4年ぶりのグランツール勝利を果たしたロマン・バルデ、ジロ・デ・イタリア総合2位のダミアーノ・カルーゾなど、確かに今年活躍したクライマーたちが大集合。

逆に今年のジロ・デ・イタリアでいよいよグランツール 総合争いに入り込んでいけるだけのポテンシャルを見せながら、ジロもブエルタも落車リタイアの憂き目に遭ってしまったジュリオ・チッコーネや、シーズン前半は調子良くジロ・デ・イタリア総合4位など成績を重ねるが、後半はイマイチ伸びきらなかったアレクサンドル・ウラソフなど、もっと上位にいけるはずの若手たちの姿も。

いずれも納得の顔ぶれ。これらのトップ選手たちを押しのけてTOP10に入り込んだ選手たちを見ていこう。


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主な成績

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昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで山岳アシストとしての才能を開花させたかと思えば、今年はイツリア・バスクカントリーではプリモシュ・ログリッチと肩を並べるダブルエース的な存在に。そしてログリッチが早期リタイアしたツール・ド・フランスではまさかの総合2位。モン・ヴァントゥの登りでは、今大会唯一ポガチャルを登りで突き放した男となった。

そんなヴィンゲゴーの経歴と活躍の詳細は下記リンクで。


ジョージ・ベネットもチームを去ることもあり、今後、ログリッチに次ぐセカンドエースはこのヴィンゲゴーが最右翼となりそう(クスは安定感とTT能力が課題)。

来年のツールは地元デンマーク開催ということもあり、気合も人一倍だろう。


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主な成績

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昨年まさかのマリア・ローザ14日間着用を果たしたポルトガルの新星。今年もジロ・デ・イタリアで序盤は苦しみレムコ・エヴェネプールのアシストに回る姿もありながら、そのとき失ったタイムを後半にかけてしっかりと取り戻し最終的には総合6位。いや、強。

とくに鋭いアタックを繰り出すサイモン・イェーツと好対照で、シッティングのまま一定ペースで登り、遅れてもやがて追いついてくるその走りは、全盛期トム・デュムランを思わせる底知れぬ強さを感じ、さらなる進化が楽しみになる。シーズン序盤のUAEツアーなどでは今一歩決定力に欠ける印象があったが、問題なかったようだ。 

来年はUAEチーム・エミレーツに。タデイ・ポガチャルの右腕となるか、セカンドエースとして自身の活躍を狙えるか。いずれにせよ、チーム力不足に悩んでいたポガチャルにとって、この上ない存在であることは間違いない。

「新・最強チーム」で、彼は新たな居場所を見つけられるか。


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主な成績

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シーズン序盤は新型コロナウイルス陽性の影響もありレースに出られず、5月になってようやくシーズンインを果たしたロペス。しかしその後はブエルタ・ア・アンダルシア総合優勝、モンヴァントゥ・チャレンジ優勝と調子を上げていき、ブエルタ・ア・エスパーニャではエンリク・マスとの見事なダブルエースを実現。ステージ優勝も果たし、このまま2015年ツール以来となるモビスターによる表彰台2位・3位制圧もありうるか、と思っていたのだが・・・。

結局、あのときロペスのレース離脱の是非は分からない。ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージ。残り60㎞を切ったところにある1級山岳で、総合6位アダム・イェーツのアタックに総合首位プリモシュ・ログリッチや総合2位エンリク・マス、総合4位ジャック・ヘイグらが反応する一方、総合3位ロペスは動かなかった。

それは動かなかったのか、それともすぐさまチームの指示で動くなと言われたのか。いずれにせよ目の前にまで来ていた総合表彰台がするりと手の中から零れ落ち、ロペスはすべてを放棄した。そして9月いっぱいで、モビスター・チームとの契約は破棄。アスタナ・カザフスタンチームへの「復帰」となった。

モビスター新ダブルエースへの希望を抱いた次の瞬間にそれが瓦解してしまったのは残念だが、ニバリがいるとはいえフルサンもウラソフもいなくなり、アスタナのほぼ単独エースとして走ることは間違いない。

その走りに再び期待していきたい。


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主な成績

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昨年イル・ロンバルディアでの怪我以降長期離脱からの復帰初レースとなるレムコ・エヴェネプールも、同じく昨年ツールのリタイアでの背中の痛みにまだ不安の残るエガン・ベルナルも総合優勝候補と呼ぶには不安要素が大きかった結果、直前の前哨戦ツアー・オブ・アルプス総合優勝も果たしているこのサイモン・イェーツが今年のジロ・デ・イタリアの総合優勝候補最右翼であった。

しかし、第1週から好調さを見せるベルナルやエヴェネプールらとは裏腹に、サイモンは思うような走りを見せられずずるずるとタイムを失っていく。のちに彼が語ったところによれば、この前半戦は実際、体調が思わしくなかったらしい。

だが第2週後半から段々とその勢いを取り戻す。ゾンコランにフィニッシュする第14ステージは、最後にベルナルに追い抜かれたものの、鋭い一撃はそのベルナル以外をすべて突き放した。

第16ステージでは再び悪天候により失速するが、続く第17ステージでは強烈なアタックの連続でいよいよベルナルも突き放す。

そして第19ステージ。またもベルナルを翻弄した走りで彼はついに勝利を掴む。2018年のあの大ブレイクしたジロ・デ・イタリア以来のジロ勝利である。


最終的には総合3位でフィニッシュ。元々の期待度が高かっただけに、あまり良い結果ではなかったと思われがちなところもあるが、それでも彼が苦しみ続けながらも挑戦し続けた末のこの結果は個人的には満足している。

また、最近のオールラウンダー大流行の傾向の中で、決して安定はしていないものの鋭い一撃は誰よりも強いというサイモンの走りは、非常に魅力的なものに映る。かつて、ナイロ・キンタナの走りに興奮していた身としては、懐かしさすら覚える。

決して最強ではないだろう。このあとももしかしたら、ジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスの頂点は掴み取れないかもしれない。

だがその鋭い山岳登坂はこれからも私たちを魅せ続けてくれるであろう。

願わくば、彼に無理をさせすぎることのないよう、チームのセカンドエースがしっかりと成長し、彼を支えてくれることを。


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主な成績

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2017年のブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージ。アルベルト・コンタドールのキャリア最後の山岳ステージ、アングリル頂上フィニッシュで、彼が運営する育成チーム出身であったこのエンリク・マスは、チームが異なる中でさりげなくコンタドールをアシストし、彼のメモリアルな勝利を手助けした。

このことに気を良くしたコンタドールが彼のことを自分の後継者として褒め称えたが、翌年のブエルタ・ア・エスパーニャでいきなりの大躍進となる総合2位。本当にコンタドールの後継者たりうるか、と世界の注目が集まった。

だが、一流ライダーにとって、「そこ」からがキャリアの分かれ目である。継続して高成績を叩き出し続けるか、それともその後も、悪くはないものの突き抜けたものがないまま時を過ごしていくか・・・エンリク・マスという男は、後者に位置付けられる選手であるかのように思われた。

ゆえに、昨年のモビスター移籍も、期待半分、不安半分というのが正直なところだった。結果はツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャの総合5位。素晴らしい成績だが、グランツールの表彰台と4位以下は大きな差がある。彼はもしかしたらもう、グランツールの表彰台には届かずに終わるのかもしれない、とも。

今年も不安はあった。4月のボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナでは2年ぶりの勝利を遂げたものの、6月のモンヴァントゥ・デニヴレチャレンジではチームメートのミゲルアンヘル・ロペスが強い独走を見せて勝利する中、後方でオスカル・ロドリゲスにほぼツキイチの状態でついていったにも関わらず、最後は突き放されての3位。悪くないけど、どこか勝ちきれない。今年もそのままで終わるのか、と。

だが、ツール・ド・フランスでは、ポガチャル、ヴィンゲゴー、カラパスの3強には全く届かないような様子は見せたものの、それでも第18ステージでは終盤まで食らい付いてラスト1㎞で果敢なアタックなどを見せつけつつ、3強に続く4位を獲得。あのブエルタ以来の輝きとも思えるものを感じた瞬間だった。

そしてブエルタ・ア・エスパーニャ。

このときのマスは間違いなく強かった。もちろん、プリモシュ・ログリッチとの差は歴然であった。激坂でも登坂でも常に彼の後塵を拝し、一度も力で彼を突き放すことはできなかった。

それでも、誰もがついていけないその走りに食らい付き、ミゲルアンヘル・ロペスとのダブルエースを見事に演じ、総合2位を守り切った。

それは3年前と同じ総合2位でしかないが、それでも、あのときとはまったく意味合いの違う、本当に強い総合2位を掴み取ることに成功した。


良き相棒であったミゲルアンヘル・ロペスもマルク・ソレルもチームを去った。アレハンドロ・バルベルデもさすがに第一線に居続けるわけにはいかない。スペインチームの未来は、この男に託されることとなった。

「コンタドールの後継者」の物語は、ここから真に幕を開けるのである。


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