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エトワール・ド・ベセージュ2021 第3ステージ

第2ステージはこちら

南仏ガール県を舞台に5日間の日程で開催されている1クラスのステージレース、エトワール・ド・ベセージュ(ツール・デュ・ガール)。

第3ステージはレース名の由来ともなっている町ベセージュを発着する154.8㎞の丘陵ステージ。

総獲得標高3,053mというアルデンヌ・クラシック級のアップダウンレイアウトの中で、実にそれらしい展開を見せる1日となった。

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この日はスタート直後から500m級の登りが連続しており、激しいアタック合戦が繰り広げられた。

最初に生まれたのはエガン・ベルナル、ヴィンツェンツォ・ニバリ、ゲラント・トーマス、グレッグ・ファンアーヴェルマート、アルベルト・ベッティオルといった豪華な6名の逃げ。

さすがにこれはすぐに捕まえられるが、新たにティム・ウェレンスやバウケ・モレマ、アルベルト・ベッティオル、アレクシス・ブルネル、オウェイン・ドゥールの5名が抜け出す。

しかしこの2つ目の強力な逃げもまた、スタートから1時間程度の残り110㎞地点で捕まえられてしまう。


引き続きベルナルやブルネルらが積極的にアタックを仕掛けながらも、新たな逃げが生まれることなく集団は残り100㎞地点に位置する1級山岳「コル・デ・ブルッス」に到達し、その山頂をミハウ・クフィアトコフスキが先頭通過。

前日までに山岳ポイントを28ポイントにまで積み上げていたアレクサンドル・デュレット(デルコ)は今日この日はまったく動けなかったわけだが、デュレットと16ポイント差で山岳賞2位のルドヴィク・ロベート(スポートフラーンデレン・バロワーズ)も特にポイントを得られたわけではないと思われるため、翌日第4ステージが最大で16ポイントしか獲れないことを考えると、デュレットの最終山岳賞獲得は確定したと言っていいだろうか?


コースも半分が過ぎようとする残り80㎞あたりで、集団内で大きな動きが生まれる。

この日常に積極的に動き続けてきたロット・スーダルやイネオス・グレナディアーズの強力な面子を含む大規模な逃げ集団が形成される。

その数、実に17名。

面子としては、以下の通りである。

総合で12秒遅れ(15名)
ティム・ウェレンス(ロット・スーダル)
フィリップ・ジルベール(ロット・スーダル)
ステファノ・オルダーニ(ロット・スーダル)
エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)
ミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ)
ブライアン・コカール(B&Bホテルス p/b KTM)
シリル・バルト(B&Bホテルス p/b KTM)
グレッグ・ファンアーヴェルマート(AG2Rシトロエン・チーム)
ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ)
エドワード・トゥーンス(トレック・セガフレード)
ジェイク・スチュアート(グルパマFDJ)
ミヒャエル・ゴグル(チーム・キュベカ・アソス)
マッズ・ウルツシュミット(イスラエル・スタートアップネーション)
オドクリスティアン・エイキング(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
クレモン・カリゼ(デルコ)

総合で49秒遅れ
マルティ・マルケス(エキッポ・ケルンファルマ)

総合で54秒遅れ
ラース・ファンデンベルフ(グルパマFDJ)


17名もの大規模逃げ集団。ベルナルやジルベールやファンアーヴェルマートやウェレンスといった超強力な選手たちが含まれているということ。そしてそのほとんどが総合成績においてわずか12秒しか遅れていないこと。

あらゆる意味で危険なこの大逃げ集団に対し、メイン集団では、逃げに選手を送り込めなかった総合リーダー擁するコフィディス・ソルシオンクレディ、EFエデュケーション・NIPPO、アルペシン・フェニックスなどが中心となって牽引する。

EFエデュケーション・NIPPOのリゴベルト・ウランやチーム・トタル・ディレクトエネルジーのエドヴァルド・ボアッソンハーゲン、そして昨年のこのステージで勝利しているベルギーロード王者のドリース・デボントなども積極的に前を牽くものの、逃げ集団の中でもフィリップ・ジルベールやエガン・ベルナル、ニルス・ポリッツなど超強力な選手たちがガンガン積極的にローテーションを回しているために、残り80㎞から30㎞に至るまで2分というタイム差が一切動かないまま消化されていった。


残り30㎞を切ってようやくタイム差も2分を切り始めるが、コフィディスが早々に追走を諦めるなど、プロトンもかなりペースダウン。

EFが最後まで死力を尽くしていく様子を見せたものの、残り17㎞を切ったあたりで、完全に諦めモード。

むしろそこからアタックする選手がバラバラと出始めるなど、追走のていを為さない状況へと変わっていった。


一方、逃げ切りがほぼ確定した先頭集団においても、残り17klmから新たな動きが。

まるでストラーデビアンケの練習であるかのように、ミハウ・クフィアトコフスキが強烈なアタック。

しかしクフィアトコフスキはオーバーコースをしてしまい失速。チャンスを失う。

逆に残り15㎞地点にある最後の厳しい登りの区間で単独アタックしたティム・ウェレンスがその一発だけで集団から一気にタイムギャップを生み出すことに成功し、独走を開始。

追走集団からもエガン・ベルナルのリードアウトでクフィアトコフスキが再び飛び出そうとする動きも見せるが、これをウェレンスのチームメートのフィリップ・ジルベールがしっかりと抑え込むなど、3名を逃げに入れたロット・スーダルがチームワークを活かした戦術で戦況を有利に進めた。

そもそももしかしたらウェレンスはローテーションに参加していなかったかもしれない。

2人いれていたイネオスも濃淡はあれどベルナルとクフィアトコフスキはともに集団を牽かざるをえず、実力はあるのに単独で逃げに乗らざるをえなかったファンアーヴェルマートやポリッツも勝負所までに完全に疲弊してしまっていた。

チーム力の差が如実に出た結果に、ジルベールが来たことによる「ウルフパック化」の片鱗を感じさせる?


ウェレンスはそのまま、タイム差を着実に開いていき、最終的に逃げ切り勝利。

例年のこの時期はマヨルカ島での丘陵レースなどで鮮烈な逃げ切りを見せることの多いウェレンスだが、今年はコロナウイルスの影響で出られなかったそのレースの代わりとも言うべき結果を早速披露。

昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ2勝の男は、今年も好調を維持できるか?

第3ステージリザルト


これで総合においても2位エドワード・トゥーンスに44秒差をつけたウェレンス。

最終日激坂フィニッシュ含む10㎞個人TTにおいてもウェレンスはむしろ有利な脚質をもち、その意味で直接のライバルになりそうなミハウ・クフィアトコフスキとも総合で48秒差がついているため、総合優勝にむけてかなり大きなアドバンテージを得ることができたように思われる。

エトワール・ド・ベセージュ、残り2ステージ。

果たしてウェレンスとロット・スーダルは、最後まで無事にこの総合リーダージャージを護り切ることができるか?

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