見出し画像

パリ~ニース2021 第5ステージ

「太陽へと向かうレース」「ミニ・ツール・ド・フランス」の異名で知られる、サイクルロードレースシーズンの本格開幕を告げる8日間のステージレース。

第5ステージはリヨン近郊のビエンヌからローヌ川沿いの渓谷を縫ってひたすら南下し、南仏のボレーヌへ。203㎞の今大会最後のピュアスプリントステージとなった。

コースプレビューはこちらから

全23チーム161名のプレビューはこちらから


スタートから130㎞以上に渡り、ひたすら逃げの生まれない展開。近年はツール・ド・フランスでも見られるようになったこの「逃げ切りが難しいことが明白なスプリントステージではUCIプロチームであっても逃げに乗ろうとしない」という傾向がこのパリ~ニースでも見られる結果に。

翌日からのアルプス山岳連戦に向けて、プロトンは非常にゆったりとした時間を過ごすこととなった。


レースが動き始めたのは残り72㎞地点。AG2Rシトロエン・チームの選手が中心となってペースを上げ、以下11名の先頭集団が出来上がる。

ヴィクトール・カンペナールツ(キュベカ・アソス)
ヤスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)
エドワード・トゥーンス(トレック・セガフレード)
フィリップ・ジルベール(ロット・スーダル)
トーマス・デヘント(ロット・スーダル)
ティム・デクレルク(ドゥクーニンク・クイックステップ)
イヴ・ランパールト(ドゥクーニンク・クイックステップ)
スタン・デウルフ(AG2Rシトロエン・チーム)
オリバー・ナーセン(AG2Rシトロエン・チーム)
ドリス・デボント(アルペシン・フェニックス)
ルイス・フェルファーケ(アルペシン・フェニックス)

しかしこの有力選手たちの集まる先頭集団もすぐさま追走に捕らえられ、メイン集団に引き戻される。

そこからはまたしばらく平穏な時間が。集団の先頭にはトニー・マルティンなどが鎮座するいつもの光景。


だが、このマルティンをこのあと悲劇が襲う。

残り35.2㎞。集団中腹にいたユンボ・ヴィスマの集団の一人が縁石に乗り上げてバランスを崩しチームメートたちを巻き込んで落車。

その中にはプリモシュ・ログリッチの姿もあったが、彼はダメージを受けている様子はなくすぐさまリスタート。

ただ、マルティンだけが一人うずくまり立ち上がれない様子で、やがてストレッチャーに乗せられて病院へ向かうことに。

一人で2~3人分の働きをする最強の平坦牽引役を、ユンボは失うこととなってしまう。


その後も集団は大きな動きはなく、残り16㎞地点にあるこの日2つ目の中間スプリントポイントを前にしてボーナスタイムが欲しいマキシミリアン・シャフマンやティシュ・ベノートが、ルイスレオン・サンチェスやヨン・イサギレらと共にアタック。

結果としてイサギレ、シャフマン、ベノートの順で通過。シャフマンはレース序盤の第1中間スプリントポイントでも2位通過しており、この日レース途中だけで4秒のボーナスタイムを獲得したことに。


そして集団スプリント。

残り3㎞からマッズ・ピーダスン率いるトレック・セガフレードが集団先頭を支配していったが、残り2㎞でこれが崩壊。新たに右からグルパマFDJ、真ん中らボーラ・ハンスグローエ、そして左からはドゥクーニンク・クイックステップが上がってくる。

フラム・ルージュを越えて縦に長く伸びた集団の先頭はドゥクーニンク・クイックステップ。ポイント賞の緑ジャージを身に着けたサム・ベネットの前にアシストが3枚。時速70km弱で駆け抜けていく。

残り400mまでフロリアン・セネシャルが先頭を牽引するが、その間に左手からナセル・ブアニ率いるアルケア・サムシックトレインがポジションを上げてくる。

完全に並ばれたところでミケル・モルコフにバトンタッチ。ここからが圧倒的だった。

素晴らしい追い上げでセネシャルに並ぶところまでいったアルケアの最終発射台ダニエル・マクレーだが、モルコフが加速を開始するとさすがについていけず。

残り250mで放たれる形となったブアニはすぐさまベネットの番手につける。そこまでの位置取りは完璧だった。

だがそこから加速を開始するモルコフのペースアップに、ブアニはついていくので精一杯。

残り150mという「必勝タイミング」でサム・ベネットが放たれたときも、ブアニはその後を追いかける以外に成す術などあるはずもなかったのだ。

圧勝。比類なき圧勝。そしてそれは、ミケル・モルコフという世界最強リードアウターの手によって成し遂げられた勝利であった。

もちろん、そんな彼のリードアウトにしっかりとついていけるサム・ベネットも十分に化け物である。おそらく彼のリードアウトは、本当に最強のスプリンターでなければ、引きちぎられる勢いなので・・・。

第5ステージ

最後はドゥクーニンク・クイックステップの速すぎる加速によって集団が割と小さなものに分裂してしまい、前日までいい成績を残していたジャスパー・フィリプセンやマッズ・ピーダスンらが10位以下に沈む結果となってしまった。

本日でスプリントステージは終了。いよいよ「太陽へ向かうレース」はその南仏を舞台とした山岳ステージへと突入していく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?