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ジロ・デ・イタリア2022 第4ステージ

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移動日を挟み、いよいよイタリアへ。その緒戦となったのは、シチリア島最大の活火山エトナ。

標高1,900mに達する天空の頂上決戦は、最初の「脱落者」を生んでいくのか。


逃げは14名。

リリアン・カルメジャーヌ(AG2Rシトロエン・チーム)
ステファノ・オルダーニ(アルペシン・フェニックス)
ヴァレリオ・コンティ(アスタナ・カザフスタンチーム)
レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)
レミ・ロシャス(コフィディス)
ダヴィデ・ヴィレッラ(コフィディス)
ディエゴ・カマルゴ(EFエデュケーション・イージーポスト)
エリック・フェッター(エオーロ・コメタ)
レイン・ターラマエ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
アレクサンダー・カタフォード(イスラエル・プレミアテック)
ハイス・レームライズ(ユンボ・ヴィズマ)
シルヴァン・モニケ(ロット・スーダル)
マウリ・ファンセヴェナント(クイックステップ・アルファヴィニル)
フアン・ロペス(トレック・セガフレード)

最大で11分以上のタイム差が開き、「エトナの麓」の残り40㎞段階でもなお、7分近いタイム差を残していた。

逃げ切りはほぼ確定。そんな先頭集団から、残り28㎞で飛び出したのがステファノ・オルダーニ(ロット・スーダル)だった。

24歳のイタリア人。元コメタ・サイクリングチーム(現エオーロ・コメタ)出身で、昨年まではロット・スーダルに所属。そのときは2020年ブエルタ・ア・エスパーニャのアルノー・デマールが勝ったステージで区間6位や、ジロ・デ・イタリアのペテル・サガンが勝ったステージで区間4位など、基本的にスプリンターとして活躍する男であった。

だが、今年のドローメ・クラシックや、昨年のツール・ド・ポローニュの第3ステージ、ジョアン・アルメイダやディエゴ・ウリッシなどが上位に入ってきている登りスプリントステージなどでも3位に入るなど、丘陵系レースでも活躍するパンチャータイプと言ってもよさそう。

それでも、このエトナの登りで単独先頭を走るなんて、ちょっと想像していなかった。

だが、さすがにそれも力尽きてしまったか。徐々に失速していく中、6名に絞り込まれた追走集団の中から、残り11.9㎞でフアン・ロペス(トレック・セガフレード)がアタック。

残り10.2㎞でオルダーニに追い付き、そのまま彼を突き放し、新たな単独先頭に躍り出る。

24歳のスペイン人。彼もまた、コメタ・サイクリングチーム出身で、2020年からトレック・セガフレード一筋。そのプロ初年度の初戦ツアー・ダウンアンダーでは、パラコーム山頂フィニッシュにて当時トレック所属だったリッチー・ポートを発射させ、その年の総合優勝を支えることとなった。

以降、期待していた選手だったが、思ったよりも芽が出ず・・・だが、この日、彼はその実力を遺憾なく発揮し、エトナの先頭を突き進む。

これを追いかける追走集団5名がオルダーニを飲み込むと同時に、残り8㎞で「逃げスペシャリスト」レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)がアタック。ここにマウリ・ファンセヴェナント(クイックステップ・アルファヴィニル)シルヴァン・モニケ(ロット・スーダル)が食らいつき、3名の「第2集団」が形成された。

残り6.4㎞。この「第2集団」から、さらにケムナが単独でアタック。2017年にチーム・サンウェブでプロデビュー。TTもいけるオールラウンダー候補として期待されるが、なかなかそれ以上の結果を出せず燻っていた中・・・2019年のツール・ド・フランスでひたすら我武者羅に逃げ続ける姿が注目を集めた。

そしてボーラ・ハンスグローエに移籍した初年度の2020年。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでの逃げ切りプロ初勝利をしたかと思えば、直後のツール・ド・フランスであまりにも豪華なプロ2勝目。2021年にはボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ、2022年にはブエルタ・ア・アンダルシアにツアー・オブ・ジ・アルプスと、とにかく山岳ステージでの逃げ切り勝利を立て続けに成し遂げる稀代の山岳逃げスペシャリストへと成長した。

だから、この日の逃げの中では最大の有力候補であることは間違いなかった。若き才能ファンセヴェナントもモニケも突き放し、ケムナは単独で先頭ロペスを追いかける。

メイン集団では(先頭が)残り8.3㎞でトム・デュムラン(ユンボ・ヴィズマ)、(先頭が)残り5.1㎞でヴィンツェンツォ・ニバリ(アスタナ・カザフスタンチーム)など、過去の総合優勝候補たちが次々と脱落。イネオス・グレナディアーズがアシストを使い果たしながら先頭を支配してペースを上げていくが、この時点でまだ先頭ロペスとのタイム差は4分以上。逃げ切りは確実であった。

そして残り2.5㎞。ついにケムナが先頭ロペスに追い付く。

後続からはレイン・ターラマエ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)が単独で追いかけてくるが先頭2人には追いつけず。

プロ未勝利のロペスはケムナを前に置きつつ最後の1㎞を消化していくが、最後の左カーブでバランスを崩し失速。

その隙にホームストレートでスパートをかけたケムナが、今期3勝目、そしてグランツールでは2回目となる逃げ切り勝利を成し遂げた。

年齢はすべて2022年12月31日時点のものとなります。


最後、凡ミスで勝利を失ったロペスは実に悔しそうにハンドルを叩く。

だが、元々1分12秒遅れの総合47位だった彼は、この2位でマリア・ローザ着用を達成。

ここからしばらくは、この栄光のジャージを着て過ごすことができることだろう。


総合ではドメニコ・ポッツォヴィーヴォとヤン・ヒルトがカラパスたちメイン集団から20秒ほど遅れ、ギヨーム・マルタンもメイン集団から1分31秒遅れ、トビアス・フォスもサム・オーメンと共に2分15秒遅れと、総合争いからの早速の脱落と言ってもよい痛手を負う。ユンボ・ヴィズマはデュムランと合わせ、これでトリプルエースが全滅に近い形に・・・あとは大逃げで挽回するしかない。マルタンはそれが得意パターン?


第5ステージはヴィンツェンツォ・ニバリの故郷、メッシーナへと至る174㎞。

途中、険しい2級山岳がそびえたつも、ラストは長い平坦の先にフィニッシュが置かれているため基本的には今大会2度目の大集団スプリントとなるだろう。


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