クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2021 第7ステージ
「ツール・ド・フランス前哨戦」クリテリウム・ドゥ・ドーフィネもいよいよクイーンステージ。コース中盤に超級山岳を登りつつ、ラストも超級山岳山頂フィニッシュ。
ここまで6ステージにわたりほぼほぼ動かなかった総合勢による争いがこの日一気に巻き起こる。
この日もまた、アクチュアルスタート直後から激しいアタック合戦。
時速50㎞を超えるペースから逃げが生まれては吸収されてを繰り返していく。
まもなく2時間が経過しようとしていた残り100㎞地点でようやく逃げらしい逃げが出来上がる。
まず出来上がったのは以下の5名。
アレクシー・ルナール(イスラエル・スタートアップネーション)
マルコ・ハラー(バーレーン・ヴィクトリアス)
マーティン・セルモン(チームDSM)
ピエール・ローラン(B&Bホテルス・p/b KTM)
フランク・ボナムール(B&Bホテルス・p/b KTM)
さらに10名の第2集団が形成され、先頭5名に対し40秒程度の差で追走を仕掛けている。
ミケル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・NIPPO)
ローソン・クラドック(EFエデュケーション・NIPPO)
ホルヘ・アルカス(モビスター・チーム)
ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ)
ワレン・バルギル(アルケア・サムシック)
ステフ・クラス(ロット・スーダル)
マシュー・ホームス(ロット・スーダル)
ミッケル・ビョーグ(UAEチーム・エミレーツ)
ケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)
マーティン・トゥスフェルト(チームDSM)
メイン集団は3分10秒差。総合リーダーのアレクセイ・ルツェンコ率いるアスタナ・プレミアテックが集団牽引。
先頭はいよいよ、この日の最初の山場である超級山岳コル・デュ・プレ(残り60.9㎞地点、登坂距離12.6km、平均勾配7.7%)に突入する。
登りの途中で先頭集団・追走集団からは次々と選手が零れ落ちていき、その中には山岳賞ジャージを着るマシュー・ホームスの姿も。
そして第2集団と先頭集団とがジョインし、超級山岳の山頂を先頭通過したのは――このホームスを8ポイント差で追いかけていた山岳賞2位のローソン・クラドックであった。
これで一気に15ポイントをゲット。ホームスを抜いて山岳賞首位に躍り出た。
超級山岳を通過し、次なる2級山岳コルメ・ド・ローゼレン(残り48.6㎞地点、登坂距離5.7㎞、平均勾配6.5%)に向かう中で先頭は以下の10名に絞り込まれる。
ミケル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・NIPPO)
ローソン・クラドック(EFエデュケーション・NIPPO)
ホルヘ・アルカス(モビスター・チーム)
ステフ・クラス(ロット・スーダル)
マルコ・ハラー(バーレーン・ヴィクトリアス)
ミッケル・ビョーグ(UAEチーム・エミレーツ)
ケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)
マーティン・トゥスフェルト(チームDSM)
ピエール・ローラン(B&Bホテルス・p/b KTM)
フランク・ボナムール(B&Bホテルス・p/b KTM)
メイン集団はこれを3分44秒差で追いかける。
2級山岳もクラドックが先頭通過。山岳賞ポイントを33ポイントに積み増す。
その後の下りで先頭はヴァルグレン、アルカス、ハラー、ビョーグ、トゥスフェルトの5名。
40秒差でクラドック、エリッソンド、ローランの3名が追いかける。
メイン集団は3分差。
いよいよ、最後の超級山岳ラ・プラージュ(登坂距離17.1km、平均勾配7.5%)に突入する。
17㎞の長い登りの間ひたすら7%以上の勾配が続く厳しい登り。
ここまで総合上位に常に名前を乗せ続けていたチームDSMの若き才能イラン・ファンワイルダーも早々に遅れる。まだ本格的な山岳は厳しい様子。
先頭ではヴァルグレンだけが生き残り、そこに追いかけていたエリッソンドとローランが追いつき、やがて残り12㎞地点でローランがアタック。エリッソンドもこれに追い付き、最後はフランス人2人旅となる。
集団はモビスター・チームのカルロス・ベローナが牽引。その後ろにはアレハンドロ・バルベルデ、ミゲルアンヘル・ロペス、エンリク・マス。
残り11㎞でギヨーム・マルタン(コフィディス・ソルシオンクレディ)が脱落。残り10.7㎞でローランとエリッソンドも捕まえられる。
ベローナがひたすら引き倒し、集団からはさらにパトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグローエ)、ベン・ヘルマンス(イスラエル・スタートアップネーション)などが脱落し、一気に20名程度にまで絞り込まれる。
そして残り9.1㎞でベローナが終了し、先頭に立ったバルベルデが全力で牽引する。今日は完全にアシストの姿勢のようだ。
このとき一度、ステフェン・クライスヴァイク(ユンボ・ヴィスマ)も遅れる。イネオスもすでにテイオ・ゲイガンハート、リッチー・ポート、ゲラント・トーマスの3名だけに。
残り8.5㎞。バルベルデが終了し、先頭は総合リーダージャージを着るアレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック)に。
このタイミングでリッチー・ポートがアタック。ここにモビスター・チームのエンリク・マスが食らいつき、さらにセップ・クス(ユンボ・ヴィスマ)、マーク・パデュン(バーレーン・ヴィクトリアス)も反応する。
ユンボ・ヴィスマ、イネオス、モビスターがそれぞれ選手を出したことで、メイン集団は総合2位のヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック)がルツェンコのために牽引する。
メイン集団は14名ほどに絞り込まれ、ナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック)、ルイ・メインチェス(キュベカ・アソス)なども一度ここで脱落する。
残り7.8㎞。先頭からさらにパデュンがアタックし、クスだけがこれに食らいつく。ポートとマスは10秒ほど離されて追走。先頭から30秒程遅れてルツェンコやトーマスのいるメイン集団。
残り4.7㎞。さらにパデュンがクスを突き放し、独走を開始。
常に10%以上の勾配が続く厳しい道のりで、時速20㎞のスピードを保ちながら、ウクライナの若き才能がキャリア最高の勝利を目指して駆け抜けていく。
メイン集団ではバルベルデが残りの力を振り絞ってロペスを牽き上げ、そこにベン・オコーナー(AG2Rシトロエン・チーム)、トーマス、ダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)、ルツェンコなどが食らいついていく。
オコーナーはさらにアタックして単独で抜け出し、次いでロペスもツールに向けて万全であるかのような鋭いアタックで集団から抜け出した。
残り2.5㎞。ポートとマスのもとに、オコーナーとロペスが合流した。
先頭パデュンはすでに20秒以上の差を付けて独走中。
彼の勝利は揺るぎそうにない。
ジロ・デ・イタリアでは19歳のアンドリー・ポノマーが活躍し、今ウクライナは勢いがあると言えるのだろうか。
まだ「8人目」が決まっていないというツール・ド・フランスのバーレーン・ヴィクトリアス。その可能性に王手をかける勝利と言えたかもしれない。
マーク・パデュン。プロ4年目の24歳。これまではデビュー初年度のツアー・オブ・ジ・アルプスでの勝利がキャリアハイであったが、それを更新する大きな勝利となった。
さらに総合争いが白熱するのがこれを第2集団。
マスがロペスのために牽引し、残り1.3㎞で単独2番手だったクスに追い付く。オコーナーはここで脱落。
残り400mでポートが一気に加速し、マスも突き放され、ロペスだけがこれに食らいつく。
しかしウィランガ・ヒルを彷彿とさせるダンシングでやがてロペスも振り払い、昨年のツール総合3位の勢いが一切衰えていないような勢いで、ポートが2番手フィニッシュを果たす。
これにてマイヨ・ジョーヌ獲得。今年のツール・ド・フランスにおける、このポート、トーマス、ゲイガンハートの「トリプルエース」の強さを実感させる瞬間であった。
総合争いではポートがルツェンコに17秒差をつけて首位に。
最終日も山岳ステージとはいえ第7ステージほどではないため、このままポートの総合優勝となる可能性は最も高いであろう。
とはいえ、ジロもそうだったが、何が起こるかまったくわからないのもまた事実。
最終日も最後まで目が離せない展開となることは間違いない。果たしてこの「ツール前哨戦」。結末はいかに?
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