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UAEツアー2022 第1ステージ

今年最初のワールドツアー、UAEツアーがいよいよ開幕。タデイ・ポガチャル、アダム・イェーツ、アレクサンドル・ウラソフ、マーク・カヴェンディッシュ、サム・ベネット、ディラン・フルーネウェーヘンなど、世界トップライダーたちが集まる豪華な7日間。

第1ステージはマディナ・ザイードを発着する184㎞平坦ステージ。砂漠の中を突っ切るうえでの横風分断には注意したいところだが、基本的には大集団スプリントで決着することが予想されたステージであった。


逃げは5名。

ルカ・ラステリ(バルディアーニCSF・ファイザネ)
アレッサンドロ・トネッリ(バルディアーニCSF・ファイザネ)
パヴェル・コヒェトコフ(ガスプロム・ルスヴェロ)
ディミトリ・ストラーコフ(ガスプロム・ルスヴェロ)
クサンドレ・ヴェルフールセン(ロット・スーダル)

2つのプロチームがそれぞれ2名ずつ、そして今大会、新型コロナウィルスの影響などもありわずか4名での出場となったロット・スーダルが、それでもしっかりと爪痕を残すべくきっちりと逃げに乗せてきた。勝利は望むべくもないだろうが、こういう形でプロとしての仕事をやり遂げるのは格好いい。

レースの展開は非常に平穏。恐れられていた横風分断も起こらず、淡々と5名の逃げを集団がペース調整をしながら追いかけるだけ。

残り88.9㎞地点の最初の中間スプリントポイントは

  1. ディミトリ・ストラーコフ(8ポイント、3秒)

  2. アレッサンドロ・トネッリ(5ポイント、2秒)

  3. クサンドレ・ヴェルフールセン(3ポイント、1秒)

  4. ルカ・ラステリ(1ポイント)

の順で通過し、さらに残り59.7㎞地点の2つ目の中間スプリントポイントは

  1. ディミトリ・ストラーコフ(8ポイント、3秒)

  2. アレッサンドロ・トネッリ(5ポイント、2秒)

  3. クサンドレ・ヴェルフールセン(3ポイント、1秒)

  4. ルカ・ラステリ(1ポイント)

となる。

2つの中間スプリントポイントを先頭通過してボーナスタイムのおかげでこの日終了時点で総合3位についたストラーコフだったが、直後にパンクによって後退。

4名となった先頭集団はその後も逃げ続けるが、残り19㎞地点でこれもすべて吸収された。


そして、予定通りの大集団スプリント。

残り500mの段階で、アシスト的に最も完璧な状態を作っていたのはチーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコであった。この時点で、先頭に2枚。おそらく、キャンベル・スチュアートとルカ・メズゲッツ。

ただし、肝心のエース、ディラン・フルーネウェーヘンがメズゲッツのすぐ後ろにいなかった。メズゲッツの後ろに3名いて、フルーネウェーヘンはその後ろ。

そしてクイックステップ・アルファヴィニルもすでにこの時点でミケル・モルコフただ一人がマーク・カヴェンディッシュを率いて前から3列目の位置に。各チームアシストの枚数も少なく、やや混乱したスプリントが予想された。

この時点で番手を下げていたUAEチーム・エミレーツは、マキシミリアーノ・リケーゼがパスカル・アッカーマンを率いて右から一気にペースアップ。

勢いよく引き上げたうえで、アッカーマンがここで、モルコフの番手という最高の位置をカヴェンディッシュから奪い取る!

さらにこのUAEトレインの番手を取ってポジションを上げていたアルペシン・フェニックスのクリスティアン・ズバラーリが、同じくジャスパー・フィリプセンを一気に引き上げてモルコフに並び立つ。

これでフィリプセンもまた、アッカーマンの番手をカヴェンディッシュと並んで奪い取り合うポジションを手に入れることに成功した。


だが、モルコフがうまいのはこのときの判断力。残り300mという早いタイミングでリードアウトを止め、退避。これでアッカーマンは遠い距離で先頭に放り出されてしまった。

さらに、左手からはダニー・ファンポッペルに率いられてサム・ベネットが一気に先頭まで姿を現す。かなり後方に取り残されていたはずだったが、ファンポッペルが何人もの選手たちを踏み台にして残り700~400mの間にどんどんポジションを上げていき、最後はフルーネウェーヘンを失ったメズゲッツの決死のスプリントの背中に乗って、残り300mの時点でアッカーマンと並び立つ先頭の位置にまで上がってきていたのである。

そしてこの動きが、カヴェンディッシュにとって最悪なものとなった。アッカーマンの背後から左手に飛び出してスプリントを開始しようとしていたカヴェンディッシュだが、突如現れたボーラ・トレインによってその進路を阻まれたのである。

逆に右手から飛び出したジャスパー・フィリプセンにとっては、遮るものはなかった。残り250m。彼にとっては十分、勝負できる距離だった。

実際、ここからのフィリプセンは強かった。

250mは決して短い距離ではない。サム・ベネットも、この位置からファンポッペルにリードアウトされて残り150mでやっとスプリントを開始したのだが、フィリプセンはそのあともなお加速してベネットを突き放すことに成功した。

フルーネウェーヘンはフィリプセンに進路を阻まれながら前に出れず終了したが、そもそも残り500mであれだけ番手を後ろに落としていなければ、完璧なリードアウトを受けて勝てる状況だっただけに、勿体なかった。

最終局面で理想的な枚数のアシストを残せていたのはバイクエクスチェンジ。アシストの個人としての力量はミケル・モルコフ、マキシミリアーノ・リケーゼ、クリスティアン・ズバラーリなどもすごかったが、最終的に驚異的なパフォーマンスを発揮したのはダニー・ファンポッペル(残り700m近くから集団内をかき分けて残り300m時点で先頭に。さらにそこから150mもリードアウトを行う)。

そして、エースとしてのスプリントが最強なのはジャスパー・フィリプセンであった。

カヴェンディッシュは10位以内に入れなかったが、やや不運もあったと言えるだろう(いやでも、あそこでモルコフの番手を取られるのはいただけない)。


勝ったのはジャスパー・フィリプセン。最後、斜行を取られても仕方ないような動きがあったのは残念だが、強さをしっかりと見せた勝ち方だった。進路があっても、フルーネウェーヘンに差されていたかは微妙だろう。

とりあえずフィリプセン、カヴェンディッシュとの相性が悪いというトラウマを見事払拭か。このメンバーの中で勝利できたことは今年のツールに向けた自信につながるだろう。

明日も平坦スプリントステージ。引き続きフィリプセンが勝利するか、それとも今度こそベネット、フルーネウェーヘン、カヴェンディッシュらが反撃に出るか。

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