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ツール・ド・フランス2021 第2ステージ

グランツールの開幕ステージとしては珍しい激坂含みの登りフィニッシュで開幕した今年のツール・ド・フランス。

第2ステージでもそのブルターニュの洗礼は止まらず、自転車界におけるブルターニュ地方の最大の名所「ミュール・ド・ブルターニュ」フィニッシュ、しかも3年前と同様、それを「2回」登らせるステージが用意された。

2日続けてのパンチャー向けフィニッシュ。昨日、見事開幕勝利とマイヨ・ジョーヌを手に入れたジュリアン・アラフィリップが、今日もまたその勢いのまま勝利を掴むことはできるのだろうか。

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アクチュアルスタートと同時に飛び出したのは山岳賞ジャージを着るイーデ・スヘリンフ(ボーラ・ハンスグローエ)

しかし彼のアタックはなかなか許してもらえず、その後もアタック合戦が続き、やがて以下の4名の逃げが最初に形成される。

エドワード・トゥーンス(トレック・セガフレード)
アントニー・ペレス(コフィディス・ソルシオンクレディ)
サイモン・クラーク(チーム・キュベカ・ネクストハッシュ)
ヨナス・コッホ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)

だが、スヘリンフも諦めてはいなかった。その後も何度かアタックしては引き戻され、「誰か一緒に来いよ!」とばかりに後ろを煽るジェスチャーもかましていたスヘリンフ。

やがて、チーム・トタルエナジーズジェレミー・カボットが一緒になって飛び出して、2人でなんとか先頭の4名に追い付いた。

そうしてようやくメイン集団も横一列になり、トイレ休憩を開始。

アクチュアルスタートから34分。16㎞を消化しての逃げ確定となった。


昨日の戦いを経て、スヘリンフが3ポイント、ペレスが2ポイントを獲得している山岳賞争い。

本日はフィニッシュ地点を除けば合計で6ポイントを獲得できるステージ。

山岳賞ジャージを巡る争いは本日も白熱しそうだ。


そんな山岳賞バトルの第一幕、コート・ドゥ・サンテ=バルベ(残り110.7㎞地点、登坂距離900m、平均勾配6.6%)ではペレスが最初に加速。スヘリンフもこれに食らいつこうとするが、前日の最初の3級山岳のときと同様に完全に力負けする。

山頂通過直後、スヘリンフがカウンターで飛び出そうとするが、すぐさまペレスがこれを引き戻す。さすがに昨日のようにこれを行かせるわけにはいかない。


続いて残り98.5km地点にある中間スプリントポイント。

先頭では6名の中でのスプリンター対決。実績はトゥーンスだが、それゆえに彼が先頭を牽かされている間に、隙を見て残り200mでコッホが奇襲攻撃。

しかし、トゥーンスはしっかりとこれに食らいつき、最後の最後でこれを差し切った。実力を見せつけた格好だ。

メイン集団では昨日に続きカレブ・ユアン(ロット・スーダル)が集団先頭(7位、9ポイント)通過。やはり本気でシャンゼリゼまで残り、マイヨ・ヴェール獲得を狙っているのか。

2位はマーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ)。ギリギリまでミケル・モルコフに牽かれてのスプリント。これは彼の調子の良さを表すのか、逆に彼自身の力ではまだ勝ちきれないことを表しているのか。

そして3位はジャスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス)。平坦ではティム・メルリールがエースになるものと思っていたが、ここではフィリプセンがエース。明日以降の集団スプリントでも、メルリールだけでなくフィリプセンで戦うのだろうか。


そして山岳賞バトル第二幕。

残り80.3㎞地点の4級山岳コート・ド・ポルディック(登坂距離2.1km、平均勾配3.2%)

山頂まで残り1.5㎞でスヘリンフが加速するが抜け出せない。

カウンターでペレスがアタックし、一旦ギャップを作るが、まだ山頂までは遠い。ペレスも一旦足を止めざるを得ず、やがてスヘリンフとコッホが追いついてくる。


その後はペレスが先頭で何度も後ろを振り返りながらスヘリンフの出方を窺う。スヘリンフもペレスの背後で何度も鋭い目つきで山頂までの距離を測る。

そして残り400m。スヘリンフがアタック。ペレスもすぐさま反応し、前を譲らない。

だが、山頂まで距離がまだある。ペレスにとっては、早すぎた。スヘリンフにとっては、戦略通りといったところか。

瞬間的な加速力ならばペレスに分があっただろうが、粘り強さはスヘリンフが上だった。

加速するペレスに突き放されることのないままスヘリンフが食らいつき続き、やがて山頂直前でついにペレスが諦めた。

山頂先頭通過はスヘリンフ。これで4ポイント。再び山岳賞ランキングでリードを得た。


第三幕は残り68.3㎞地点の4級山岳コート・ド・サン=ブリュー(登坂距離1㎞、平均勾配8%)

しかしそこに至るまでの道のりでトゥーンスがアタック。スヘリンフは完全にペレスをマークしており、ペレスもすでに戦意を喪失。結果、2人が動かないことで集団は牽制状態に陥り、トゥーンスはそのまま独走で4級山岳の山頂を先頭通過。

ペレスとスヘリンフは間もなく集団に吸収。クラークも落車して脱落。

独走するトゥーンスに対しては唯一、カボットだけが追いついて先頭は2名に絞られた。


そして50㎞を消化していよいよ第四幕、「ミュール・ド・ブルターニュの村(登坂距離1.6km、平均勾配4.1%)」という名の4級山岳が残り19.7㎞地点に。

逃げ続けたトゥーンスはカボットを突き放して独走を開始。なんとかこの山頂を先頭通過果たすものの、次の3級山岳ミュール・ド・ブルターニュ(残り15.3㎞地点、登坂距離2㎞、平均勾配6.9%)までの間に吸収された。


さあ、いよいよミュール・ド・ブルターニュ。

位置取りと危機回避のために各チームがトレインを作って集団の先頭に出てきた中でハイ・ペースに。バーレーン・ヴィクトリアスのマルコ・ハラーがジャック・ヘイグを率いて前の方に上がってくるが、これらを振り切って抜け出したのがマチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)

残り2㎞の登り口の激坂区間で一気に抜け出していくファンデルプール。山頂まで残り500mの地点で集団とは10秒差。

ブランドン・マクナルティがタデイ・ポガチャルを率いて集団の先頭を牽引し、少しずつそのギャップを詰めていくものの、最終的にはファンデルプールが最初のミュール・ド・ブルターニュを先頭通過。8秒のボーナスタイムを獲得する。

2位はタデイ・ポガチャル。3位にプリモシュ・ログリッチ。

アラフィリップはボーナスタイムを得られず。ここでファンデルプールとアラフィリップとの総合タイム差が10秒に縮まる。


数が絞られた集団から、ディラン・ファンバーレが先頭に立つイネオス・グレナディアーズのトレインと、ファンデルプールのためのアルペシン・フェニックスのトレインとが集団の先頭を支配していく。

そして残り2㎞。ミュール・ド・ブルターニュの、直登の激坂が始まる。

登り始めてすぐミハウ・クフィアトコフスキが仕事を終えると、残り1.9㎞からリッチー・ポートが先頭牽引。

そのまま残り1.3㎞まで牽き続けたが、そのタイミングで今度はコース左端からナイロ・キンタナがアタック。マチュー・ファンデルプールがここに食らいついていった。

そしてフラム・ルージュ。キンタナとファンデルプールを捕まえた集団から、カウンターでソンニ・コルブレッリがアタック。そこに再びファンデルプールが飛び乗った。

ここに反応したのがタデイ・ポガチャルとプリモシュ・ログリッチ。マイヨ・ジョーヌを着るジュリアン・アラフィリップは出遅れる。

残り750mでコルブレッリが失速すると、その背中からファンデルプールが最後の力を振り絞ってアタック。

独走が開始される。


ツール・ド・フランス初出場。その初勝利はもちろん大きな価値があるものではあるが、彼はそれだけでなく、マイヨ・ジョーヌを狙った。それゆえに、1つ目のミュール・ド・ブルターニュでもアタックして先頭通過し、8秒のボーナスタイムを奪い取ったのだ。

そしてこの最後のミュール・ド・ブルターニュでもまた、早めの攻撃でチャンスを自ら掴み取った。

後続でアラフィリップももがくが、結局は届かず。

ファンデルプール、最後はハンドルに体全体を倒れこませるほどにオールアウトでフィニッシュし、ボーナスタイム10秒と共に集団に大きくタイム差をつけた。

これにて、マイヨ・ジョーヌ獲得。それは、2年前に亡くなった祖父レイモン・プリドールが最後まで取れなかったジャージであり、この勝利は祖父に捧げる勝利であった。

第2ステージ


前日に続きポガチャルとログリッチが相争いながらのフィニッシュ。ボーナスタイムも手に入れ、わずかではあるがライバルたちに差をつけた。

一方、ウィルコ・ケルデルマンやヨナス・ヴィンゲゴーも調子の良さを見せている。ケルデルマンはTTも強いのでこの調子で今大会の総合優勝候補の1人として活躍していくことが期待できそうだし、ヴィンゲゴーはログリッチと共にダブルエースを担いうる。それはポガチャルにとっては大きな脅威となるだろう。

一方、イネオス・グレナディアーズではカラパスが12位でタイムをキープしたのに対し、ゲラント・トーマスが23秒遅れでのフィニッシュと、弱みを見せる結果に。

総合勢の状況を色々と感じさせるこの2日間。もちろん、まだその差は決して大きくはないものの・・・。


第3ステージは今大会最初の集団スプリントステージ。

ここまで中間スプリントポイントでは常にカレブ・ユアンが集団先頭を獲得。その勢いで今年3つ目のグランツールステージ勝利を飾れるか。

3年ぶり出場のアルノー・デマールは、そして復活のマーク・カヴェンディッシュはどこまでの結果を出せるか。

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