UAEツアー2021 第1ステージ
アラブ首長国連邦全域を舞台として開催される、今年最初のワールドツアーレース。平坦ステージと山岳ステージ、そしてTTとがバランスよく配置された7日間のステージレースである。
第1ステージはアブダビ首長国のアル・ダフラ城からアル・ミルファまでの177㎞平坦ステージ。
集団スプリントしかありえないと思われていたこのステージで、まさかの大混乱が発生することに。
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アブダビ首長国の中心地から離れた土地を舞台としているだけに、コースの大半は周囲に何もない砂漠の中の道。
風を遮る遮蔽物の全くない状況の中、強く吹き付けた横風が、アクチュアルスタート直後のプロトンにまずは大いなる洗礼を浴びせかけた。
すなわち、0㎞アタックからアダム・イェーツやマチュー・ファンデルポールが飛び出し、集団が分裂。
この分裂自体は残り150㎞地点で街中に入ったことで一旦解消されるも、残り110㎞地点で再び集団大分裂。
いくつものエシェロンができあがる非常事態の中、最終的には「先頭集団」として以下の26名が形成される。
タデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)
ミッケル・ビョーグ(UAEチーム・エミレーツ)
フェルナンド・ガビリア(UAEチーム・エミレーツ)
マキシミアーノ・リケーゼ(UAEチーム・エミレーツ)
アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ)
マチュー・ファンデルポール(アルペシン・フェニックス)
ロイ・ヤンス(アルペシン・フェニックス)
ジャンニ・フェルメールシュ(アルペシン・フェニックス)
ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)
エリア・ヴィヴィアーニ(コフィディス・ソルシオンクレディ)
ルーベン・フェルナンデス(コフィディス・ソルシオンクレディ)
ケネス・ファンビルセン(コフィディス・ソルシオンクレディ)
ホアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
シェーン・アーチボルド(ドゥクーニンク・クイックステップ)
マティア・カッタネオ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
ミケル・モルコフ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
ニールソン・ポーレス(EFエデュケーション・NIPPO)
アレクシス・ブルネル(グルパマFDJ)
アントニー・ルー(グルパマFDJ)
オマル・ゴールドシュタイン(イスラエル・スタートアップネーション)
ダヴィド・デッカー(ユンボ・ヴィズマ)
クリス・ハーパー(ユンボ・ヴィズマ)
マティアス・スケルモールイェンセン(トレック・セガフレード)
エミル・リエピンス(トレック・セガフレード)
キール・レイネン(トレック・セガフレード)
そしてこの26名とプロトンとのタイム差は1分半。
プロトンではこの逃げに有力選手を乗せられなかったロット・スーダル、キュベカ・アソス、ボーラ・ハンスグローエ、チームDSMなどが牽引。
しかしタイム差は一切縮まることなく残り距離だけが消化されていく。
そして残り40㎞を切ったあたりから集団は完全に諦めモードとなり、タイム差はむしろ開いていった。
7日間のレースの1日目にしていきなり総合争いの資格をもつ選手たちが絞られた形に。
上記のメンバーの中の筆頭はUAEチーム・エミレーツのタデイ・ポガチャル、ドゥクーニンク・クイックステップのホアン・アルメイダ、そしてイネオス・グレナディアーズのアダム・イェーツ。
逆にヴィンツェンツォ・ニバリ、アレハンドロ・バルベルデ、エマヌエル・ブッフマン、ワウト・プールスなどはいきなりその勝負権を失ってしまったわけだが、そんな中、クリス・ハーパー(ユンボ・ヴィズマ)やニールソン・ポーレス(EFエデュケーション・NIPPO)などはチャンスを得たとも言える。
ただ、やはり総合優勝争いはポガチャル、アルメイダ、アダム・イェーツの3名に絞られそう。
実際にこの逃げ集団の中でも、彼らによるバチバチの戦いが繰り広げられる。
すなわち、残り56.4㎞地点に設置された第1中間スプリントポイントをホアン・アルメイダが先頭通過。
さらに残り37.6㎞地点に用意された第2中間スプリントポイントで、アルメイダが先頭通過&タデイ・ポガチャルが2位通過。
それぞれ合計でアルメイダが6秒、ポガチャルが2秒のボーナスタイムを得る結果となった。
さらに残り9㎞でアルメイダがまさかのアタック。ここにニールソン・ポーレスとコフィディスのアシストが食らいつく。集団ではUAEチーム・エミレーツのアシストが先頭を牽引してアルメイダを捕まえにかかる。
さらに残り7㎞で再びドゥクーニンク・クイックステップがアタック。おそらくファウスト・マスナダ? ここにはアルペシン・フェニックスのアシストとフェルナンド・ガビリア、そしてポーレスとエリア・ヴィヴィアーニもついていった。
これが捕まえられると今度は残り6㎞でみたびドゥクーニンク・クイックステップのアタック。
今度は、マスナダと同じアンドローニジョカトリ出身のマティア・カッタネオ。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでも積極的な逃げを見せていた男だが、さすがの連続アタックに集団も追撃の力は弱まっており、単独での抜け出しに成功する。
集団とのタイム差9秒ほどで残り2㎞のラインを通過していくカッタネオ。
これを追いかけるのがUAEチーム・エミレーツ。ミッケル・ビョーグが先頭で牽引してその差を詰めていく。
そして残り1.7㎞。集団からフェルナンド・ガビリアがアタックした。
昨年のジロ・デッラ・トスカーナも、こんな感じの終盤でのアタックで勝ちを掴んでいるガビリア。
今回もあっという間にカッタネオに追い付き、ローテーションを回す。なかなか真正面からのスプリントでは勝ちきれずにいた彼だが、ここでチャンスを掴めるか。
しかしここでドゥクーニンク・クイックステップが集団を牽引し、残り800mで吸収。
しっかりと数を残したドゥクーニンクが、ミケル・モルコフによるスプリント勝利を狙いに行く。
そしてそのモルコフの背後にエリア・ヴィヴィアーニ、その後ろにマチュー・ファンデルポール。
動き出したのは残り200mを切ってから。
まず飛び出したのがヴィヴィアーニ。進路を右にとって加速を開始する。
一歩遅れてマチュー・ファンデルポールが左からスプリントを開始。
世界最強級のスプリンターvs自転車の天才マチューの一騎打ち。
だが、ヴィヴィアーニはフィニッシュに辿り着く前にガクンと失速。
最後にはユンボ・ヴィズマの期待のネオプロ、ダヴィド・デッカーやトレック・セガフレードのエミル・リエピンスなどにも抜かれ、5番手でのフィニッシュとなってしまった。
そして、完璧な伸びを見せたファンデルポールがそのまま横に並ばせることなく先頭フィニッシュ。
今大会、ジャスパー・フィリプセンのリードアウトと登りでの足試しにやってきたと宣言していたこの男が、この第1ステージの開始直後や中盤など重要な局面で常にアタックを繰り返し、動きを作ってこの最終局面を生み出すに至った。
また、ドゥクーニンク・クイックステップの危険な動きに尽くチェックに入ったジャンニ・フェルメールシュとロイ・ヤンスのアシストたちも実に見事な働きをしてくれた。
ただ単にマチュー1人で頑張るだけではない、チームとしてこの先のグランツールに向けた体制が着実に準備されつつあることを感じさせる勝利であった。
なお、先頭集団にポガチャルが残った一方でアルメイダはそこから3秒遅れの集団に。
アルメイダはボーナスタイムでポガチャルから4秒リードしていたのだが、この結果総合では1秒差にまで迫られる形となった。
一方ボーナスタイムも得られずフィニッシュでも3秒のビハインドを背負ったアダム・イェーツはアルメイダからは6秒、ポガチャルからは5秒失う形となった。
第2ステージに続く。
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