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ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 第5ステージ

バスクの代表的な都市ドノスティア(サン・セバスティアン)をスタート直後に通過し、ビルバオの街へとフィニッシュ。5つの山岳ポイントが用意された実にバスクらしいアップダウンステージで、ラスト14㎞地点で山頂を迎える2級山岳がポイント。総合系にも、アタッカーにも、そして逃げスペシャリストにもチャンスのある、予想の難しいステージとなった。


逃げ切りの可能性のあるステージだけに、最初の1時間半はひたすらアタックが繰り返され、なかなか逃げ決まらない中平均時速50㎞ほどで推移していたという。

最終的には以下の18名の逃げ集団が形成された。

ワジム・プロンスキー(アスタナ・カザフスタンチーム)
フレッド・ライト(バーレーン・ヴィクトリアス)
ヨナタン・カイセド(EFエデュケーション・イージーポスト)
ルディ・モラール(グルパマFDJ)
ジェイク・スチュアート(グルパマFDJ)
ユリウス・ヨハンセン(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
アレッサンドロ・デマルキ(イスラエル・プレミアテック)
ダリル・インピー(イスラエル・プレミアテック)
カミル・マレツキ(ロット・スーダル)
グレゴール・ミュールベルガー(モビスター・チーム)
ファウスト・マスナダ(クイックステップ・アルファヴィニル)
ローソン・クラドック(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
ニキアス・アルント(チームDSM)
マルク・ソレル(UAEチーム・エミレーツ)
ヴィクトール・ランゲロッティ(ブルゴスBH)
ロジャー・アドリア(エキッポ・ケルンファルマ)
イバイ・アズルメンディ(エウスカルテル・エウスカディ)
アントニー・デュラプラス(アルケア・サムシック)

この中で最も総合タイム差が小さいのがルディ・モラールの58秒。次いでフレッド・ライトの1分2秒。しかしユンボ・ヴィズマがコントロールするメイン集団はこの逃げ集団に4分以上ものタイム差を許し、前日まで4日間にわたりチームで保持していたマイヨ・ロホを、この日手放すことをはっきりと示すこととなった。

先頭集団で動きが巻き起こったのが、残り43.2㎞地点の2級山岳アルト・デル・ビベロ(登坂距離4.7㎞、平均勾配7.8%)。先頭も少しずつ数を減らす中、山頂付近でローソン・クラドックがアタック。ここにランゲロッティが単独で追い付き、しばらく先頭は2名が抜け出すこととなった。しかしこの抜け出しは下りの途中で追い付かれる。

残り18.7㎞からもう一度同じ2級山岳アルト・デル・ビベロ(登坂距離4.7㎞、平均勾配7.8%)を登り始めることになるが、それまでの間の平坦区間で互いに牽制し合う中、残り23.4㎞地点でジェイク・スチュアートが一人抜け出した。

そのまま独走態勢でアルト・デル・ビベロの登りに突入したスチュアート。追走とのタイム差も44秒にまで開き、追走も11名にまで絞り込まれていた。

このままスチュアートが逃げ切ってしまうのか?

しかし、この最後の登りの山頂まで2㎞地点となる残り16.4㎞。さらに小さくなっていく追走集団の中から、直前まで苦しそうな様子も見せていたはずのマルク・ソレルが突如としてアタック。そのまま一気に先頭のスチュアートへと迫っていく。

ただし、追いついてもそのまま2人でフィニッシュまで行っては、スプリント力の差でソレルは不利。果たしてどうするか――と思ったら、追いついた途端にそのまま加速してスチュアートを突き放す。

そしてスチュアートは完全に力尽き、そのまま追走集団に飲み込まれる。先頭はそのままソレルが単独の状態で最後の山頂を通過し、下りと平坦のラスト14㎞へと突入する。

ソレルと追走集団とのタイム差は残り7㎞で14秒。残り5㎞で7秒。すぐ目の前には見えるが、10名程度にまで膨れ上がった追走集団内では駆け引きも発生し、そのあと数秒を埋められない。とくにマイヨ・ロホの獲得がかかっているルディ・モラールは直接のライバルであるフレッド・ライトを徹底的にマークし、そのライトもこの集団内では(スチュアートが力尽きて脱落したこともあり)インピーと並んでスプリント力があるということで警戒されており、彼が前を牽く場面が多く見られていた。

ソレルが残り1㎞を通過した時点で、タイム差は4秒。だが後ろはなおも牽制状態。残り500mでライトが先頭固定となり、誰もそこから動こうとしない。

残り300m。ライトが腰を上げる。しかし後ろを何度も振り返りつつ、まだ本気でペダルを踏むことはしない。

この期に及んでそんな状態であれば、ソレルが逃げ切れない理由など何もなかった。

2018年パリ~ニース覇者。期待された総合系としての道はなかなかうまくいかなかったものの、最強タデイ・ポガチャルのアシストとして、そして今大会はジョアン・アルメイダのアシストとして、その才能を発揮するためにやってきたこのブエルタ・ア・エスパーニャで、スペイン人としてまずは最初の勝利を大会にもたらした。

1年4か月ぶりの勝利。そして、ブエルタ・ア・エスパーニャでは2年ぶり2回目の勝利となった。

年齢表記はすべて2022/12/31時点のものとなります。

メイン集団とはとくに争うことなく、ユンボ・ヴィズマを先頭に5分9秒遅れでフィニッシュ。

最後にライトが3位に入りボーナスタイム4秒を獲得するも、最後の登りの山頂に設置されたボーナスタイムポイントも追走集団先頭(全体では2位)で通過したモラールが2秒のボーナスタイムを得たこともあり、その2秒差でモラールがマイヨ・ロホ獲得を確定。

ユンボは4日間着用したマイヨ・ロホを、早速明け渡すこととなった。


第6ステージからはいよいよ第1週の山場、カンタブリア山脈4連戦へと突入していく。

ブエルタ・ア・エスパーニャにしては遅い感じの、最初の本格的山頂フィニッシュ。1級山岳ピコ・ハノ山(登坂距離12.6㎞、平均勾配6.55%)で最初の重要な総合争いが勃発することになるだろう。


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