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イツリア・バスクカントリー2021 第4ステージ

スペイン・バスク地方で開催される、パンチャーとオールラウンダーのためのステージレース。

今年はタデイ・ポガチャル、プリモシュ・ログリッチ、アダム・イェーツといった今年の「3強」が初めて激突するレースであり、今年最注目の1週間である。


第4ステージはビトリア=ガスティスからオンダリビアまでの189.2㎞の丘陵ステージ。

サンセバスティアンにも近く、コース終盤にはクラシカ・サンセバスティアンでも勝負所となる「ハイスキベル」「エライツ」の登りが登場。

クラシカ・サンセバスティアン同様のクライマー通りの激しいバトルが期待されるステージとなった。

コースプレビューはこちらから


前半は細かなアタックが繰り返し行われたものの、決定的な逃げができないままに推移。

残り100㎞を切った直後にはプリモシュ・ログリッチとリチャル・カラパスが抜け出そうとする場面があったものの、そちらもすぐに捕まえられる。

そして残り90㎞を切ってようやく4名の逃げが形成される。

ギヨーム・マルタン(コフィディス・ソルシオンクレディ)
ベン・オコーナー(AG2Rシトロエン・チーム)
ジェフェルソン・セペダ(カハルラル・セグロスRGA)
フアン・ロペス(トレック・セガフレード)

タイム差は最大でも3分程度。

ユンボ・ヴィスマだけでなく、総合争いを演じるバーレーン・ヴィクトリアス、バイクエクスチェンジ、そしてUAEチーム・エミレーツらも次々と先頭交代を積極的に行っていく中で、タイム差は確実に減少していく。


残り50㎞を切ってフアン・ロペスがアタックし、ベン・オコーナーだけがこれについていく。先頭は2名に。

ハイスキベルの登りを終え、下りではオコーナーが苦手ぶりを見せつけて遅れる場面もあったが、ロペスの方も1人ではいきたくないので待つそぶりを見せ、二人旅のまま残り距離を削っていく。

しかし最後の登りエライツを前にして(残り25㎞)、いよいよ逃げはすべて吸収。

と同時に集団からヤコブ・フルサンがアタック。総合勢による争いが開幕した。


フルサンの攻撃にすぐさま反応するリチャル・カラパス、アレハンドロ・バルベルデ、そしてタデイ・ポガチャル。

当然プリモシュ・ログリッチがすぐさま追走を仕掛け、一度集団が一つになったかと思えば、カウンターでミケル・ランダがアタック。

ここに、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで絶好調だったエステバン・チャベスが食らいつく。そしてもう1人、新人賞ジャージを(山岳賞のポガチャルの繰り下がりで)着るブランドン・マクナルティも合流。

先頭3名でしばらくエライツを駆け上がっていくが、集団は54秒遅れの総合6位ヨナス・ヴィンゲゴーが猛牽引。

このペースアップでファビオ・アル、エンリク・マス、ヒュー・カーシー、セルジオ・イギータらが脱落していく。

そして残り22.4㎞。エライツの山頂直前で3名は集団に吸収。下りでマクナルティが再び抜け出す場面もあったがこれはすぐにつかまり、一度状況は落ち着きを取り戻す。


だが、残り20.6㎞。今度はチャベスが先行でアタック。ここに、ペリョ・ビルバオが貼り付く。

さらにこれを追ってヨン・イサギレ、ブランドン・マクナルティ、ヨナス・ヴィンゲゴー、エマヌエル・ブッフマンの4名が追随。

プリモシュ・ログリッチが一旦足を止める。チームメートのヴィンゲゴーを入れてはいるので、この選択は間違ってはいないようにも見える。

だが、問題はログリッチからわずか30秒遅れのマクナルティの存在。


全力でローテーションを回しログリッチらの集団とのギャップを開いていく先頭6名。

追走集団ではバルベルデやダヴィド・ゴデュなどが次々と加速するも逆にペースを乱すだけの結果に終わり、一時は11名程度に絞り込まれていたこの集団も、一度遅れていたイギータやカラパスなども戻ってくるほどにペースを落としていた。

残り8.2㎞で先頭6名と追走集団とのタイム差は34秒。バーチャルの総合リーダーがログリッチからマクナルティに移った。

集団はログリッチのチームメートであるアントワン・トールクに寄って牽引されるも、トールクももうすでにヘトヘト。思うようにペースは上がらず、他チームは互いに牽制状態である。

残り4.5㎞。タイム差53秒。

先頭6名の逃げ切りが、決まった。


残り700mでチャベスが一度アタック。残った集団は一瞬、お見合い状態となり、チャベスの逃げ切りが見えた瞬間であった。

しかし、ここでマクナルティが迷いなく加速。彼にとってはステージ優勝以上に、1秒でもログリッチを置き去りにしてフィニッシュすることが重要だった。

このマクナルティの加速でチャベスの逃げ切りの可能性は潰え、つづくブッフマンの加速でチャベスが完全吸収。

そこからさらに勢いよくアタックしたヨン・イサギレがフィニッシュへと迫るが、6名の中で最もスプリントの実績をもつペリョ・ビルバオが勢いよく加速。

ギリギリのタイミングでヨンを差し切ったか――と思ったが、わずかの差で、何とか逃げ切っていた。

バスク人同士の対決は、前回大会の総合優勝者ヨン・イサギレに軍配が上がった。第1ステージのアランブルによるチームの今期初勝利からわずか3日後に、早くも2勝目を数え上げることとなった。

第4ステージ


これで総合首位はマクナルティの手に。

23秒遅れでログリッチが総合2位。ヴィンゲゴーが28秒遅れの総合3位につけており、36秒遅れの総合4位にビルバオ、そして43秒遅れのポガチャルが総合5位である。


ログリッチとしては、マクナルティがとくに最終日の本格的な山頂フィニッシュでは遅れるだろうと見込んだうえでの動きなのかもしれない。

しかし、そうやって油断していた中で総合を奪われたのが2019年のジロ・デ・イタリアであった。

パリ~ニースに続く悲劇は何としてでも避けたいところ・・・そこで鍵となってくるのが、総合3位のヴィンゲゴーの存在である。

今や、セップ・クスに並ぶチームの最強山岳アシストの一人。彼が今、ポガチャルにとってのマクナルティのように、ユンボにとってはうまく活用したい存在でもある。

タブルエース同士の対決。果たして、展開はどうなっていくのか。

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