ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2021 第3ステージ
スペイン北東部カタルーニャ州を舞台とした7日間のステージレース。例年、クライマーのためだけのステージレース、といった印象だったが、今年は中距離個人タイムトライアルが登場したことで、よりオールラウンダー向けに。
とくにイネオスやユンボは誰がエースかわからないくらいの豪華な布陣で臨んできており、今年のグランツールを占ううえで重要な一戦となっている。
第3ステージはカステイダフェルスの「オリンピック運河」周辺からスタートし、大会恒例のスキーリゾート「ヴァルテ2000」に至る山頂フィニッシュステージ。
いよいよ本格的なクライマー対決が始まる。
コースプレビューや注目選手は以下の記事で
逃げは9名。
テイメン・アレンスマン(チームDSM)
アレクサンダー・カンプ(トレック・セガフレード)
クレマン・ヴァントゥリーニ(AG2Rシトロエン・チーム)
トーマス・シャンピオン(コフィディス・ソルシオンクレディ)
アレクサンダー・エヴァンス(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(キュベカ・アソス)
ショーン・ベネット(キュベカ・アソス)
コリン・ジョイス(ラリー・サイクリング)
フランシスコ・ガルヴァン(エキッポ・ケルンファルマ)
最も注目すべき選手は、2018年のツール・ド・ラヴニール総合2位で昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでも活躍、昨日の個人タイムトライアルでも区間16位となかなかの好成績を叩き出していた未来の総合系オールラウンダーの卵とされている21歳、アレンスマン。
この日最後に待ち構える登り「ヴァルテ2000(登坂距離11km、平均勾配7.6%)」に差し掛かると逃げ9名はボロボロと零れ落ちていき縮小していくが、最後の最後まで先頭にただ一人残り続けたのはこのアレンスマンであった。
メイン集団も登りが始まると共にイネオス・グレナディアーズが早速トレインを形成。ここから残り10㎞でバルベルデがアタック。
最初のアタックはすぐさまイネオスのリチャル・カラパスやユンボのセップ・クス、トレックのジュリオ・チッコーネにイスラエルのダニエル・マーティンといった強豪選手たちが食らいつき、やがて集団に引き戻されるが、残り8㎞でバルベルデが再度アタック。
今度は誰もこれをチェックしようとするものはおらず、暫くバルベルデは一人で次々と逃げ遅れの選手たちを抜き去っていく。
残り7㎞を切って集団からナイロ・キンタナがアタック。
やがてキンタナがバルベルデにジョインするが、そこにカラパスとチッコーネがのちに食らいついてきた。
大会開幕前はエースとも思われていた昨年ブエルタ総合2位のリチャル・カラパスだが、この日の動きはまるでアシスト――少なくとも、セカンドエースやサードエースの動きだった。前日のTTでは大きくタイムを落とした結果にもなっており、シーズン緒戦たるこのカタルーニャにおいては、彼の実力がまだ十分に発揮できる状態ではないとみなされたか。
逆に、絶好調なのがこの男。今年のUAEツアーで総合2位、そして昨日の個人TTでもまさかの区間7位という驚きの記録を叩き出したアダム・イェーツ。
残り5㎞でキンタナバルベルデカラパスチッコーネの追走集団に追い付いたかと思えば、そこからクスとバルベルデを伴ってアタックを繰り出した。
追い付いたアレンスマンを残り3㎞で振り切り、そのタイミングでクスがアタック。しかしそこまでキレはなく、アダムとバルベルデは難なく食らいつく。
残り2.2㎞でバルベルデが脱落し、先頭はクスとアダムだけに。
集団からはハーム・ファンフックと昨年ブエルタ総合3位のヒュー・カーシーが抜け出して第3集団を形成する。
残り1.8㎞でアダムがアタック。
集団から恐ろしい勢いで飛び出してきたエステバン・チャベスがファンフックたちもバルベルデもクスも追い抜いて単独で先頭アダムを追いかけるが、最後は13秒足らず。
新チーム・イネオスでさらなる進化を遂げつつあるアダム。当初は絶望的と思われていたツールでのエースの可能性すら感じさせる、完璧な走りであった。
そして、ファンフックの臣下が止まらない。この本格的な山頂フィニッシュで集団を抜け出しての5位は素晴らしい。
逆に今大会最有力候補の1人と思われていたアルメイダが思わぬ苦戦を強いられたのは苦しい(46秒遅れの16位)。
ファウスト・マスナダ、ジェームス・ノックスなど、昨年のジロと同様のアシスト体制で臨んでいたものの、今日に限って言えばそれが十分に機能しているとは言い難かった。
ティレーノ~アドリアティコでは弱さと強さを共に見せ読みづらい走りをしているサイモン・イェーツ、そのセカンドエースとして期待されるルーカス・ハミルトン、さらにはモビスターの若き新エースのはずのエンリク・マスはそれぞれアルメイダと共に沈む結果に。
明日もまた、山岳ステージ。最後の最後に一発大きな登りが用意されただけのこの第3ステージと違って、厳しい登りが連続する真のクイーンステージであるこの第4ステージで、本当の実力者が炙り出されることになるだろう。
アダムが引き続き強さを見せるか。それともリベンジを果たすものはいるのか。
そしてパリ~ニース、ティレーノ~アドリアティコでは苦しい戦いを強いられてきたイネオス・グレナディアーズが、このカタルーニャではまだまだ最強であることを証明できるか。
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