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ティレーノ~アドリアティコ2021 第4ステージ

イタリアの西海岸(ティレニア海)と東海岸(アドリア海)とを結ぶ、「2つの海を結ぶレース」。

第4ステージはテルニからプラティ・ディ・ティヴォまでの148km山岳ステージ。

今大会のクイーンステージであり、2013年にクリス・フルームが優勝したスキーリゾート、プラティ・ディ・ティヴォの山頂フィニッシュとなる。

フルームはその年のツール・ド・フランスで初総合優勝。今年の勝者もまた、その年の勝利を約束されることになるかもしれない。

全ステージのコースや注目選手プレビューはこちら


逃げは5名。

マッティア・バイス(アンドローニジョカトリ)
マルコ・カノーラ(ガスプロム・ルスヴェロ)
バンジャマン・トマ(グルパマFDJ)
マッズ・ウルツシュミット(イスラエル・スタートアップネーション)
エミール・ヴィンイェボ(キュベカ・アソス)

最大で9分以上のタイム差をつけて逃げていた彼らも、残り60㎞を切ったあたりから徐々にそのタイム差を縮められていく。

残り51.8㎞で先頭からヴィンイェボが遅れ始め、残り45㎞でカノーラも脱落する。

先頭はトマ、バイス、シュミットの3名に。

残り15㎞でタイム差はまだ4分。ここで登りが開始。

残り14㎞でトマがアタック。元フランス陸軍チーム所属で、その最終年となる2017年にダンケルク4日間レースやツール・ド・ワロニーなどで勝ちまくったルーラー/クラシックスペシャリスト。トラックレースでも非常に活躍しており、典型的なスピードマンのように思える彼が、この本格的な登りでかなり頑張っている。

残り13㎞でマチュー・ファンデルプールが脱落。どこまで走れるか、また想像を超えてくるのではないか、との期待もあったが、どこかまだ余裕を見せた様子で落ちていく彼の姿からは、翌日に控える「壁」ステージへの意気込みを感じさせた。

残り12㎞でイネオス・グレナディアーズの山岳トレインが発動する。ジロ・デ・イタリアでは常に山岳アシストとして期待される頼れる男、サルヴァトーレ・プッチョを先頭に、フィリッポ・ガンナ、ジョナタン・カストロビエホ、ミハウ・クフィアトコフスキ、エガン・ベルナル、ゲラント・トーマス、パヴェル・シヴァコフの順で並ぶ7名全員で構成されるイネオス山岳トレイン。対するユンボ・ヴィスマはトビアス・フォスだけが、UAEチーム・エミレーツはダヴィデ・フォルモロだけがそのエースの近くには残っていない。

残り11㎞でプッチョが落ちてガンナが先頭に。ここでフォルモロも脱落し、早くもポガチャル単騎に。ポランツ、マイカ、フォルモロと、決してメンバーは悪くないはずなのに、なぜかいつも早々にいなくなるUAE山岳トレイン。何が悪いのか・・・。

残り8.3㎞でガンナが終了。しかしトレインの最後尾にいたはずのシヴァコフの姿がなく、間もなくクフィアトコフスキも音もなく消える。

盤石と思われていたイネオストレインだが、この時点で先頭にはカストロビエホとベルナル、そしてトーマスの3名だけに。

そして残り7.8㎞。ここでまずはベルナルがアタックする。ポガチャルがすぐさま食らいつく。早すぎるアタック、そして背後にトーマスを控えていたことで、これはもしかしたらベルナルのアシストアタックかと判断するライバルがいてもおかしくなかっただろうが、それこそが今年のツール・ド・ラ・プロヴァンスでこのイネオスが見せた戦術だった。


ここでベルナルを逃せば、それこそが取り返しのつかないことになる。そう感じ取ったのかどうかわからないが、ポガチャルは迷うことなくすぐさまこのベルナルの動きに反応した。

残り7.2kmで集団は一旦一つに。今度はゲラント・トーマスがアタック。今度もまたポガチャルが食らいつき、これを捕らえる。

残り6.8kmでもう一度トーマスがアタック。さすがのポガチャルもそう何度も反応することはできず、となれば他に追いかけようとする選手は出てこない。総合リーダージャージのワウト・ファンアールトが先頭に立って淡々と一定ペースで牽き始め、トーマスと集団とのギャップが開いていく。

先頭でマッズ・ウルツシュミットに突き放されて単独2番手で落ちてきていたバンジャマン・トマをトーマスが抜き去る。残り5㎞地点の中間スプリントポイントを、トーマスが2番手通過。

そしてボーナスタイム1秒分が残っている3位通過を果たしたのは、その直前にアタックしたタデイ・ポガチャル。

そしてその勢いそのままに一気にペースを上げ、集団からの抜け出しを図るポガチャル。ナイロ・キンタナ、ジョアン・アルメイダがこれに追いすがるが、肝心のベルナルがここで動けない!

あっという間に単独2番手のトーマスの後輪に貼りついたポガチャル。そのままトーマスの前に躍り出て、トーマスも慌ててこれに食らいつく。

アルメイダとキンタナがこれを追走し、その後ろのメイン集団は再びファンアールトが先頭に立って淡々と踏んでいく。ベルナルはその集団の最後尾。もう厳しいか。

残り5㎞。残り10㎞地点で2分半近いタイム差を残していたはずのウルツシュミットだったが、この5㎞でそのタイム差を溶かされてしまった。

追い付いたトーマスとポガチャル。そしてそのままポガチャルはトーマスを突き放す。

残り4.3㎞でファンアールト先頭のメイン集団がトーマスを吸収。ここでベルナルがアタックするが、遅すぎるタイミングに、キレもない。アルメイダがすぐさま食らいつく。

ミケル・ランダ、サイモン・イェーツも次々と反応し、ファンアールトを含む集団もジョアン・アルメイダやナイロ・キンタナを先頭にしっかりとこれを追いかけていく。

その中でジュリアン・アラフィリップが脱落。そして、トーマスまでもが。

残り3㎞。集団からサイモン・イェーツがアタック。

残り2㎞。先頭ポガチャルと追走イェーツとのタイム差10秒。先頭とメイン集団とのタイム差は38秒。ここからベルナルが落ちていく。

残り1㎞。先頭ポガチャルと追走イェーツとのタイム差6秒。メイン集団は40秒遅れでラスト1㎞ゲートを潜る。

サイモン・イェーツは前日の遅れが何だったのかと思わせるような力強さで最後までポガチャルに迫り続けるが、しかし届かなかった。

2018年ツール・ド・ラヴニール覇者、そして2020年ツール・ド・フランス覇者は、UAEツアーに続く今年ワールドツアーステージレース2連覇に向けた王手となる勝利を手に入れた。

第4ステージ


イネオスは「失敗」だったのか? 今年の最強チームはユンボか、UAEか。

そのあたりはまた別記事を書く「予定」。

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