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ジロ・デ・イタリア2021 第2ステージ

イタリアを舞台に開催される今年最初のグランツール。サイモン・イェーツ、アレクサンドル・ウラソフ、エガン・ベルナル、レムコ・エヴェネプールなどが覇を競い合う、なかなか予想のつかない3週間。

第2ステージはストゥピニジからノバラまでの179km平坦ステージ。

ひたすらポー平原を横切っていく道程で、山岳ポイントはステージ中心部の1か所だけ。

あとはひたすら平坦で、今大会最初の集団スプリントが期待された。

コースプレビューはこちらから


アクチュアルスタート直後にすぐさま逃げが決まる。

フィリッポ・タグリアーニ(アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ウンベルト・マレンゴ(バルディアーニCSF)
ヴィンツェンツォ・アルバネーゼ(EOLOコメタ)

イタリア籍のUCIプロチームがそれぞれ1名ずつ出してすぐに決まる逃げという、ここ最近ではむしろ珍しくなりつつある「定番の初日逃げ」の様相。

ただもちろん、ラインレース初日の逃げはすなわち最初の山岳賞を巡る争いでもある。ステージ勝利を1つ獲るのも難しいUCIプロチームにとって、特別賞ジャージを着て表彰台に立つチャンスは非常に重要である。


そんな、残り83.8km地点に用意されたこの日唯一の4級山岳で、最初に抜け出したのはEOLOコメタのヴィンツェンツォ・アルバネーゼ。

そのままマレンゴもタグリアーニも食い下がろうとするが、いずれにも前を譲ることなくそのまま先頭で突っ込んでいった。

今大会最初の山岳賞ジャージを、レースのスポンサーも務めるEOLOコメタがきっちりと獲得。チームとしても重大な目標の1つをまずは達成して見せた。


その後は2つのスプリントポイント。ジロ・デ・イタリアのルールでは1つ目のスプリントポイントがマリア・チクラミーノに関わるもので、2つ目のスプリントポイントがボーナスタイムをもたらす。

残り39.4㎞の1つ目のスプリントポイントはタグリアーニが先頭通過。山岳賞を確定させたアルバネーゼは早々に集団に戻っており2番手はマレンゴ。

そして6ポイント以下を巡る集団における3位決定戦は、どこがスプリントポイントのラインなのか判然としない中でフェルナンド・ガビリアが勝利。

以下ヴィヴィアーニ、パスクアロン、サガンと続いた。

直後、残り26.2㎞地点の2つ目のスプリントポイントがやってくる。

すでにタグリアーニもマレンゴも吸収していたメイン集団の中では、ボーナスタイムを巡る争いが勃発。

まずはイーリョ・ケイセがレムコ・エヴェネプールを牽引して先駆けするが、これをマリア・ローザを着るフィリッポ・ガンナが左手から抜き去る。

さらに右手からは総合10位のジャンニ・モスコンが加速し、最終的にはガンナ、エヴェネプール、モスコンがそれぞれ3秒、2秒、1秒のボーナスタイムを手に入れた。


そしてあとは集団スプリント。

残り3㎞を切るまでひたすらイネオスやモビスター、バーレーン・ヴィクトリアスなどの総合系チームが危険回避のために牽引。

残り2㎞を切って集団の右手からはディラン・フルーネウェーヘンとその発射台のダヴィド・デッケルのために、マリア・チクラミーノを(繰り下がりで)着るエドアルド・アッフィニが牽引。

その一段後ろの右端に、ティム・メルリールを率いるアルペシン・フェニックスのアシストが2枚、しっかりと好ポジションを維持している。

ダニエル・オスの牽引から始まった残り1㎞は、残り700mで先ほどまで番手を下げていたコフィディス・ソルシオンクレディが、(おそらく)シモーネ・コンソンニを先頭に一気に集団先頭にまで上がってくる。

先頭のコンソンニの後ろにはUAEチーム・エミレーツの第2発射台、ファビオ・サバティーニ。その後ろにエリア・ヴィヴィアーニ、ジャンニ・フェルメールシュ、フアン・モラノ、ティム・メルリール、フェルナンド・ガビリア、ディラン・フルーネウェーヘン、マッテオ・モスケッティ、ペテル・サガンの順でつながる。

そしてサガンがモスケッティを抜いて前に出たあたりのタイミングで、その後ろについていたバルディアーニCSFのフィリッポ・フィオレッリが少しギャップを開いてしまう。

結果、その後ろにアシストと共にいたカレブ・ユアンが完全に突き放されてしまう。いつも通りといえばいつも通りだが、相変わらずロット・スーダルの初日のスプリントは位置取りの失敗で勝てないことが多い。

そのあと反省会して恐ろしいくらい強くなるパターンが多いので、第4ステージ以降に期待だけれど。


残り400mを前にして、先頭はモラノに。その後ろにはヴィヴィアーニ、メルリール、ガビリア、ニッツォーロ、フルーネウェーヘン、サガン、ユアン、フィオレッリの順で連なる。

ここでニッツォーロが左から加速したのに対し、ガビリアはより狭い右から加速していく。

4年前であれば、この非常に狭い隙間であっても彼は巧みに抜けていくことができたであろう。

しかし彼はもう全盛期ではない。結局、仕事を終え後続の邪魔にならないように右手から落ちていこうとしたモラノとガビリアがチームメート同士で接触してしまい、あやうくガビリアは落車仕掛ける結果に。

それは免れたにせよ、勝負自体は完全に失うこととなった。フィニッシュ後、自分に対する怒りか、チームメートに対する怒りか、ガビリアは激しくシャウトする。


ガビリア脱落後もまだフィニッシュまで300m近く残っていた。

あまりにも早く先頭に立たされてしまったヴィヴィアーニはここで一旦足を止める。その隙に左手から先頭に躍り出てきたのがメルリールだった。ニッツォーロもそこに食らいつき、メルリールの番手につく。

ヴィヴィアーニはフルーネウェーヘンにも抜かれ4番手。サガン、モスケッティがその後ろにつき、先頭はこの6名だけに。

ここで先頭に立ったメルリールは明らかに早すぎるはずだった。残り250m。普通に考えればスプリントを始めるには悪手すぎるタイミング。

しかしそれは勝つために必要なタイミングであった。

僕は最後に本当に重要なラウンドアバウトがあることを知っていた。それを目にしたとき、僕は良いポジションにいることができていた。そこにやってきたとき、僕らはより速く、より速く行く必要があると考えていた。だから僕は非常に遠くから——250mから——スプリントを開始した。でも結局、それが必要だった


曲がりくねったフィニッシュ直前の250mを、メルリールは背後のヨーロッパチャンピオンに前を譲ることなく駆け抜けた。

その結果、彼は手に入れた。今年のグランツールの最初のスプリント勝利を。そしてチームにとって初となる、グランツールでの勝利を。

10年前にレース中に亡くなったベルギー人、ワウテル・ウェイラントに捧げるWの指文字を掲げながら。

第2ステージ


3位にはヴィヴィアーニ。終盤のアシストの動きは良かったが、残り700mでアシスト1枚はさすがに厳しいものがある。その前の段階であまりにも位置取りが悪かったせいで、そこで引き上げるのにアシストを無駄に使ってしまったのが敗因だろう。残り300mで単独で先頭に出されては、どうしようもない。

フルーネウェーヘンが4位。勢いは良かったが、最後にメカトラ?で失速してしまい勝利を失う。フィニッシュ直後に悔しそうにハンドルを叩く。勝利への走りはできている。

サガンも相変わらず調子は上向きのようだし、今年ここまで不調気味だったモスケッティが力を取り戻している感があるのは良かった。

なんだかんだで本命のチーム、選手が(結果的に大きく後退する事象は少しあれど)十分な動きができていた最初の集団スプリントであり、大きな落車もなかったのは幸い。

続くスプリントステージでも誰が勝つのかまだまだわからない。今後も楽しみにしていよう。

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