見出し画像

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2021 第4ステージ

3日間にわたる「スプリントステージ」を終え、いよいよ総合争いが巻き起こる個人タイムトライアル。フランス中部オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏のフィルミニーからロシュ=ラ=モリエールまでの16.4㎞。

比較的な平坦な前半7.5kmと、細かなアップダウンが続く後半8.9km。

距離・レイアウト共に一筋縄ではいかないステージだ。


元世界王者のトニー・マルティン(ユンボ・ヴィスマ)は9番出走。最近は個人TTで存在感を示すことの少ない彼ではあるが、今回はさすがに序盤のトップタイムを記録する。

ヨセフ・チェルニー(ドゥクーニンク・クイックステップ)ライアン・マレン(トレック・セガフレード)、あるいは過去ジロ・デ・イタリアの個人TTで優勝経験もあるチャド・ヘイガ(チームDSM)などの記録を軽々と上回るその走りは、久々に強いマルティンを見れたか?という思いに。

しかしこのマルティンの記録を7秒更新したのが24番出走のハリー・スウィーニー(ロット・スーダル)。育成チーム出身の22歳オーストラリア人で、昨年のピッコロ・ロンバルディア(U23版イル・ロンバルディア)覇者。期待の若手の1人である。

そしてこのスウィーニーの記録を破ったのが、54番出走のヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ)。イツリア・バスクカントリーでは個人TT3位。今最も勢いのある若手オールラウンダー。

バスクでは彼を上回っていたブランドン・マクナルティ(UAEチーム・エミレーツ)も中間計測(7.5km地点)ではヴィンゲゴーを3秒更新したものの、フィニッシュ地点では4秒届かず。

以後、しばらくヴィンゲゴーがホットシートを独占し続ける。


これを奪ったのが115番出走のリッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ)

昨年のツール・ド・フランスでは総合3位。そして今年もボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャのTTで区間6位・総合2位、ツール・ド・ロマンディでもプロローグ3位・最終日TT5位・総合2位と絶好調の男が、破られないかと思っていたヴィンゲゴーの記録を2秒更新した。

だが、ここからは有力勢が続く。

まずはウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ)が中間計測のポートの記録を1秒更新。

かと思えばゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)がさらにこれを7秒更新。

だが期待のケルデルマンがフィニッシュに辿り着く前に、中間計測ではトーマスから16秒遅れのノーマークだったヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック)がフィニッシュ地点でポートを6秒上回るという驚きの成績。

さらに驚きなのがヨン・イサギレのチームメートのアレクセイ・ルツェンコ

中間計測ではこちらもケルデルマンから3秒遅れにも関わらず、フィニッシュ地点ではイサギレをさらに8秒上回っての暫定首位。

そして中間計測首位だったゲラント・トーマスが、後半で一気にペースを落とし、なんとルツェンコから23秒遅れ、ブランドン・マクナルティからも2秒遅れての区間9位でのフィニッシュとなった。


正直、誰も想像していなかった、ルツェンコの区間優勝(Pro Cycling Statsの予想ゲームでも0票)。

後半の起伏区間が思わぬ荒れた展開を生むことになったのか。そこにペースを合わせてきたアスタナ・プレミアテックの戦略の勝利とも言えるかもしれない。


だが、もう1つの驚きが、この日の最後に待ち受ける。

第2ステージで逃げ切りを決めマイヨ・ジョーヌを手に入れたルーカス・ペストルベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)

この日、さすがにそのジャージを脱ぐことになるかもしれない――といったところで、なんとルツェンコから23秒遅れの区間9位を記録。

第4ステージ


この日始まる前のルツェンコと彼との総合タイム差は24秒だったので・・・なんと、わずか1秒差での、マイヨ・ジョーヌキープとなった。

第4ステージ終了時点での総合成績


ここから先、厳しい山岳ステージがいくつも待ち受ける中、現時点での総合タイム差はそこまで重要ではないかもしれない。

ただ、アスタナコンビの調子の良さと・・・そして、ゲラント・トーマスの意外なコンディションは、今後の大きな伏線になるかもしれない。


なお、上記以外の総合有力勢としては(すべてルツェンコからのタイム差で)、

ジャック・ヘイグ(+34秒)
ステフェン・クライスヴァイク(+39秒)
ミゲルアンヘル・ロペス(+42秒)
ダミアン・ホーゾン(+59秒)
ダヴィド・ゴデュ(+59秒)
テイオ・ゲイガンハート(+1分03秒)
ナイロ・キンタナ(+1分14秒)
エンリク・マス(+1分15秒)
セップ・クス(+1分17秒)
アレハンドロ・バルベルデ(+1分17秒)
ギヨーム・マルタン(+1分20秒)

バルベルデが思ったよりもタイムを失っており・・・クスやマルタンもやっぱり、TTは弱点。

このあたりの選手は山岳で挽回するのもちょっと無理をしないといけなそうである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?