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ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第9ステージ

第1週の最終日はステージ中盤に1級山岳、そして最後に今大会初の超級山岳山頂フィニッシュ。

総獲得標高4,500mの「試練のステージ」で、総合争いにおける残酷なセレクションがかかることとなる。

コースプレビューはこちらから


逃げがなかなか確定しない中、74.5㎞地点の2級アルト・デ・クアトロ・ビエントス(登坂距離10.5㎞、平均勾配3.8%)ワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス)が先頭通過し、ロマン・バルデ(チームDSM)が2位、ジェフェルソンアルヴェイロ・セペダ(カハルラル・セグロスRGA)が3位通過を果たす。

バルデはこれで山岳ポイント合計を14ポイントに伸ばし、山岳賞ジャージを着るパヴェル・シヴァコフと並ぶことに。


その後、この逃げは一旦捕まえられ、最終的には以下11名の逃げ集団が確定する。

リリアン・カルメジャーヌ(AG2Rシトロエン・チーム)
ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)
アンヘル・マドラソ(ブルゴスBH)
フレン・アメスケタ(カハルラル・セグロスRGA)
オリヴィエ・ルガック(グルパマFDJ)
ルディ・モラール(グルパマFDJ)
ロバート・スタナード(チーム・バイクエクスチェンジ)
ロマン・バルデ(チームDSM)
マーティン・トゥスフェルト(チームDSM)
ケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)
ラファウ・マイカ(UAEチーム・エミレーツ)

そして残り71㎞。1級アルト・コラード・ベンタ・ルイーザ(登坂距離29㎞、平均勾配4.4%)に向かう登りで、カルーゾがバルデと共に抜け出す。

さらに残り63.8㎞地点でカルーゾがバルデを突き放して独走を開始。

そのまま1級山岳山頂を、バルデ、アメスケタ、トゥスフェルト、マイカの4名で構成された追走集団に対して1分近いタイム差をつけて先頭通過した。

1級山岳はバルデが2位通過を果たし、合計20ポイントで山岳賞暫定首位に。


メイン集団はイネオス・グレナディアーズが牽引する中で一時は1分23秒差にまで迫っていたものの、1級山岳を越えたあとユンボ・ヴィスマが牽引し始めると一気に拡大傾向に。

残り28.9㎞地点の3級アルト・デ・カストロ・デ・フィラブレス(登坂距離7.1㎞、平均勾配3.9%)もそのままカルーゾ、バルデ、アメスケタの順で通過。バルデは合計22ポイントでシヴァコフとは6ポイント差。

一方、カルーゾも13ポイントにまで積み上げつつあった。


そして最後の超級アルト・デ・ベレフィケ(登坂距離13.2㎞、平均勾配6.4%)

このときにはすでに先頭カルーゾとメイン集団とのタイム差は5分を超えていたが、山頂=フィニッシュまで残り10㎞、平均勾配11%の超激坂区間に突入するとメイン集団の先頭がユンボ・ヴィスマからイネオス・グレナディアーズに変更。山岳賞ジャージを着るパヴェル・シヴァコフディラン・ファンバーレの牽引によってユンボ・ヴィスマのサム・オーメンクーン・ボウマンなどの仕事をしていた面々が次々と脱落。

さらに、このタイミングで1分42秒遅れの総合12位にして今大会総合優勝候補の1人、ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)が集団最後尾に。ワウト・プールスマーク・パデュンといったアシストたちに守られてはいるが・・・やがて、イネオスによるペースアップについていけず、崩れ落ちていく!

明らかに勝負を動かし始めたイネオストレインは、一気に縦に長く伸ばしきった集団の先頭から、1分22秒遅れの総合10位アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ)を発射! すぐさま36秒遅れの総合4位ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター・チーム)が食らいつき、59秒遅れの総合8位セップ・クス(ユンボ・ヴィスマ)もチェックに入る。

総合首位プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)は動かない。

残り8㎞。激坂区間が終わると共にログリッチがブリッジを仕掛けメイン集団先頭はイェーツ、ロペス、ログリッチ、クス、25秒遅れの総合3位エンリク・マス(モビスター・チーム)、41秒遅れの総合6位エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)、そして先頭から落ちてきたバルデやマイカなど8名。

先頭カルーゾとのタイム差は3分25秒にまで縮まっていた。


その後は一旦、緩斜面区間で集団のペースも緩まり、遅れていた選手たちも集まってきて15名にまで膨れ上がる(しかしランダはここには戻ってこれなかった)。

だが残り6㎞。再び勾配が6%後半から7%と少し増していく中で、1分22秒遅れの総合10位アダム・イェーツが再度アタック。今度は誰もこれを追いかけることなく、ギャップが一気に開く。

それでも36秒遅れの総合4位ロペスが動くとログリッチはすぐさま反応。総合3位マスもついていくが、ベルナルは動かない。動けない? ロペスもやがてこの集団から脱落する。


残り5㎞。カルーゾ以外のすべての逃げを追い抜いて第2集団となったログリッチとマスが、アダム・イェーツも突き放す。

残り4㎞。先頭カルーゾとログリッチ&マスとのタイム差は2分32秒。さすがに逃げ切りはできそう。

残り3㎞。ログリッチ&マスを20秒差で追いかけるヘイグとロペスの第3集団から、ベルナルが突き放される。


勝ったのはダミアーノ・カルーゾ。ジロ・デ・イタリアでの感動的なステージ勝利と総合2位から続けてのこのブエルタ・ア・エスパーニャでの初勝利。昨年もツール・ド・フランスで総合10位など、キャリア晩年に至りむしろその強さが増してきているのか?

本来のエースたるランダが崩れ落ちる中、バーレーン・ヴィクトリアスは得意の「プランB」で三度成功を果たせるか?


そして、総合勢では冷徹にセレクションがかかる格好に。

調子が良いのはログリッチ、マス、アダム・イェーツ。

一方、ジロ総合優勝者ベルナルはまだ本調子ではない様子。ログリッチから1分5秒遅れのステージ9位でフィニッシュした。

ステージ順位と第9ステージ終了時点での総合順位は以下の通り。

第9ステージ

第9ステージ終了時点での総合成績

ただ、ログリッチも万全ではない。やはり、ツールのときに比べるとどうしてもチーム力には難がある。そこはイネオスやアスタナ、モビスターに比べると劣勢である。

ゆえに、現時点では最終的に誰が総合優勝するのか、正直、まったく予想がつかない。何が起きてもおかしくないように思える。


その意味で、ここから先の展開も実に楽しみだが――それがゆえに、純粋な力勝負以外で総合上位勢が脱落したりトラブルに巻き込まれるようなことは避けてほしい。

第2週のコースプレビューはこちらから。激坂や一筋縄ではいかない平坦ステージなどブエルタらしさは増してはいるが、総合が動くようなステージは第1週よりは少ないかもしれない。


引き続きこちらのりんぐすらいど・のーつもよろしくお願いします。

ツアー・オブ・ノルウェー最終日の振り返りは「ツール・ド・ラヴニール2021 第9ステージ」の記事文末に記載しています!

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