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ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 第12ステージ

話題の今年新設「平坦・登りフィニッシュステージ」の1つ目。その登りがまた半端ないもので、登坂距離19㎞・平均勾配6.7%の1級山岳というんだからとんでもない。十分に総合争いが巻き起こる可能性のあるこの日、果たしてどんな展開が待ち受けるのか。


この日、総勢32名もの逃げが形成される。おそらく激しいアタック合戦も繰り広げられたのだろう。想定タイムを大幅に上回るハイ・ペースで集団が駆け抜けていく。

生まれた逃げは以下の通り。

マイク・テウニッセン(ユンボ・ヴィズマ)
クレモン・シャンプッサン(AG2Rシトロエン・チーム)
サミュエーレ・バティステッラ(アスタナ・カザフスタンチーム)
アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザフスタンチーム)
エドアルド・ザンバニーニ(バーレーン・ヴィクトリアス)
マッテオ・ファッブロ(ボーラ・ハンスグローエ)
ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ)
ヨナタン・カイセド(EFエデュケーション・イージーポスト)
ジェームズ・ショー(EFエデュケーション・イージーポスト)
リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ)
ヤン・バーケランツ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
パトリック・ベヴィン(イスラエル・プレミアテック)
オメル・ゴールドスタイン(イスラエル・プレミアテック)
カールフレドリク・ハーゲン(イスラエル・プレミアテック)
ネルソン・オリヴェイラ(モビスター・チーム)
ホセ・ロハス(モビスター・チーム)
ローソン・クラドック(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
マルコ・ブレンナー(チームDSM)
ヨナス・ヴィーデベルグ(チームDSM)
アントニオ・ティベッリ(トレック・セガフレード)
マルク・ソレル(UAEチーム・エミレーツ)
イヴォ・オリヴェイラ(UAEチーム・エミレーツ)
ヤン・ポランツ(UAEチーム・エミレーツ)
ルイス・フェルヴァーケ(クイックステップ・アルファヴィニル)
ライオネル・タミニオー(アルペシン・ドゥクーニンク)
ジャンニ・フェルメールシュ(アルペシン・ドゥクーニンク)
ジェイ・ヴァイン(アルペシン・ドゥクーニンク)
ホセ・ディアス(ブルゴスBH)
カルロス・カナル(エウスカルテル・エウスカディ)
ミケル・イツリア(エウスカルテル・エウスカディ)
エリー・ジェスベール(アルケア・サムシック)
ルーカス・オウシアン(アルケア・サムシック)

プロトンとのタイム差は残り51㎞地点でレムコ・エヴェネプールの落車があったことも影響し、最大12分にまで広がる。

これを受けて残り30.5㎞でルイス・フェルヴァーケが先頭から脱落。もはや前待ちも意味がなさなくなった中、アラフィリップを失い戦力ダウンしている残り6名のクイックステップへのアシストのために集団に戻ったようだ。

残り19㎞地点から登りが始まると早速バティステッラやテウニッセンなどの平坦系ライダーが落ちていく。先頭はイスラエル・プレミアテック、UAEチーム・エミレーツ、そしてボーラ・ハンスグローエといった数を揃えるチームが中心となって牽引していく。

とくにマッテオ・ファッブロが登り初めから残り4.7㎞地点までひたすら牽引。チームメートのウィルコ・ケルデルマンのために全力を尽くし続けた。

その残り4.7㎞地点でエリー・ジェスベールがアタック。ここに食らいついていったのはケルデルマン、山岳賞ジャージを着るジェイ・ヴァイン、東京オリンピックロード覇者リチャル・カラパス、カールフレドリク・ハーゲン、ヤン・ポランツ、そして19歳のマルコ・ブレンナーのみ。

一度は引き戻されたジェスベールも、残り3.7㎞で再びアタック。今度は追走でお見合いが発生し、しばらく5~6秒差をつけて先行したジェスベールだったが、ハーゲンやヴァインを振り落としながら加速する追走集団がやがて再びこれを引き戻す。

そして残り2㎞。ポランツが落ちると同時に、カラパスがここでアタック。ジェスベールがすぐさま食らいつこうとするがやがて諦め、首を振る。ケルデルマンもついていけない。

独走を開始したカラパス。それはまさに2019年ジロ・デ・イタリアでマリア・ローザを着用したときや、東京オリンピックで飛び出したあの決定的な場面と同様の、鋭い一撃であった。

そして独走が始まれば彼を止められるものはいない。そのまま初のブエルタ・ア・エスパーニャ勝利へ。2020年ブエルタではログリッチをギリギリまで追い詰めた彼も今年は総合争いでかなり苦戦しているものの、まずはしっかりと存在感を示す勝利を掴み取った。

年齢表記はすべて2022/12/31時点のものとなります。


そしてメイン集団では登り初めからユンボ・ヴィズマがアシストの枚数を費やしながら一気にペースアップ。まずはローハン・デニス、次いでクリス・ハーパー、サム・オーメンといった面々で代わる代わる加速していく中で、プロトンの数は一気に絞り込まれていく。

だが、クイックステップは強力だった。イネオス、そしてモビスター・チームのハイ・ペースを前にして、ジュリアン・アラフィリップと共にここまでの山岳ステージでエヴェネプールを守り続けていたイラン・ファンヴィルダー、そして逃げに乗っていた中で降りてきたルイス・フェルヴァーケが最終盤まで残り続け、そうこうしているうちに先にユンボ・ヴィズマがすべてのアシストを失ってしまっていた。

残り5㎞前後でのエンリク・マスのアタックをきっかけにいよいよ集団はエースのみが残る形となり、最後のアシスト、ネルソン・オリヴェイラ(モビスター・チーム)が脱落するとテイオ・ゲイガンハートとカルロス・ロドリゲスのイネオスコンビが交互にペースアップする中、残り1.8㎞でこのエース集団はわずか6名(ログリッチ、ミゲルアンヘル・ロペス、エンリク・マス、フアン・アユソー、そしてレムコ・エヴェネプール)となってしまった。

そしてここでエヴェネプールが先頭に立つ。いつも通り淡々としたシッティングのまま強烈なスピードで加速していくエヴェネプールに対し、ライバルたちは食らいつくのが精一杯。誰一人アタックできないままフィニッシュ直前まで到達し、ラスト200mで先頭のエヴェネプールが加速するが、さすがにこれは抜け出すことのないまま、結果的に総合TOP勢での動きはほぼない形となった。

ただし、大逃げを成功させたケルデルマンが総合6位に一気にジャンプアップ。ヤン・ポランツも総合9位に入った。


第13ステージは集団スプリントが期待される平坦カテゴリ。とはいえラストはゆるやかな登り基調であり、ブエルタに来るようなスプリンターたちにとっては十分に対応できるかと思うが、果たしてどうなるか。


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