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ティレーノ~アドリアティコ2021 第2ステージ

イタリアの西海岸(ティレニア海)と東海岸(アドリア海)とを結ぶ、「2つの海を結ぶレース」。

第2ステージはカマイオーレからキウズディーノまでの202㎞丘陵ステージ。最後は7㎞以上に渡る緩やかな登りフィニッシュ。総合争いが勃発するほど厳しくはないものの、ピュアスプリンターたちは脱落し、パンチャーや登れるスプリンターたちによる争いが期待されるステージとなった。

全ステージのコースや注目選手プレビューはこちら


逃げは6名。

サイモン・ペロー(アンドローニジョカトリ・シデルメク)
マルクス・ブルグハート(ボーラ・ハンスグローエ)
ヴィンツェンツォ・アルバネーゼ(EOLOコメタ)
ジョン・アーチボルド(EOLOコメタ)
シモーネ・ヴェラスコ(ガスプロム・ルスヴェロ)
ピーテル・ファンスペイブルック(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)

前日も二人逃げに乗せアグレッシブな走りを展開したEOLOコメタがこの日も2名乗せる。そのうちの一人は昨日山岳賞を獲得したアルバネーゼ。しかしこの日の山岳賞はステージ後半(残り30.6㎞地点とフィニッシュ地点)に集中しており、そこまで逃げ切れなければある意味この日逃げに乗った意味がないとも言える。


そして残り49.8km地点から始まる、カテゴリはついていないけれど厳しい登り区間(登坂距離4.5km、平均勾配6.1%)で、ユンボ・ヴィスマのロベルト・ヘーシンクがペースアップ。

このペースアップによって早くもペテル・サガンが脱落。新型コロナウイルスの感染によってシーズンインが遅れに遅れていた彼が、病み上がりとなった今大会はさすがに苦しい状況といえたか。ミラノ~サンレモも不安な見通しとなった。

そして残り37.9㎞地点から始まるこの日最初の山岳ポイントへの登り(登坂距離3.5km、平均勾配6.9%)。ここで逃げがすべて吸収され、ミハウ・クフィアトコフスキが牽引するメイン集団の先頭からエガン・ベルナルがアタックを放った。

すぐさまこれに食らいつくのがドゥクーニンク・クイックステップのカスパー・アスグリーン、そしてロット・スーダルのジャスパー・デブイスト。アスグリーンはすぐさまローテーションに入るが、後続にティム・ウェレンスを残してきているデブイストはこれを拒否。抑え役に回る。

メイン集団からは追走グループとしてマルク・ソレルやセルジオ・イギータ、ペリョ・ビルバオやサイモン・イェーツなど、非常に強力な選手たちが次から次へと飛び出していく。ティム・ウェレンスもここに乗った。

これを追いかけるメイン集団の先頭は、総合リーダージャージを着る前日の勝者ワウト・ファンアールト率いるユンボ・ヴィスマ。しかしパリ~ニースと比べやや選手層が薄い今大会のユンボ・ヴィスマは、先頭を2019年ツール・ド・ラヴニール覇者トビアス・フォスなどが牽引するも、なかなかペースが上がらない。そもそもこの局面でファンアールトの前にはフォス一人しかいなかったのだ(のちにポール・マルテンスが後方から上がってきてジョインする)。

それでも残り31.4㎞で一度集団が先頭をすべて吸収。

だが一息つく暇もなく。集団からは次なるアタックとしてパヴェル・シヴァコフ、サイモン・イェーツ、ジョアン・アルメイダが飛び出し、のちにミケル・ランダが合流。またしても非常に強力な4名の先頭集団が出来上がった。

この日の優勝候補ダヴィデ・バッレリーニも脱落。さらには、総合有力勢のはずのティボー・ピノもまた、ここで脱落。ピノは今シーズンここまでかなり振るわない様子できていたが、ジロ・デ・イタリアが近づく中、その苦境はなおも続いているようだ。


先頭を逃げるシヴァコフ、イェーツ、アルメイダ、ランダ。トビアス・フォスが牽引するメイン集団とのタイム差は一時40秒近くにまで開き、ファンアールトだけでなくその他の総合優勝候補たちにとってもかなり危険な水準に。

それでも残り6㎞になるまではライバルチームもひたすらユンボの足を削ることを最優先。この段階になってようやく、タデイ・ポガチャル率いるUAEチーム・エミレーツが3枚のアシストを連れて先頭に飛び出してきた。

ダヴィデ・フォルモロの必死の牽引。これで残り3㎞で15秒差に。先頭ではサイモン・イェーツが急速に足を失い脱落。その後彼はプロトンからも遅れ、総合争いからは脱落することに。先日のストラーデビアンケでは落車しているという彼にとって、今大会は正直最初から総合優勝を狙うのは難しいと判断していたようだ。

残り1.8㎞で先頭集団からシヴァコフがアタック。ランダは少し離れるがアルメイダは余裕でこれに追随する。

何度も振り返りながら足を止めたシヴァコフに対し、アルメイダがカウンターアタック。シヴァコフはなんとか食らいつくがランダが決定的に遅れ始める。

残り1.1㎞でアルメイダがもう一度アタック。今度こそシヴァコフが離れ、ランダにも追いつかれ二人でアルメイダを追いかけるが、後続からペースアップしてきた集団に飲み込まれる。

先頭逃げるアルメイダ。これを追う、ゲラント・トーマスを先頭にしたメイン集団。いややっぱりトーマス強い。

いよいよアルメイダも捕まえられる直前――といったところで、ジュリアン・アラフィリップがアタック。当然ワウト・ファンアールトもこれを追いかけるが、その次の瞬間、ずっと後方に沈んでいたはずのマチュー・ファンデルプールが恐ろしい勢いでファンアールトの右わきを追い抜いていく。

それでも最後はアラフィリップが先頭フィニッシュ。しかしファンデルプールもあと100mフィニッシュが遠ければ完全に追いついていたと思われるほどの勢いであった。

第2ステージ

珍しく悔しさいっぱいにハンドルを叩くファンデルプール。栗村さんの解説はこの日もわかりやすく、最後の10秒の出力は比類ないものをもつファンデルプールにとっても、その前の段階までに長い登りがあるとさすがに厳しいようで、そこで番手を落としてしまっていたことが最大の敗因であるということだった。

結果としては非常に激しいレース展開で、タイム差こそつかなかったものの総合優勝候補たちによって争われた最後のフィニッシュ争い。

第3ステージも同様にパンチャー向けのステージ。今日ほど厳しくはないはずだが、果たして勝つのは登れるスプリンターか、パンチャーか、クライマーか、はたまた逃げスペシャリストか。

非常に予想の難しいステージだ。

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